転生~幼年期 第4話

4.神社再び


「みんな、準備ができたら出発するぞ。」

「「「「準備OK―」」」」「バブ」


 『鑑定』スキルの成長から1年の歳月が過ぎた。この世界の時間軸は1年が360日。1月は30日、1日24時間。1時間60分。1分60秒だ。だが表現は刻だ。一刻2時間。半刻1時間。四半刻30分。但し時計は普及してなくて、誰かが時を告げる鐘を鳴らしている。昼間だけだけど。他の度量衡はおいおい。俺の住むアワージの町は四季も前世と同じくあり、俺は3度目の春を迎え2歳となった。但しどうも暦と四季がずれているような気がする。今、暦は10月だが、季節は春なんだ。桜も咲いている。南半球に位置しているのだろうか。

 ちなみに現在のステータスはこんな感じ。日課のルーティーンは毎日こなしてきたが変化は年齢が2歳になったくらいだ。HPとかMPとかのゲームっぽい値はいずれ表示されるのだろうか。


鑑定結果

シンバ(2) 人族 男

職業 無職

 

 今日は家族揃って今年の早春に生まれた俺の妹、カオのお宮参りの日だ。


 俺の住むアワージの町は、中心にこんもりとした約100m程の高さの丘ミョーケンザンがありその頂上に神社がある。ミョーケンザンを中心に半径5キロ程の距離に堀と土塁で構成された囲いが円周状に築かれている。囲い内の東から東南には海運・漁業用の港やその施設、従事者たちの住居がある。いずれも木造、瓦屋根、土壁の古き良き町並みだ。囲いの西南北には通用門があり、各地への街道と繋がっている。これから町の中心部にあるミョーケンザンにある神社へと向かうのだ。


 我が家は比較的漁港近くの商業街にある。ニアマ父さんと手を繋ぐカズッチャ兄、ナオ姉に手を繋がれた俺、カオを抱っこするイスリ母さんでのお参りだ。イチジ爺さんとイーセ婆さんは店番でお留守番だ。約1時間弱、四半刻ちょいで坂道を登り参道の執着地点まで到達した。


「「「「「2礼」」」」」

ガラガラガラガラ

チャリンチャリン

「「「「「パンパン」」」」」

「「「「「我が家に新たな娘(妹)が誕生しました。カオと名付けました。スクスクと健康に育ちますようお見守りのほどよろしくお願いします」」」」」「バブ」


 それは突然始まった。眩しいけれど暖かな光の奔流につつまれた。俺のお宮参り以来の光景だ。

〈シンバよ、よう来た。よう来た。待って居ったぞ。この世界への転生を無事に成し遂げ、その能力をよう研鑽しておる。そなたに我が加護を授けよう。悔いのない人生を送るのだ〉

 その言葉の終わりと同時に、光の奔流が徐々にどこかに消え去る。直後、俺の脳裏に〈ピコーン〉と電子的な音が鳴り、続いて

〈ホッテイソの加護を得ました。成長に補正がかかります。『収納』のスキルを取得しました〉


(何事だ?またかよ?今日はカオのお宮参りなのに)

まったくこの事態を予期せず油断していた俺は光の奔流が収まった後もしばし呆然としたのであった。


「「「「「礼」」」」」「バブ」

 あわてて皆に合わせて礼をし、俺の妹カオのお宮参りは無事終了した。


 俺のお宮参りの時と同様、例のお茶屋さんでみたらし団子をほおばった。もちろん口の周りはべとべとだ。あー、こんなに美味かったのか。噛みしめる団子に絡みつく、みたらしのあまじょっパイ味は前世での味と同じく美味だった。俺は新たに授かった加護とスキルの事を考えないように頭の片隅に追いやり、みたらし団子を堪能したのだった。



 平成の営業マンは様子見が得意なのだ。好きな食べ物は最後に食べる方だけど、まぁ今回は先送りとも言うけどね。

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