第21話 側妃の悪だくみが何かを考えました

王子等が帰った後に私はよく考えた。


やはり絶対に側妃が私に謝るなんておかしい。


「アリスはどう思う?」

私が聞くと

「どう思うって、エドワード様がお嬢様のことを好きかどうかですか?」


私はアリスの言葉に危うく飲みかけの紅茶を吹き出すところだった。

下手したら、手を伸ばしてカップを取ろうと暗躍するシャルルにかかるところだった。


アリスはむせた私の背を叩いてくれた。


「何してるんですか?」

「あんたが変なこと言うからでしょ」

アリスに私が文句を言った。


「うー」

カップを取れなくて機嫌の悪くなったシャルルに私はおっぱいを含ませた。

シャルルは喜んで飲みだした。この子はおっぱいさえ飲ませておけば静かなのだ。


「そうですか? 私はありかなとも思ったんですけど」

「はああああ! ないわ。絶対にない」

私は断言したのだ。


エドは私にとって悪友というかガキ大将が引きつれている子分の一人で、その子分と恋愛関係になるなんてあり得なかった。


「それよりも側妃が何を考えているかよ」

「ああ、あの胸だけデカい側妃の事ですか」

嫌そうにアリスも言うんだけど


「何も私の胸を見て、胸だけデカいっていう事ないんじゃない! これでも胸は大きくなったのよ」

そう、天使な息子のシャルルにお乳をあげる様になってから胸が大きくなったのだ。


「まあまあ、乳でか女の取り柄といったら胸がでかいだけですからね。陛下は大きな胸の女が好きなんじゃないですか? 王妃様も大きいですし」

アリスが言うんだけど


「陛下の好みなんてどうでも良いわ。元々好かれていないし」

私は言い切ったのだ。


「まあ、お嬢様は初代皇帝の銅像を倒したり、二代目の王妃様の顔にちょび髭を書いたりと碌な事していないですからね。それに三代目の宝剣も折られましたし……」

アリスが過去の私の悪戯を列挙しだした。


「私の黒歴史を列挙しないでいいわよ」

私はアリスに釘を刺したのだ。


「そうですか。まだ10分の一も話していないですけど」

「良いからその話よりも側妃が何を考えているかよ」

私が言うと


「目的はシャルル様ですかね」

「なんですって! シャルルを狙っているの?」

思わず私が目を怒らせて怒鳴った。


「オギャーーーーオギャーーーー」

私の声に驚いていきなりシャルルが泣き出しのだ。


「おお、よちよち、怖かったわよね。でも大丈夫よ。お母様がシャルルちゃんの事は必ず護りますからね」

私はギュッとシャルルを抱き締めたのだ。


そうやって少ししていたらシャルルは寝てしまった。


このかわいいシャルルを狙うなんて許せない。


私は怒りで頭が破裂しそうだった。


「でも、私が夜会に行くのとシャルルを狙うのとどう関係があるの?」

私は頭の中を整理しようとアリスに聞いていた。


「普通、夜会に赤子は連れて行きませんから、残ったシャルル様を誘拐するつもりではないですか」

「えっ、そうなの? 私は当然連れて行く気だったけれど」

私が言うと


「子連れで夜会に出られるつもりだったのですか?」

「当たり前でしょ」

「殿下に子供を抱いてエスコートされるんですか?」

「仕方がないでしょ。エドが無理やり参加しろって言うんだから」

アリスが何故か頭を抱えているんだけど。


「この前も王宮に連れて行ったし、エドにも陛下にも会っているんだから問題ないでしょ」

私は当然そうするつもりでいた。


「しかし、お嬢様。いまだかつて王国では夜会に赤児連れで参加された方はいらっしゃらないのでは」

アリスが私を見つめてくるんだけど。


「良いんじゃない。私が最初の一人でも。私がやれば皆真似するわよ」

私が喜んで言うんだけど。


「夜会が赤子の泣き声で悲惨な状況になると思うんですけど」

アリスが呆れて私を見た。


「その方が良いんじゃない。陛下とか宰相とかの下らない挨拶が聞こえなくて」

「さすがお嬢様。不敬なことも平然と言えるそんなところが陛下に嫌われているのでは」

アリスが言ってくれるが


「良いのよ、別に。王妃様には好かれているし」

私が言うと


「本当に変ですよね。昔は王子殿下を危険な所に連れ出すといつも文句を仰っていらっしゃったのに」

「ドラゴン退治して龍の宝石をプレゼントしてから態度が変わったんじゃないかしら」

そう、竜の涙から作られる龍の宝石と言うのがあって、龍をやっつけたら大量に龍がくれたのだ。

涙目に渡されて頭を下げてきたので、許してやったんだけど。


でも、私はこんなのいらないから王妃様に全てプレゼントしたのだ。

それから目の色を変えて私を大切にしてくれるようになったと思う。


「それに最近はお嬢様を殿下のお相手にしたいんじゃないでしょうか?」

私はまた紅茶を吹き出しそうになった。


ピクッとシャルルが震えたんだけど。


「ちょっと、アリス。変なこと言わないでよね」

私が文句を言うと


「変なことではないですよ」

「あり得ないでしょ。私は人妻だった未亡人よ。そんなのが王族の妻になるなんて」

「確か三代目のお母様は再婚だったと思いますけど」

「それは特例じゃない」

変に博識なアリスに私が反論するが


「子供が産めるのも実証されましたし、侯爵様と結婚されると決まった時もとても落胆していらっしゃいましたから。それにこの前の歓待ぶりを見れば確実ですよ」

「そんな訳無いでしょう。絶対にありえないわ」

私は思わず大きな声を出してしまった。


「オギャーーーーオギャーーーー」

その声に驚いてまたシャルルが泣き出したのだ。


結局、対策も何も立てられなかったんだけど。

シャルルを狙う奴らはただではおかない。

私は決意を新たにしたのだった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る