第175話【激戦のダンスホール】



◇激戦のダンスホール◇


 ダンスホールに剣戟が鳴り響く。魔法が乱舞する。

 傭兵の悲鳴、怒号、そして戦闘BGM……がないのが悔やまれる。


「せぁ!」


 「がはぁぁぁ!!」と悲鳴を上げて、傭兵が吹き飛び壁に打ち付けられた。

 ドン!!と衝撃音が響くと、壁に亀裂が入る。

 そして、そのひびから……炎が吹き出た。


 ゴォォォ……


「うわっ!なんだっ!」


「これは……まさか、こんなにも火の回りが!?」


 ルクスが驚き、プレザが冷静に。

 しかしその様だ。子爵の部下が魔法でこのダンスホールを守っていたせいで、火の回りに気付かなかったんだ。


「姉さん!ルクスとプレザにバフ……加護を!プレザは氷の壁を頼む!」


「う、うん!」


「分かりましたわ!」


 二人が魔法で援護を始める、その力を借りて……前線の僕たちは戦うのみだ。


「ルクス!時間は限られる……早々に決着を!!」


「ああ!行こうアル、あいつを……倒すぞ!」


 数は少ない、もうリーダーを守る数人だ。

 蹴散らし……リーダーを倒して、バルハマク・オーデラを捕らえる!!




「――このガキどもがぁぁぁ!」


「「退けぇぇぇぇぇ!!」」


 僕とルクスは共に駆け、リーダーの正面へ。

 リーダーは大剣を持ち、隣にいた部下の襟首を掴みこちらへ投げ飛ばす。

 僕が回転蹴りでその投げられた男を吹き飛ばし、その隙にルクスが飛び出した。


「このぉぉっぉ!!」


 ガキィン――!!


「そんな攻撃ぃ……食らうかぁぁ!!」


 ルクスは大剣を弾き返し、リーダーに剣を振るった。


「ぐはっ……こ、こんな、ガキにぃ!」


 肩口から一閃されたリーダーは、後方に倒れる。

 ドサリと倒れ、ようやく……バルハマク・オーデラの悔しがる顔が見れると思ったが。


「ふん、所詮金で雇われた傭兵共だ。王国の騎士に魔術師が二人……それに」


 ルクスを見て。


「その姿、まるで勇者だな。あやつの言う通りだ」


 なに?


「そんな大それたものに興味はない!俺はただ、貴方のような悪党が許せないだけだ!!」


 いやルクス、問題はそこじゃ……


「ならば、我が直々に相手をしようではないか」


 そう言って、オーデラは剣を拾った。

 おい……なんだよこの展開は、オーデラ子爵が戦闘!?

 剣どころか、この人は一切の戦闘センスが皆無で、戦いだなんて出来ないはずだ……それが、自分から進んで剣を持つというのか!?


「行くぞ!はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 ルクスは【レイスターセイバー】を振り上げ、攻撃を行う。

 しかしオーデラは、なんと軽々とその一撃を受け止めたのだ……


「なっ!!」


「どうした?顔が驚きに溢れているぞ!!」


 ガキンッ!とルクスが弾かれ、一歩後退する。


「くっ!嘘だろ……弾かれた!?」


 ルクスも驚いている通り、視線はその拾った大剣へ。

 どう見ても普通の……どこにでも売ってそうな剣だった。

 そんな装備に、隠しダンジョンで手に入れた剣が弾かれた。


 その事実にルクスも、全てを知る僕も……驚きを隠せなかったのだ。

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