第163話【正式に加入】



◇正式に加入◇


 僕とラフィリア姉さんが、【ルビーの町】の西にあるプレザの研究所に到着すると同時に、中からルクスとプレザの二人が出てきた。

 姉さんは少しだけムッ――とするも、直ぐに笑顔になった……多分、事前にルクスに何をするか聞いていたんだろう。僕は……知識で知ってただけだ。


「おー来たか二人共。よし!それじゃあ……もう一度!」


「ちょっと待つんだルクス」


 気合を入れようとしたルクスに待ったをかけるのは僕だ。

 いくら定められたシナリオとは言え、準備不足では同じ目に遭う可能性が高い。

 もし、【ザァーヴァ】のような惑星外モンスターが出現したら……ルクスはまたあの力を使う。これはもう断定と言っても良い。ルクスは絶対に無茶をする。


「な、なんだよアル……せっかく気合をいれたのにさぁ」


「気合を入れるのはいいさ。でも、もう少し説明をしてくれないか……プレザも、そうだろう?」


 僕はルクスの少し後ろ、ドアに鍵を掛けるプレザの背中に問う。

 プレザは振り向き、笑顔で。


「ええ……そうですわね。アルベルト君」


 本来の正史なら、今頃オーデラ子爵を征伐し、【パールの町】へ帰還している頃合いだ。若干のロスというか、別に時間を気にしている訳では無いけどさ。


「プレザ、ルクスと一緒ということは、貴女は僕たちに協力をしてくれる……それでいいのかな?」


「おお!……よく分かったなぁアル。流石だぜ!」


「予測はできるし、ラフィリア姉さんの態度で分かる」


 姉さんは「え!?」と両手で頬を触る。

 い、いや……僕が勝手に知ってただけだからさ。


「うふふ……ルクス君にほだされましてね……私も、自分の為、そして誰かの為に生きてみたいと思ったのですわ。ですので、オーデラ子爵の依頼は破棄し……それでも、私はオーデラ子爵をなんとかしたい、だから――仲間として、改めてお願いしたいと、そう思っていますわ」


 自分の身体を抱きかかえるようにして、プレザは嬉しそうに言う。

 やっぱり、ショートイベント【ルクスとプレザ】は発生していたようだ。

 プレザは真剣な顔で僕たちを見る。ルクスも、うなずいてこちらを見た。


「ふっ……そうか。なら話は早い……姉さん」


「へ?……あ、うん!」


 忘れてたね?


「「??」」


 僕は宿で姉さんに話しておいた手順をお願いする。

 少しの戸惑いはあるだろうが……ドン!と、木箱が置かれた。

 どこから出したって?そりゃ……神様仏様ミュゼ様ですよ。


「ど、どこから出したんですの!?」


 プレザが驚く。

 そりゃあね、ラフィリアの手元から出たから。


「えへへ、これ師匠せんせいに頂いたの」


 そう言って見せるのは、【ディメンジョンボックス】というアイテム。

 【ギャラクシー・ワールド・ソウルズ4】から登場した、異世界ではおなじみの……アイテム収納ボックスだ。


「これは道具を保存出来る魔法のアイテムだよ、そして……この木箱こそ、見て欲しい物だよ……ルクス」


「え、俺に?」


 ルクスは木箱の前にしゃがみ、ゆっくりと蓋を開ける。

 そこには、【リベラスタの洞窟】での戦利品……ルクス専用の装備があった。

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