第176話【バルハマク・オーデラ】



◇バルハマク・オーデラ◇


 こんな展開、流石に想定外が過ぎる。

 モンスターや、自分と関わってきた人物たちが原作と違う行動をするのにようやく慣れてきたと思ったら、まさか戦闘がないはずのキャラクター……バルハマク・オーデラ子爵が剣を持つとは。

 しかし、最後の抵抗かと思われたその行動も、ルクスの剣を弾く実力を見せたのだ。


「……なにが」


「くっそー!!負けるかぁ!」


 戸惑う僕に構わず、ルクスが攻撃を再開する。

 しかし、変わらず……オーデラ子爵はルクスの剣を軽々と防いだ。


「ルクス!」

「ルクス君!」


 二人も合流、ダンスホールの壁には氷が張り巡られ、ルクスの身体には補助魔法の光が纏った。これで、行けるか……?

 僕が戦えばどうだろうか……しかし、ルクスの剣は隠しダンジョン産だぞ?


「貴方のような人間が!町を駄目にするんだ……!俺は、そんな事を許せない!」


「ふん!何も知らぬ子供が、知ったような口を利くなぁ!!」


 オーデラは鬼気迫る顔で、ルクスの剣をまた弾く。

 これは……偶然じゃない!この男、剣技に精通しているぞ!


「ルクス、ここは一人じゃ――」


「アルは手を出すな!」


 なっ!そんな事を言ってる場合じゃないだろ!

 僕が一週間、ルクスを死なせない為に動いた意味がなくなってしまう、ここは我慢して、一緒に戦うべきだ!


「アルベルト君、ここは……ルクス君と、私に任せて下さいな」


「な!!プレザ、貴女まで!分かっているんだろ、この男は……実力を隠していたんだ!ここは全員で叩くべきだ!」


 騎士としては失格な言葉だ。

 しかし、この男の実力は本物……レベルやステータスでは計れない、底しれない嫌らしさを感じるんだ。


「平気ですわ。私がフォローします……ご安心を」


 そう言ってプレザは前へ。

 ルクスの隣に並び、何かを口にした。

 どうやら、始めからルクスと並び立って戦うことを決めていたようだ。


「アル……二人を信じよう?」


「だけど、姉さん……」


 もしルクスが負けたら、プレザが負けたら。

 バルハマク・オーデラが僕のようなバグだったら……この【ギャラクシー・ワールド・ソウルズ】の歴史が壊れてしまう!

 それだけは、避けなければ……例え、ルクスやプレザに嫌われようと――


 ガキィィィィン――!!


「!!」


 プレザが翳すロッドの先に、氷の刃が作られていた。

 なにそれ……知らない!!しかも超格好いいッ!!


「――【魔氷槍蓮まひょうそうれん】って言うんですのよ!」


 【魔氷槍蓮まひょうそうれん】!?それって、プレザの能力名じゃないか!

 でもそんな風に使えたのか……知らなかった。


「魔術師が接近戦など……愚の骨頂だぞ、プレザ・ミシス!」


「さぁ。どれはどうですかしらね!!」


 プレザは槍と化したロッドを支えにして、跳んだ。

 まるでポールダンサーのように、支柱をしっかりと掴んで。

 そしてその影から、狙っていたかのように。


「――これならぁぁぁぁぁぁあ!!」


「!!……むぅ!!」


 【レイスターセイバー】に雷撃を纏わせたルクスが、オーデラ子爵の腹部目掛けて、横に薙いだ。

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