第27話 私達の乗った馬車に矢が突き刺さりました
「メリー、あなた、誰に言われてシャルルを誘拐しようとしたの?」
私が聞くと
「誰かは判りません。先ほどジャンヌ様が倒された執事に言われて、外で会ったのが最初で最後でしたから」
メリーが答えてくれた。
「ジャンヌ様が瞬殺されるからまた、手掛かりが消えてしまったではないですか」
アリスが白い目で見てくる。
「仕方がないじゃない。ちょっとむしゃくしゃしていたのよね」
「仕方がないじゃありません。証人は生かしてくれないと尋問にもかけられないではありませんか」
アリスが文句を言うんだけど。
「まあ、終わった事は仕方がないじゃない。メリー、もう一度会えば判るでしょう?」
「それはまあ、判ると思います」
メリーが頷いてくれた。
「ほら見てごらんなさいよ」
私が得意げに言うが、
「その場にいなかったら判らないじゃないじゃありませんか」
ぐうの音もつけないような意見をアリスは返してくれたんだけど
「いや、夜会会場にはいるわよ。私の第六感がそう言っているの」
私は自信ありげに言い切ったのだ。
「どうだか」
疑い深そうにアリスが私を見るんだけど
「いや、ジャンヌの野生のカンは当たるからな」
エドが太鼓判を押してくれた。
「ほら見てごらんなさいよ」
私が自慢して言うと
「今まで、それでどんな酷い目にあわされて来たか。こいつ、危険が待ち受けていると判っているところに俺たちを行かせるんだぞ。自分は後方でのうのうとしておきながら」
「何言っているのよ。レディファーストよ。当然男達はか弱い女を守らないと」
「どこがか弱いだ! お前の方が圧倒的に強いだろうが」
エドが文句を言って来た。
「エド、それ男のあなたが言って恥ずかしくないの」
私が軽蔑して言ったのだが、
「全く恥ずかしくない。何しろ、この王国ではお前に勝てる奴は一人もいないからな」
エドが自慢して言ってくるのだが、それが自慢できることか?
それに私にも勝てない者はいるのだ。
「そんな訳ないわよ。王妃様には頭が上がらないし、陛下にも逆らったことは無いわ」
私が反論したが、
「それって、逆らったら、反逆罪になるのでは」
アリスがとんでもないことを言ってくれるんだけど
「普通王子を足蹴にしても反逆罪だ」
エドが笠に着て言うんだけど
「何言っているのよ。私は王妃様からはエドをもっとガンガン鍛えてやって欲しいって頼まれているんだから」
「な、何だと、あのくそ親、俺を殺す気か」
私の言葉にエドが頭を抱えているんだけど……
「それよりもジャンヌ様。本当にその恰好で王宮の夜会に乗り込まれるおつもりですか?」
アリスが私の衣装を見た。
私はさっきのままの戦闘服だ。
「そうだ。ジャンヌ。その恰好はまずいのでは」
「良いのよ。断罪に行くんだから」
「いや、さすがにまずいだろう。そもそも俺が贈った衣装はどうしたのだ?」
エドまでが聞いてくるんだけど
「あんな派手な衣装、着れるわけないでしょ。そもそも私は今は喪中なのよ。黒しか着ないわよ」
私が言うと
「お前、そもそも、今着ているのは喪服じゃなくて戦闘服だろうが」
エドが指摘してくれた。
「良いじゃない。黒も入っているでしょ」
「そもそもお前は大人しく喪中なんかしていないじゃないか。侯爵家で逆らったやつらを一掃したし」
「仕方がないでしょ。天使な息子のシャルルをシャルル様の後につけるには私がでしゃばるしかなかったんだから」
「でもその後は静かにしていれば良かっただろう。喪中を一年でも十年でも。そうしたら世の中はもっと平和だったのに。そもそも王宮に出るに及ばずという一言を入れてやったろうが。それを破ってお前がわざわざ王宮なんかに来るから側妃と喧嘩になったんだろうが」
エドが文句を言って来た。
「その文句は王妃様に言ってよ。私は家で大人しくしていたかったんだけど、一度天使な息子のシャルルに会いたいって言われたから連れて行ったのよ。私も王宮なんかに行くよりは天使な息子のシャルルと館に閉じこもっていたかったわよ」
私が文句を言うと
「そうか、元凶は母上か。母上も何を考えておられるのだ。ジャンヌなんて王宮に連れ出したら碌なことにならないのは判っていたろうに」
何かエドは私を貶めた発言をしてくれるんだけど。
「王妃様は殿下とジャンヌ様をくっつけようとなさっているのではないですか」
そこにアリスが爆弾発言をしてくれたんだけど。
「「はああああ」」
私達、二人の声が重なった。
「何を言っているのだ! それだけはあり得ないだろう」
「そうよ。本当にあり得ないわ」
珍しくエドと私の意見が一致したのだ。
「そうですか。私からしたらお似合いかと思えますが」
アリスがまたもや爆弾発言をしてくれるんだが。
「あなた、目が悪いの? どこがお似合いなのよ」
「本当だ。こんな男女あり得ない」
「誰が男女よ。おんなじことを返してあげるわ」
「何だと」
私達が言い合いを始めた時だ。
ズブリ、
いきなり馬車の屋根からから矢が突き破ってエドの目のを通って足元に突き刺さったのだ。
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