第171話【オーデラの屋敷】



◇オーデラの屋敷◇


 ドカッ!バキッ!バゴンッ!!


「ぐはぁ!」

「おげぇっ!」

「ふぐぉ!」


 コミカルな音を鳴らして倒れる傭兵三人。

 案外、素手でも行けるものだね……アルベルト。


「アルテちゃん、そろそろ」


「ああ、ルクスと姉さんを呼ぼう!」


 そう言うと、僕は窓に向かって気絶した傭兵の一人を抱えて投げた。


「らぁぁぁぁぁっ!」


 ガッシャーーーーーン!!と。

 デカい窓だし、合図だと気付くだろう。

 次は正門だ。


「先行する、守りは頼む……!」


「ええ!」


 ここから正面入口まで、走れば一瞬だ。

 それでなくても【ダイブ・トゥ・ノワール】で行ける……守備の傭兵は、二人!


「はぁぁ!」


 影へ忍び、出現。

 飛び蹴りを見舞う。


「ぐあっ!なんだ――」


 よろけただけだったが、体勢は崩した。

 後は一撃を。


「ふっ!」


 ドゴッ……と腹にめり込む膝。


「うごっ!はぁ……」


「て、てめぇは牢屋に入れたクソガ――」


「黙れ」


 小ジャンプをし、そのまま回転。

 傭兵の側頭部へかかとをめり込ませた。

 気絶したことを確認し、扉に手をかけたが。


「よし、扉は……ちっ!流石に壊せないか……なら!!」


 何か不思議な力か、何故か扉が開かない。しかも鍵穴もない。

 だから僕はプレザに見られていない事を確認し、【バニシングキャリバー】を顕現。

 超高速の使用をし、正面入口を破壊した。


 ドォォォォォォォォン!!


「――ルクスーーー!!いいぞ来ぉぉぉぉい!!」


 直ぐに【バニシングキャリバー】を消し、プレザと女の子たちと合流。

 はぁ……空気が美味い。煙かったからね。


「アル!無事だったか!よかった!!」


「プレザも無事ね、よかったぁ!」


 二人が合流。


「二人の火も助かった。それで、この娘たちをだな……」


 想定では、ゼファーの荷馬車でこの子たちを救い町まで運んで貰うはずだったが。


「そ、それがゼファーさん、居ないんだよなぁ」


「うん。火矢を掛けたら、消えちゃってて」


 あの野郎……バックレやがった。


「くっ、じゃあどうする……」


 想定外は受け入れる覚悟だったが、そっちの方向は考えてなかったぞ。

 しかし、そんな僕たちの小さな焦りに対し。


「あ、あの……私たちなら、ここから帰れますので、どうかご心配なさらずに」

「そうです!どうか、あの領主を!!」

「はい!ゆっくり隠れながらなら、【サンバル川】も渡れると思うし……」

「そ、そうよね!せっかく助けられたんだもの……私も自分で帰ります!」


「貴女たち……ええ、とても偉いですわっ!」


 プレザが少し感動していた。

 よし……それじゃあ、屋敷のオーデラの部屋に行こう。


 僕たち四人は少女たちを見送り。


「しゃあ!行くぜ皆!悪徳領主……オーデラの首を取る!!」


「首は要らない。捕まえるだけだ」


「あ、そ……そだな」


 赤面するルクス。

 お前トラウマはどうした。まさかここでトラウマも吹っ切ったの?

 そんな訳はなく、ただ展開に流されただけのようだけど。


「オーデラ子爵は二階の私室か、大広間のダンスホールにいるはず……そこは広いし、火が回るのも遅いと思うから」


 プレザの言う通りで、決戦の場所はダンスホールだ。

 オーデラは戦えないから、傭兵団と三回の戦闘……この場合、きっと人数が増えているパターンだろうか。

 ともかく、まずは二階に上がり……オーデラ子爵を探そう。

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