第3話【彼にとっての生きがい】
◇彼にとっての生きがい◇
【ギャラクシー・ワールド・ソウルズ8】制作プロデューサー、チームリーダーである
「いやー、アイツほどGWSに詳しい人間は居ませんねぇ。社内でも噂はあったんですよ、えらくGWSに詳しい社員がいるって。でもね、当時はアプリ板の開発だったでしょ、シナリオは外注依頼、イラストレーターは複数を抱えてる。BGM担当の先生は歴代と同じ人だったけど、疑惑もあったし……そんな環境の中で声をかける余裕なんてないない。いくら知識があっても、作れるとは限らないでしょう?ましてや元・ファンだ……危険だと言われても仕方がない」
最初の印象は、ただのオタクだったそうだ。
熱心なオタクが夢を膨らませて、運良く開発会社に入ってきただけ。
だが、その評価は見事に変わる。
「でもねぇ……アイツの熱意と愛は本物だった。断言しますよ、
一息つき、プロデューサー
因みにこのインタビューは、完成した【ギャラクシー・ワールド・ソウルズ8】の発売直前インタビューだった。
「そんな愛のある男が、開発途中に死んじまうなんてね、しかも終盤も終盤。マスターアップ直前だなんて……運命ってのは残酷だってよく言うけど、本当だったよ。もしかしたら、第二の
その言葉を本人が聞いたら、本人は嬉しさの余り卒倒するだろう。
このインタビューを聞いた【ギャラクシー・ワールド・ソウルズ】のファンも、この男が復活させたと思うはずだ。
しかし残念ながら、それは叶わない。
彼……
最後の仕事は、マスターアップの寸前。
早朝作業中の、突然死だった。
「ウチも、ブラックでは無いつもりなんですけどねぇ。作業時間は決められていたし、残業も極力無し。今作の開発期間を考えれば、余裕もあったんだよ……もう少し早く、誰でもいい、チームの誰かが出社してればねぇ」
しかし
一人でのサービス残業は当たり前。他人のカバーを自ら進み、それらを多重で引き受けていた。イラストレーターへの連絡、3Dを担当するグラフィッカーとの連携、作曲家との打ち合わせ、シナリオライターとの仲介。
彼は【ギャラクシー・ワールド・ソウルズ8】の中身、八割以上を掌握していただろう。更にはマーケティングやプランナーまで、彼は働きすぎていた。そして当然のようにテスターもしている。
これは、プロデューサーにとっては少々恥ずかしい話だろうが。
しかしそうなれば当たり前だ。疲労は溜まるし身体も悪くする。
食生活も雑で、運動もしない、ひたすらデスクワークで開発に勤しみ……そして完成間近で、死因不明の突然死だ。
「これを笑って言う事はいけねぇんだろうけど……今頃、天国で
ゲームへの愛。
彼の生きがいがもたらした、命の終焉。
しかしてゲーム……【ギャラクシー・ワールド・ソウルズ8】は完成し、その社運を賭けた新作は見事、神ゲーへと返り咲く。
だが、
知らずに死して、彼は
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます