転生~幼年期 第3話


3.転生から1年


「シンバ、カズチャ、これからお姉ちゃんが本を読むからちゃんと聞くんですよ。今日は『神様のお仕事』よ。ちょっと難しいけど最後まで読むからちゃんと聞くのよ」

 転生から一年、最近は読み書きを覚えたナオ姉ちゃんが本を読んで兄のカズチャと俺の面倒を見てくれる。今日は少し難しめの『神様のお仕事』という本らしい。


 「昔々、まだ魔素しかなかった場所に、神様達が力を合わせてギ―を作りました。神様達はギーに住む人、獣人、魔人、動植物、魔物も一緒に作りました。その後、神様達はギーとは別の場所でお仕事をする事になり、ギーを離れることになりました。人、獣人、魔人、動植物、魔物はまだ幼く、神様達が居なくなると生活できないため、神様達の代わりに彼らを導くように長耳族と精霊達を残していきました。長耳族と精霊達は共に暮らし、小麦の作り方やパンの焼き方や魔法の使い方など役に立つことをたくさん教えてくれました。そしてギーの発展に力を尽くし、神様達に感謝の祈りを捧げ続けました。困難な時期は過ぎ、全ての生物は共生し時には争いながらも自立した生活が送れるようになると長耳族と精霊達は導き役から退き、この世界の見守りと神々への感謝の祈りを捧げることに専心することになりました。おしまい」

「おね~ちゃん、お話難しい。次はヤマトタケルの冒険を読んで」

「え~、それ何回も読んでるよ。カズチャはヤマトタケルが好きなんだね」



どうやら俺は本当に転生したようだ。しかもギーという異世界。神と創造、各種族に長耳族と精霊。ナオ姉の読んでくれた『神様のお仕事』の正誤は別として、これが作られる背景があるのだろう。

黒髪黒目の家族、着物の常用、生活レベル等からざっくりと前世日本の江戸時代後期に過去転生したのかと当初は思った。だが、俺に加護を授けてくれた神様?名をベザイテーンと言ったか、明らかに前世の弁財天。その加護を授かった神社もアワージのミョーケンザン。淡路島にある妙見山だよな。スキルとかレベルとかあるし、なにやら魔物とかいう存在もいるらしい。間違いなく過去転生ではなく、異世界転生だ。


(ファンタジー来たぁー 剣と魔法の世界来たぁー)と最初は喜んだよ。でも剣と魔法、微妙なんだよな。『鑑定』しか使えないし。どうやら俺の父親ニアマも祖父のイチジも鑑定は使えるのだという。二人は家業である雑貨商店を営む中でいつのまにか『鑑定』を使えるようになったようだ。驚くことに『収納』なるスキルも持っているのだとか。目の前で米俵が出たり消えたりしたのを見せつけられた俺の驚き様を見せてやりたい。なぁ?異世界転生『鑑定』持ち……ぬか喜びだろ?微妙だろ?


でもな、来たんだよ。先日。転生から約1年。

『鑑定』連打→魔力切→寝落→耳たぶ攻撃→空腹大泣→おっぱいトントンケフッおしめ交換→戻る

の無限ループが

『鑑定』連打→魔力切→寝落→朝飯→勉強→遊ぶ→昼飯→『鑑定』連打→魔力切→昼寝→遊ぶ→夕飯→戻る

と、少しタスクが増えたけどコツコツと繰り返した成果が出たんだよ。それはな、


(『鑑定』)

〈ピコン〉

〈経験値が規定値に到達しました。レベルが上がりました〉

 暖かな何かが湧き上がり、体中に行き渡る。


鑑定結果

シンバ(1) 人族 男

職業 無職


名前と性別程度の鑑定結果に職業欄が新たに追加されたのだ。

興奮した俺は家族を鑑定しまくった。

結果、家族の年齢構成はわかった。見た目と性別も一致していた。だが、家族とはいえ人の能力を勝手に覗くのは俺の趣味ではない。使いどころはTPOを弁えないとな。せっかく神様から貰った能力だ。気持ちよく使わせてもらう。それに『鑑定』で判ることが現時点でショボくてちょっと安心したのは内緒だ。俺Tueeeeはちょっと恥ずかしいからな。まだ1歳だし。


まぁ結論から言うとスキルにも段階がある可能性が出てきた。だってまだ俺の『鑑定』結果に加護とかスキルが出てないだろう?親父や爺さんや家族もしかり。

まずは今現在のできることを継続してやっていこう。異世界だし、いつ何時危険な何かがあるかわからないからな。



平成の営業マンはコツコツと地味な努力を好むんだ。だって一攫千金のチャンスなんてなかったからな。バブルはじけて失われたウン十年だったし。

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