第24話 侍女視点2 ジャンヌの息子を拐うことにしました
そんな時だ。
ついにジャンヌが本性をだしたのだ。
ジャンヌはどんな力を使ったか定かではないが、いきなり自分の息子の赤子を侯爵にして、自分は後見人になったのだ。
バーバラ様は体を使って、王太子を籠絡したのだとおっしゃっていらっしゃったが、私はさもありなんと思った。普通は赤子の貴族位の継承なんて有り得ないのだ。余程のことがないと承認はされないのだ。それに女の後見人もとても珍しいのだ。男性の青年貴族がいれば普通はそうなるのだ。今回は例え、赤子が継承してもブランドン様が後見人になるはずだったのだ。どちらにしろバーバラ様がこれまで通り侯爵家で力を保持されるはずだったのだ。
それがジャンヌのものになったのだ。バーバラ様のお怒りはどれほどのものだったろう。
更にジャンヌはバーバラ様に本邸を明け渡せとはっきり言ったそうだ。
今までシャルル様のお父さまの面倒をずうーっとバーバラ様らに任せきりにしたくせに、いきなり出て行けとはどういう事なのだ。
その事に完全に切れてしまわれたバーバラ様はそのまま、ジャンヌを亡きものにしようと兵を起こされたのだ。
私は驚きで、ただただ見ていることしか出来なかった。
私の騎士のジョンもその蜂起に加わったのだ。
しかし、バーバラ様とジョン達はいつまで待っても帰ってこなかった。
何でも後で聞くと、怒り狂った、ジャンヌの雷撃によって、直撃されて、死んでしまったそうだ。
私はそれを聞いて、号泣したのだった。絶対にジャンヌは許さない。
私は心に決めたのだった。
しかし、一瞬で100名以上の騎士達をジャンヌは倒したのだ。私一人が逆らったとしてもかなうわけはなかった。
その後も誰の手の者か知らないが、ジャンヌの赤子を誘拐しようと失敗してジャンヌの雷撃の犠牲になったものがいた。
普通ではジャンヌに仕返しするなんて無理なのだ。
私は幸いなことに私はそのまま屋敷の侍女として雇われ続けていた。しかし、ジャンヌに一矢報いようにも、ジャンヌはずうーーーっと赤子と一緒なのだ。
さすがの私も赤子まで攻撃しようとは思わなかった。
そんな時だ。私に執事の一人が声をかけてきたのだ。ジョンのあだを打ちたくないかと。
私は迷うわけもなく頷いた。
そうしたら、屋敷の外に連れていかれて、見目麗しい男に会わされたのだ。
男は私を見ると、微笑んできた。
「ジャンヌの行いは本当に鬼畜の所業だ。逆らってきた者を皆殺しにするなど人間のすることではない。その方のジョンには悪いことをしたな」
男は私に謝ってくれた。
「いえ、悪いのはジャンヌですから」
「そうか。まあ、その方には迷惑をかけた。奴の行いには迷惑を被っている雲の上の方も多いのだ。今回はその方の力を借りたい」
「何をすれば良いのですか?」
私は聞いた。私は魔術師でも騎士でもない。普通にジャンヌに立ち向かっても勝てる見込みはなかった。
「大したことではない。ジャンヌのいない時に、息子を誘拐するのを手伝ってほしいのだ」
「息子を誘拐ですか?」
私はそれはあまり気が進まなかった。
「そうだ。多くのものがジャンヌのために死んだのだ。私はその仇を討ってやりたいのだ。そのためには我々の待ち受けている所にジャンヌを誘い出したい。そのための囮にしたいのだ」
男は言ってきた。
「その方の恋人も殺されたのだろう。ジャンヌに。今回は絶好の機会だと思うのだ。そう、我々は奴を夜会に誘い出すのに成功したのだ。ジャンヌは子供をおいて出るはずだ。侍女がいるがその侍女は我々の手の者が引きつける。その隙に赤子を拐って外にいる我々の手の者に渡してほしいのだ」
男は私に依頼してきた。
まあ、ジャンヌさえいなければ、近くの騎士を何とかしてくれれば問題ない。あの、アリスと言う女は大したことは無いだろう。
赤子に恨みはなかったが、母がジャンヌだった事を恨んでほしいと私は思った。
私は頷いたのだ。
「今回の事がうまく行けばなんなら次の勤め先も、紹介して良いぞ」
男は言ってくれた。
「まあ、考えさせてください」
私としては、あの女に仕返しさえ出来たら、問題はなかったのだ。
その日は思ったよりも早くやってきた。
そして、なんとジャンヌを王太子殿下が迎えに来たのだ。
私はその事に驚愕したのだ。誘い出したのが王太子殿下ということは王太子殿下もジャンヌを亡き者にしたいとお考えだということだと思ったのだ。
ジャンヌが、子供と離れるのが嫌だと、散々ダダをこねたので、私達はどうなることかと思ったが、王太子殿下はなんとか、ジャンヌを連れ出してくれたのだ。
馬車が侯爵邸を出るのを確かに見送ると私は赤子のいる部屋に向かったのだ。
驚いた事に部屋は誰もいなかった。
私はそおっとベッドに近づいたのだ。
そしてベッドを見るとそこにはとても可愛い赤子がいたのだ。目をクリクリさせて私をじっと見てくるのだ。
私はビックリした。
ジャンヌの赤子なんて間近で見るのは初めてだった。
こんなに可愛いなんて、思ってもいなかった。
「うーうー」
その子が手を伸ばしてきたのだ。
私は思わずその子に手を伸ばそうとしたのだ。
「何をしているの?」
私は後ろから氷のようなジャンヌの声を聞いたのだった。
私は固まってしまった。そして、私の人生が終わったのを悟ったのだ。
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