第25話 天使な息子を誘拐しようとした侍女をやっつけようとしました

私はエドのエスコートで馬車に乗り込んだ。

そして、エドも乗り込んで、扉が閉まる。


「じゃあ、戻るわよ」

私は意を決して言うと

「戻るって、何を言ってるんだ!」

驚くエドを無視して馬車の足元の非常用の扉を開けたのだ。


「えっ!」

そして、驚いているエドを抵抗する間もなく、開いた空間に落としたのだ。


「ギャっ」

悲鳴を上げるエドの声を消音魔術で消して、私もその上に飛び降りた。


地面には更に非常用の穴が開いていた。


「ギャーーーー」

私はその穴の底の石畳に這いつくばっているエドをクッションにして降り立った。


「お前、どういうつもりだ! いきなり、俺を地面に叩き落すわ、その上に飛び乗ってくるわ。夜会はどうするんだよ」

エドが文句を言って来た。


「声がでかいわ!」

私が注意すると


「あのな!」

エドが文句を言う。


「誘拐犯を捕まえに行くわよ」

そう言うと私は夜会服を脱ぎ去ったのだ。


「おい、こんなところで脱ぐな」

慌てるエドの前に迷彩色の戦闘服を来た私が現れたのだ。


その私の胸の中には天使な息子のシャルルちゃんがキョトンとしていた。


「はい、よく静かにできていまちたね」

私がシャルルの頭をナデナデする。


きゃっきゃっ、シャルルは喜んでくれた。


「お前な。元々夜会に来る気全然無かったろう!」

なんか横ではエドが頭を抱えている。


アリスが秘密の天井の扉を締めてくれて、馬車が動き出す。

馬車の中にはしばらく私とエドの幻影魔術が見えているはずだ。


「お嬢様、急ぎませんと」

アリスが急かしてくれた。


「そうだわ。行くわよ。エド」

「行くって何処にだよ?」

「側妃の手の者による天使な息子のシャルルちゃん誘拐犯逮捕よ」

「誘拐犯逮捕って、シャルルはお前の胸の中にいるじゃないか!」

白い目でエドが見てくるんだけど。


「何言っているのよ。あそこにも私の最高傑作『天使な息子のシャルルちゃん2号』がちゃんといるのよ」

「何だよ。どのみち幻影か何かで作ったやつだろう! 俺の裸踊りを王宮で披露してくれたみたいな」

「あら、あれは実際に記録した映像よ。なんであんたなんか幻影で作らないといけないのよ」

私は平然と答えたのだ。


「お前、すぐに消せ」

エドが怒って迫ってくるんだけど、


「やあよ。なんかあった時、それで脅すから」

「お前、そんな事しなくてもいつも脅しているだろうが。存在自体が脅威なんだから」

「何か言った」

私がギロリとエドを睨むと

「なんでもない」

エドが慌てて頭を振ってくれた。


「お嬢様急ぎませんと」

「そうだったわ」

私は慌てて地下通路を通って私の部屋に向かったのだ。


「お前の家って地下通路まであるんだな」

「これは昔からある通路よ。シャルル様にこんな通路もあるから覚えておくようにって言われたのよ」

「そうなのか? 俺はてっきり最近お前が掘ったのかと思ったぞ」

エドが言ってくれるんだが


「私が掘るなら、あんた達が手伝ってるでしょ」

「おい、俺は穴掘り職人かよ」

エドは文句を言うが、


「しっ、ここよ」

私は階段を登った。階段は暖炉に通じていたのだ。


中を除くと

「まだ誰もいないわね」

「そうだな」

暖炉の中から伺う私の上からエドが覗いてくれた。

「重いわよ」

「グッ」

背中にあたったのでエドに肘鉄を食らわせてやった。


「お前な。何も思いっきりやらなくても」

エドが胸を押さえて呻くが、私は大切な大切な天使な息子を胸に抱いているのだ。

ばっちいエドなんて近づけてはいけない。


「お前、誰がばっちいんだよ」

エドが文句を言ってくるが

「しぃぃぃぃ」

私は無視した。


「来ました」

アリスが横から教えてくれた。


入口の扉がゆっくりと開いて女が入ってきた。

侍女だ。

「誰だ?」

エドが小さい声で聞いてくるが私も全員の顔と名前は覚えていない。


「さあ」

私が首を振ると


「メリー・ドットです」

即座にアリスが答えてくれた。


「さすがアリス」

「ジャンヌ、屋敷の使用人の顔と名前くらい覚えておけ」

エドが呆れて言ってくれるんだけど、

「じゃあエド、あんた王宮の使用人の顔と名前全部覚えているの?」

私は虐めるつもりできいてみた。


「ある程度はな。そもそも俺は彼女の顔を見たことがあるぞ。確かシャルルと同じクラスだったんじゃないか」

エドが言ってきた。


「そう言えばあんな地味な子もいたわね」

私も少し思い出した。


「お前に比べたら誰でも地味だぞ」

「しっ、近づいた」

叫びそうになるエドを私は黙らせた。


メリーはゆつくりとベッドに近付いた。

少しでも、シャルルちゃんに変なことしようとしたら雷撃する気満々で私は構えたんだけど……


メリーは私が作った天使な息子のシャルルちゃんを見て固まったんだけど……


何で?


「うーうー」

いかん、天使な息子のシャルルちゃん、そのままに作ってしまったからシャルルそのままの動きなのだ。めちゃくちゃ可愛い。


そのシャルルが手を伸ばしたのだ。

その天使な息子のシャルルちゃんにメリーは手を伸ばしたのだ。


「何をしているの?」

私は後ろからメリーに怒りの声をかけたのだ。


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