第50話 辺境伯娘の独り言4 ついに厄災女を倒す時が来ました

その日、私は朝から気分が良かった。


ついにあの憎き厄災女を倒す時が来たのだ。


第二王子がその屋敷に連れて行かれた時につけた我が家の手の者から、第二王子を連れ出す日にちを連絡してきたのだ。それが丁度今日だった。


私達は厄災女に無理やり連れ出された第二王子に、一緒に逃げましょうとまずその者からアプローチさせたのだが、信じられないことに何故か第二王子はそれを断ってきたのだ。


絶対に厄災女に何かで脅迫されているんだろう。


仕方がないので我々は王子を眠らせて連れ出すという強硬手段に出ることにした。


前回は万全を期したと思われた古代龍が一瞬で厄災女に降伏したので、今回は更に余裕をもった4段階の作戦立てにしたのだ。今回は成功するはずだった。



まず、屋敷の端の訓練場で訓練している第二王子を眠らせて、裏口から連れ出して馬車に乗せて第一アジトに送りの込む。


これが第一段階だ。


そして、厄災女に第二王子を預かったから取り返したかったら一人で来いと第1アジトにおびき出す。


これが第二段階だ。


そして、のこのこととやってきた厄災女がいない屋敷を陽動部隊が急襲して、敵の騎士たちが集中している間に、我が手の者がガードがゆるくなった厄災女の息子を誘拐して第2アジトに連れて行く。


これが第三段階。


第二王子を取り返して意気揚々と屋敷に帰ってきた厄災女が息子が拐われたと知ってじたんだふんで悔しがるのが目に見えるようだ。


そして、万全の迎撃体制を取っている第二アジトに厄災女を誘い込んで殺すのが第四段階だ。


これこそ完璧な案だ。


私とお父さまとジムで考えた最高の対厄災女攻略作戦だった。


いくら厄災女が強くても実の息子を人質に取られていれば、我が方の勝ちは決まっている。


私は息子を返してくれと厄災女が泣き叫ぶさまを想像してほくそ笑んだ。


今まで散々偉そうに私達を見下してくれた天罰がついに厄災女に下るのだ。


そして、厄災女さえいなくなれば、王妃様も諦めて私を第一王子殿下の婚約者にしてくれるだろう。




私は侯爵邸に向かった奴らが帰ってくるのを、今か今かとがらんとした廃墟の館で待ちわびていたのだ。


「戻ってきました」

そこへ、見張りが叫んできた。

少し遅いが、首尾よく行ったのだろうか?


馬車が屋敷の門から入ってくる。



しかし、門を入った途端に御者が馬車から落ちたんだけど、何でなのだ?


慌てて、兵士たちが駆け寄るが、馬まで倒れてしまったんだけど、何故だ?


「どうしたのだ?」

「さあ」

取り敢えず、お父さまと馬車に向かうと、


兵士が扉を開けた途端だ。


「「「オギャーーーーオギャーーーー」」」

凄まじい大音響の泣き声が廃墟に響き渡ったのだ。そのあまりのうるささに私は思わず耳を押さえた。




扉を開けた兵士はその音波をもろに受けて吹っ飛んでいた。


私は耳を押さえていても、頭の中に凄まじい音が響いてきた。



馬車の中では大声で泣く赤子がいたのだが、その鳴き声の凄まじさは口では言い表せないほどだった。


「ど、どうなっているのだ?」

馬で後ろからついてきた兵士にお父さまが聞くと


「厄災女がいませんでしたので、赤子まで誘拐できたのですが、この有り様でして。

同乗したものはこの音量に完全に気絶。我々も気が狂いそうになるのを我慢して後方からなんとかついてきた次第です」

兵士が倒れながら息も絶え絶えに言うんだけど。


「赤子って母親から引き離されると、ここまで大音量で泣けるの?」

私が耳を抑えながら聞くと


「そんな訳無いだろう。この赤子が異常なのだ」

お父さまが耳を押さえて叫んだ。


私はもう気が狂いそうだった。


何も考えずにツカツカとその馬車に近付くと座って泣いている赤子を黙らせようと殴りかかったのだ。


ガツン


「ギャーーーー」

私はあまりの痛さに悲鳴を上げて地面の上をのたうち回ったのだ。


なんと、赤子の周りに障壁が張られていたのだ。


その障壁を殴ったのだ。絶対に指の骨が折れたに違いない!


そんな私の目に遠くからぐんぐん大きくなってくる緑の物体が目に入ったのだった。

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ここまで読んで頂いてありがとうございます。

さすが厄災女の息子? 泣き声まで脅威です。

そこに緑の物体が……

悪役たちの最大の危機です。

どうなる悪役の辺境娘?(普通は反対なのに……)

事態はまだ変わります。

続きをお楽しみに!


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