第173話【最序盤のボス】



◇最序盤のボス◇


 悪徳領主、バルハマク・オーデラ子爵。

 開発陣の嫌われ者……後の業界の嫌われ者をモデルにした、ザ・悪者の敵キャラ。


 扉を開けると、広いダンスホールの中は火も回らず全てが無事のまま、その状態がキープされていた。これは、オーデラ子爵の部下である魔術師が魔法を使って炎を防いでいるからだ。


「……貴方がオーデラ子爵かっ!!」


「もう悪事は働かせないわっ!」


 レッドカーペットを走り、 会話の定位置まで到達すると、ルクスとラフィリア姉さんが声を荒げる。

 そして、まるで王を気取る玉座に座る男……あれがオーデラ子爵だ。


「貴様らか、我が屋敷に火を掛けたのは……」


「貴方の部下も大勢が倒れましたわ、囚われていた女の子たちも、もうここには居ません!」


 プレザも、真剣な顔で子爵に述べる。

 しかしオーデラ子爵は意に返さず、ゆっくりと玉座から立ち上がった。


「プレザ・ミシスか。お主がみずから献上されてくるとは、捨てたものではないのぉ」


 パチンと指を鳴らすと、テンプレの如く傭兵たちが現れる。

 ゾロゾロと、結構いるな……十人じゃなかったか?

 お、潜入の際に僕を殴ってくれたあの男もいる……絶対殴るぞあいつ。


「小物だな、子爵」


「なに?貴様……どこかで」


「僕はリヴァーハイト辺境伯が子息、アルベルト・リヴァーハイト。レイシア姫殿下の筆頭騎士である僕がいる以上、言い逃れは出来ないぞ」


 子爵は「何の事だか分からぬな」ととぼける。

 下の者を見るように、傭兵に指示を出すと。


 ザザザザザ……と、周囲にまで傭兵が。

 どこに用意してたんだよ、こいつらを。


「これだけの傭兵がいながら、屋敷を守らないなんて!」


 ルクスは【レイスターセイバー】を構え、険しい顔で子爵を睨む。

 許せないんだ、守れる戦力が有りながら放置をする子爵が。


「ルクス、私たちであの人を倒しましょう!」


「そうですわね、私も……何年も嫌がらせをされてはらわたが煮えくり返っていますの。町を巻き込んだことも腹立たしいですし、いっそ……」


 プレザはワンドを子爵に差し向け、臨戦態勢だ。

 子爵自体が戦う訳でもないくせに、子爵は余裕を見せる。

 この傭兵たちに、どうしてそこまでの余裕を持てるんだ……ゲームの時は、普通に傭兵三連戦で終わったが……果たして、このまま進むだろうか。


「ふん。招かれざる客もいるが……プレザ・ミシス、お主を手籠めに出来るのなら屋敷も安いものだ。お前たち……高い金を払っているんだ、この痴れ者共を……殺せ!!」


 もう悪役のセリフを次々と並べている。


「ルクス、やるぞ!」


「ああ!町を巻き込み、住人を困らせ……仲間を傷付けようとした!俺は、貴方を許さない!」


「ええ、治癒は任せて!皆!」


「……【ルビーの町】も川も、研究の為の拠点なのですわ。良くしてくれる優しい人たちも沢山いる……その人たちの恩に報いる為に、バルハマク・オーデラ……覚悟!!」


 チャプター10。

 バルハマク・オーデラ子爵の屋敷、傭兵戦……開始だ!!

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