転生~幼年期 第7話

7.アワージの港


 翌日、いつも行うルーティーンをこなす。

朝食→読書算盤鍛錬→昼食→魔力消費後の昼寝

 寝落ちから戻った俺はさっそく爺さんとナオ姉、カズッチャと港へ散歩だ。カオはまだ小さいからイスリ母さんと留守番だ。ナオ姉はもちろんカオの耳タブもみもみがあるからお留守番だ。

「「「いってきまーす」」」

「「カズッチャ、シンバ、お爺さんのいうことをきちんと聞くんですよ。勝手に動かないようにね」」「バーブゥ」


 爺さんに手を引かれ歩くこと約30分。神社以外の道は初めてなので新鮮だ。町並みは港を中心に商工業区域となっているのでにぎやかだ。魚屋をはじめとする各種商店、鍛冶屋、木工所等の各種加工所は活気にあふれている。

 遠目に海が見えた。港だ。青い海に波がところどころ立ち、キラキラ輝いている。異世界の海は前世の記憶よりも澄んできれいに感じた。潮の香りも雑味がなく美味い。


 港には多くの小舟が木造りの桟橋にたくさん係留されている。どれも手漕ぎメインの帆が補助的についているような造りをしている。浜では漁網がいくつも干されている。江戸時代の漁村ってかんじかな。どうやら浜辺に船着き場を作った漁港メインの港のようだ。商用の船は沖合に停泊して小舟で荷物の積降をするようだ。


 カズチャと俺は初めて見るものだらけの港を爺さんに手を繋がれてキョロキョロと見て回った。


「カズチャ、シンバ、どうだ?初めての海や港は?きれいで活気があるだろ?」

「「うん、すごい、すごーい。船がいっぱいだ。海も青くてキラキラしてきれい」」


 大感動であった。手垢の付いてない海。前世では離島でしか出会えない自然豊富な海だ。


(いかん。『射出』の検証をしなければ)


「お爺様、もっと近くで見てみたい」

「そうか、では少し港の端の海辺に行ってみよう」


 浜辺に近づく際、小さなヤドカリがカサカサと歩いていた。


(『収納』)

 ヤドカリは収納されなかった。生き物は対象にできないことが分かった。忘れていたよ、生き物収納検証。その後2回追試をしたが結果は同じ。生き物は『収納』できないことが判った。


 俺たち四人は人気のない海辺に付くと腰を下ろし、ただただ海を見つめるのであった。表面上は。


 俺は昨日裏庭で収納しておいた各種石ころで『射出』の検証に勤しんだ。三人が見ていない方向に向けて、

(『射出』) ポチャん

 なんのひねりもなく『射出』した拳大の石は力なく海に落ちた。(『射出』で石が飛び出していったよ。成功だ。次は……)


(『射出』) シュッ

 スリングショットをイメージして『射出』した拳大の石は、イメージ通りの速度で飛んで行った。10m程。(なるほどなるほど。よし、次は……)


(『射出』) シッ

 ライフル銃をイメージして『射出』した拳大の石は、小さな音を立て消えた。どこまで行ったのだろうか。(なるほどなるほど。よし、これはどうだろう……)


(『射出』) 

 前世のアニメ戦艦ヤ〇トの波動砲をイメージして『射出』した“もの”は、もはや音も立てずに消えた。収納の中に入れたはずの10kg程の重さの石はなくなっている。遠くで波しぶきいや水柱が立った。


「わぁ、大きな水柱。あれな~に?」

「クジラの潮吹きか?珍しいな」

「クジラってなぁに?」

「クジラってのはな、海にすむ家程の大きさのでっかい海の生き物だ。クジラは1頭取れると大勢の人の食べ物が採れる……」


 イチジ爺さんがクジラについて蘊蓄を語っている。カズチャは夢中で聞いている。そんな会話を聞き流し、俺は収納した石ころ達を『射出』し尽くし、その性能に満足するのであった。



 平成の営業マンは爪を隠す。だって悪目立ちしたくないだろ?海もきれいだし。


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