転生~幼年期 第6話

6.商店ダイホウ①


 俺の異世界での生家というか転生先は、淡路の島にあるアワージの町で雑貨や食料品など規模は大きくないが幅広い品目を商う商店ダイホウであった。


 現在の店主はニアマ、俺の父親となる。体格は大柄でがっちりとしていて、商人というよりはむしろ豪放磊落な冒険者のように感じる。先代、俺の祖父イチジより数年前に店をついだとの事。妻はイスリ、俺の母親だ。なんでも同じ淡路の島の中心地スモートで大商いをしている商人の娘だったが、何度か商談で訪れていたニアマに見初められ嫁いできたようだ。イスリは才色兼備の温厚で快活な女性であり、ニアマのような田舎商人とは不釣り合いに感じる周辺の評価とは逆に、本人は嫌がるどころかむしろ嫁入りに前向きだったようだ。そんな夫婦が4人の子供を授かった。

 長女ナオ、イスリ母さんに瓜二つの将来が期待できる美形だ。耳たぶ好きは誰の血か不明。長男カズチャ、将来の商店ダイホウの3代目にふさわしく豪放磊落な性格の片鱗を見せている。次男シンバ、俺だ。まだ子供だが父系の血を濃く引き継いでいると思われる。前世の記憶や神様から授かった二つの加護がどのように影響するのかは不明である。そして先日お宮参りを済ませたばかりの我が家のプリンセス、カオ。今のところ母型の影響を強く受けていると思われる。いやそうであってほしい。豪放磊落な妹ってちょっとねぇ。


 祖父イチジはアワージの武家の末っ子として生まれたが、生来の好奇心旺盛な性格と武家の厳しい躾に嫌気がさしたようで、元服と同時に家を飛び出し、アワージを拠点に淡路の島や大八島などを巡り行商をしていたようだ。

 大八島の豪農の娘イーセを見初め夫婦となったのを機に商店ダイホウを立ち上げたのだとか。親子そろって人様の箱入り娘を娶るとか。うらやまだな。イチジ爺さんは親父とほぼ一緒の体格性格。イーセ婆さんはとにかく温厚で優しい笑顔の絶えない人だ。


 商店ダイホウには、番頭キーク、店員コバ(仕入仕込配達要因)、店員マル(仕入仕込配達要因)、店員ルミ(店子)が雇われている。番頭キーク以外は住み込みだ。俺は見たことがないが、商店ダイホウ自前の商船もあるようだ。いずれ機会があれば乗せてもらいたいものだ。


 店は木造の2階建て母屋、一階の表通りに面した部分が店舗、奥に居間、食堂兼休憩所、炊事場などがあり2階が俺たち家族の居住区となっている。そうそう、実は風呂もある。シャワーはついてないけどね。厩舎もある裏庭を挟んで母屋並みの倉庫があり、2階部分が住込み従業員用の居住区となっている。まぁ、そこそこ中規模の商店だ。


 そんなわけで親父は月の半分は仕込仕入等で家を留守にする。コバ、マルももちろん同行だ。そんな時は母イスリや隠居中のイチジ爺さんが家族の支柱となるのだが、『収納』の検証を一部残し完了させた俺は母さんと爺さんに相談を持ち掛けた。


「え?町の外に出てみたいって?」

「はい。僕はまだ家の外にもあまり出てないのですが、是非とも町の外も見てみたいのです。」

「うむ。シンバは生まれた時から賢そうな子じゃった。言葉も物覚えも早かった。願いを叶えてやりたいのは山々じゃが囲いの外には魔物がおる。身を守る術のない童が、たとえ付き添い付きとはいえ危険じゃな」

「そうよ、シンバ。まだ2歳のシンバが囲いの外に出るのは危険すぎるわ」

「そうですか。。。では港を見に行きたいです。港なら囲いの中のようなものですよね?魔物もいませんし」

「「ギクッ!!」」

「私も港を見に行きた~い」

「僕もつれてって~」


 こうして俺は収納したものを『展開』とは別の方法で取り出す、『射出』を試すことができそうな場所へ外出できる権利を得たのだ。




 平成の営業マンは交渉上手だって?そんなことないよ。だってペーペーの頃の交渉相手はモーレツ昭和のたたき上げどもだぜ?これ以上は守秘義だよ。

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