第170話【手引きをしよう】



◇手引きをしよう◇


 僕とプレザの二人は、牢屋の状況を確認する。

 そこには、ゼファーの情報通り女の子たちが大勢いた。


「大丈夫ですの、皆さん……今、開けますわ!」


 プレザは勿論、装備がない。

 ここは僕の出番だ、女装だけど。


「檻から離れて奥にいるんだ」


 「え、男!?」と声が。

 そうです男です、女装だけど。


 僕は檻を掴み、先程と同じく力を込める。

 バキッ……!!と折れ曲がり、少女たちを救出。

 これでゼファーとの約束は完遂だ。


「よし、じゃあ上へ行こう」


「ま、待ってください!私たち……助けられても、行く所が」


 そうなのか……ゲームだと、ここはプレザ一人だったはずだから視点がなかった。

 助けたのはプレザだけど、こんな会話があったのか。


「平気ですわ。私も【ルビーの町】の住人です……だから皆で帰りましょう、町へ。それに、この悪徳領主は必ずクビにし、追放してみせますのよ!だから安心してくださいまし……そうすれば、きっと安心して暮らせますわ」


 プレザは安心させるように少女たちに言う。

 本当に責任感が強いな、面倒を見るつもりなんだ……少女たちの。

 負担を減らす為に、僕も【パールの町】で掛け合って見ようかな。


「……ん、煙?」


「本当ですわね、皆さん!その木箱の中の衣服を使って、煙を吸い込まないように!アルテちゃん、平気ですの?」


「構わない。このまま行こう」


 全部で七人か、守りながらでも……大丈夫なはず。

 地下から一階まで行き、正門を開放する……そうすればルクスたちを手引きできる。




「……ゴタゴタだな」


「ですわね。まったく、統制の取れていない人たちです事」


 頭の上に重りが乗っている。

 カツラ越しだけど、その柔らかさが……じゃない!


「この騒動に乗じよう、プレザは女の子たちの護衛を」


「分かりましたわ」


 僕は地下からの階段を飛び出す。

 衛兵も出払っている、隙だらけだ。


 角を確認し、プレザをちょいちょいっと手招きする。

 火の回りが早いな……ゼファーの奴、どれだけの火薬を使ったんだ。

 因みに、ゼファーいわく「火矢だよ火矢!」とルクスとラフィリア姉さんに言い訳しているが、正体は火炎放射器だ。

 流石、地球人である。


「――お、おい!!お前らぁぁ!脱走だぁぁぁぁぁあ!!」


「ちっ!バレた……プレザは女の子たちを守って!」


「アルテちゃんは!?」


「僕は目撃者を……潰す!!【ダイブ・トゥ・ノワール】!」


 トプンと影に入り込み、男の真後ろへ。


「な!ど、どこに……――がはっ!!」


 しゅ、手刀って本当に気絶するんだ。

 ドサリと倒れた男の首には綺麗に一本線が入っている。

 手刀云々うんぬんではなく、ステータスという数字の暴力かな、これは。




――――――――――――――――――――――

移動間会話システム【火事だぁぁぁぁ!】

ゼファ「それじゃあいいなお前ら、あっち見とけ!」

ルク「分かった、頼むよゼファーさん」

ラフィ「はい!よろしくお願いします!」

ゼファ「よしっ!(点火)」


ゼファ「いいぞお前ら!叫べぇぇぇぇぇ!!(そそくさ)」

二人「「か、火事だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」

ルク「凄い火の回りが早い……ゼファーさん、これってあれ?(キョロキョロ)」

ラフィ「あれぇ?ゼファーさん!?居なくなっちゃった……(驚)」

ルク「ま、まぁいい。後はアルとプレザを待つだけだ!」

ラフィ「うん!頑張って……二人共!!」

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