第166話【オーデラ子爵の悪評】



◇オーデラ子爵の悪評◇


 バルハマク・オーデラ子爵。

 【ルビーの町】を治める領主であり、【サンバル川】の近くに屋敷を構える男だ。

 彼には昔からよくない噂があり、今回の件はそれが発端だ。


「デカい屋敷だなぁ」


「そうね、リヴァーハイトのお屋敷よりも、大きいかしら」


「そうだね」


 それはダンジョン扱いだからなんだよ、姉さん。

 しかも詳細な設定として、オーデラ子爵はかなりの成金であり、金に物を言わせて悪事を働いていた。


「さぁ……ぶち倒してやりますわぁ……」


「プ、プレザ……?」


 プレザの怒りのボルテージはマックスだ。

 数年前からプレザへのアプローチをして来た子爵、それが行き過ぎた。

 【サンバル川】は【ルビーの町】まで繋がっており、鮮魚もそうだが、生活水に使われる程綺麗な水質なのだ……それを、オーデラ子爵は汚した。


 従わないのなら、町の人間はどうなっても知らんぞ……テンプレの悪役だよ。

 プレザはこれまで、自慢の頭脳で対処しかわしてきたが、それも限界だった。

 そんな時だった、ルクスたちが自分を探してやって来たのは。


「あーすみませんわね。つい怒りが」


 拳を握り、笑顔を見せるが目は笑ってない。

 それもそのはず、オーデラ子爵の悪評はそればかりではない。

 この子爵は、貴族だということを傘にやりたい放題……プレザだけではないのだ、被害にあったのは。


「……隠れるぞ。見張りがいる」


 僕は三人をうながし、視界に収まる前に影に隠れる。

 見張りは、モンスター扱いの傭兵だ。

 流石に悪徳貴族……金だけは腐る程あるのだろう。

 子爵がお手つきの女性を、彼らの餌にしているという設定もあったはず……こういう所、昔のゲームは結構真っ黒だよね。


「ど、どうする?強行突破……するか?」


「無理よ、数が多すぎるもの。それより、どこか侵入出来る場所を探しましょ?」


「いいや、この装備があれば行けるって!!」


 ルクス、ラフィリア姉さんの意見は割れる。

 プレザは考えるように。僕も同じだ。


 まぁ……僕は方法を知ってるから、なんとも言えないし、それがまたアクシデントになる可能性が怖い。

 しかし、僕の不安など知らないと言わんばかりに……その声が掛けられる。


「――なぁにしてんだ?お前さんたち……」


「「え!?」」


「……あら?」


「……」


 入口から少し離れた場所から、実に良い声が響く。

 大きな馬車くるまは、【パールの町】で見た偽装馬車。

 そして馬に乗るのは、黒髪の地球人……ゼファー・クリスタラーだ。




――――――――――――――――――――

移動間会話システム【戦闘勝利1】

ルク「俺たちの勝ちだ!!(剣を掲げる)」

ラフィ「……私、何もしてないけど(呆)」

アル「ルクス一人で戦っていたな(呆)」

プレ「それで“たち”と叫ばれても、ですわねぇ(呆)」

ルク「あ、あれ……?皆?」

三人「「「……(そっぽ)」」」

ルク「えぇぇぇえ!?凄い疎外感!!俺、頑張ったのにぃぃぃぃ!!」

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