第174話【チャプター10】



◇チャプター10◇


 戦闘が始まった。

 傭兵の数は結構数いる。四人で戦っても、時間は掛かるが。


「はぁぁぁぁ!」


 バキン!と傭兵の剣を砕くルクスの【レイスターセイバー】。

 ルクスは対人戦にトラウマを抱えている。殺せはしないだろうが……この剣だと攻撃力が高すぎる。しかし、ルクスは上手く加減をして戦えている。

 プレザもラフィリアも、初級の魔法をテンポよく詠唱して、連続で傭兵を撃破していた。


「――【シャイニー・スピア】!」

「――【アクア・カッター】!」


 二人の魔法がダンスホールを乱舞する。

 ラフィリア姉さんは回復も兼ねているが、今のところは無傷でやれている。

 このまま行ければいいが。


「ふっ!」


 僕も双剣で戦っている。

 やはりモンスターに比べて動きが読みやすい、実にトロく感じる。

 倒れて出血に身悶える傭兵を蹴り飛ばして言う。


「ルクス!どれだけ倒した!」


「――十五だ!」


「ふっ……やるな!」


 やはりゲームの戦闘より数が多い。

 ゲームでは傭兵五人との戦闘を、三回繰り返す。

 三戦目で傭兵ボスとの戦闘があり、それでクリアだった。


「私は八人!」


「私は九人ですわ!」


 因みに僕は十三人。

 もう数が全然ちがう。傭兵ボスも、まだ後ろで余裕そうに見ている。

 だから……こちらから仕掛ける!!


「――【シャドウ・スティング】!」


「なっ!!て、テメェら!!」


 不意に間接攻撃を放ったが、傭兵ボスは部下を盾にして防いだ。


「じ、自分の部下を!なんてやつだっ!!」


「へっ!俺さえ生きていればなんとでもなるんだよ!!領主様は俺の価値を知ってる……好き勝手生きて金が貰える……最高だぜ!!」


「この……!」


 二人の魔法も、丁寧に回避する傭兵ボス。

 意外とやる!リーダーってだけはあるようだ。【パールの町】を襲った盗賊とは同じに出来ないな。


「バルハマク・オーデラ!貴方……部下に戦わせないで、自分で戦いなさい!!」


「我は金という武器で戦っている。その傭兵共が、我の武器だ」


 よく言う。


「貴族らしい発言だな。だが、お前のような貴族が【シャンバール聖王国】の貴族だと思うと癪だ。同じ貴族として……捨て置けない!」


 剣の切っ先を向けると、壁のように傭兵が群がる。

 ここまで統率が取れていて、どうして屋敷の火を消さないんだ。


「ふん。辺境の田舎貴族、リヴァーハイトの若輩め……」


 【パールの町】は【ルビーの町】より王都に近いんだけどね!!

 どちらかと言えば【ルビーの町】の方が田舎なんだけどね!!


「アル、ラフィ、プレザ……行くぞ!!」


「「ええ!」」

「……ああ!」


 残りの傭兵は二十人とリーダーか。

 倒せば、子爵は成すすべをなくして降参……そういう展開だったはずだ。

 しかし、なんだこの子爵の余裕は。

 ゲームでは、もう少し小物だったはず……なんだか、解せないな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る