第16話 陛下に側妃様の件で叱責されましたが、王妃様に助けて頂きました。
「エド、陛下からのお呼び出しよ。エドが今度は何をしたのか知らないけれど、さっさと行って謝っておいたほうが良いわよ」
私は親切にもエドに忠告してあげたのだ。
「何を言う! 呼ばれているのはジャンヌだろう! 今度は何をやったのだ?」
エドが私の方を見てくるんだけど……
「そんな訳無いでしょ。最近は静かに領地に籠もっていたわよ」
「どうだか」
私の言葉にエドが疑い深そうに聞いてきた。
「そもそも、陛下の担当はあなたじゃない。私は王妃様担当なんだから」
そう、昔から怒られる時はエドは陛下で私が王妃様と相場は決まっていたのだ。
そして、今回は陛下からの呼び出しということでエドの担当のはずだ。
「何を言っているんだ。怒られるのはいつもお前が俺達を無理やりドラゴン退治とか盗賊退治に付き合わさせたからだろうが! お前さえ、俺達を変なことに誘わなければ俺らが怒られることはなかったんだぞ」
エドが怒ってくるけれど、
「何言っているのよ。そんなの一緒について来たら同罪に決まっているじゃない!」
こいつらは何を言い出すのだ。そんなのは常識だ。
「それに後から文句を言うなんて本当に女々しいのね」
私が軽蔑して言ってやると
「な、何を言うんだ」
「殿下、落ち着いて」
後ろから必死に側近らに止められているんだけど。
本来はもっとからかって遊びたかったんだけど、陛下からお呼び出しがかかったのなら仕方がない。
「後はよろしくね。エド」
私はそう言うと、シャルルと一緒に出ていこうとした。
「お待ちくださいませ。今回、陛下はジャンヌ様をお呼びです」
「えっ」
侍従の言葉に私は絶句した。
「ほら見てみろ。呼ばれているのはジャンヌじゃないか。がんばって行ってこいよ」
喜んでエドが手を振ってくれるんだけど……
思いっきり向こう脛でも蹴飛ばしてやろうかしらと思った時だ。
「エドワード様もジャンヌ様の後見人ということで呼ばれています」
「なんで俺がこいつの後見人なんだ」
「なんでエドが私の後見人なのよ」
私達は珍しく同時に叫んでいた。
「今回シャルル様の後見人をジャンヌ様にされるという時に陛下がつけられた条件がそれです。勅書にも書かれていたはずですが」
侍従がそうはっきりと言ってくれた。
そうなんだ。細かいところまで見ていなかった。
「そう言えばそう言うことがあったな」
エドが誤魔化すが、
「私は聞いていないわよ」
「聞くも何も、時間がなかったんだろうが」
私の言葉にエドが言ってくれるんだけど。
「まあ良いわ。私が何か問題起こせば、責任は全部エドに取ってもらうから」
私が自分に都合の良い様に解釈した。
「ちょっと待て、自分の責任くらい自分で取れ」
「ええええ、そんな面倒くさい。怒られるくらいエドが怒られてよ」
「もうお前のせいで散々怒られているわ」
エドが叫んできたんだけど。
「お二方とも宜しいですか」
侍従さんが似合わぬ大声を出して私達を黙らせてくれた。
「もう大分陛下をおまたせしております」
「えっ、陛下は待っておられるの?」
「左様でございます。お急ぎ下さい」
私達は侍従に言われるがままに、ついて行ったのだ。
そして、私達が連れて行かれた先は側妃の部屋だった……
「陛下。私はあのような屈辱を受けたのは初めてです」
中では側妃がわめきさらしているのだ。
その横には財務大臣もいて一緒に頷いているのだ。
私はうんざりした。
私達が入ってきたのを見て、さすがにうんざりしていたのか陛下が喜んだ顔をした。
「ジャンヌ。お前は今度は側妃を侮辱したというのは本当のことなのか」
挨拶も何もなしにいきなり陛下が怒鳴ってきたんだけど。
私は少し機嫌を悪くした。
「私は侮辱などしておりませんわ」
私は否定した。
「何言っているのよ。侯爵のほうが側妃より偉いって言ったじゃない」
「事実ですわ。それは」
側妃の言葉に私は大きく頷いたのだ。
「ほら、陛下、聞かれましたか?」
「左様でございます。不敬でしょう」
側妃と財務卿が一緒に私に対して言っているんだけど。
「いや、ジャンヌや。その言い方はだな」
陛下が文句を言いだしたので、
「そもそも陛下。王室規範には側妃などというものはございません」
私は正論を言ったのだ。
「いや、それはそうだが、それでは、側妃のことを妾と呼んだそうではないか。それはどうなのだ?」
「そうです。この女は私のことを妾と呼んでくれたのです」
「本当に不敬ですぞ」
「それは事実でございます。だって、資料には側妃なんて名前はございませんし、あるのは妾と言う言葉だけでございました」
「ほら見て下さい。陛下。この女を罰して下さい」
この側妃私の言葉を聞いていたのか?
財務今日の娘だそうだけど、娘がこの頭では財務卿も知れているのか?
私はこの国の未来が不安になった。
「私はけなしたわけではなくて、事実を申立までですわ。それに王妃様からもそう呼べと言われております」
「なんじゃと、王妃がそう申したというのか?」
「はい」
私は頷いたのだ。
「何をしているのです!」
そこに大きな声がして王妃様がいらっしゃった。
私達は直ちに頭を下げた。
「これはジャンヌではないか。息災にしておったか」
私を見つけて嬉しそうに王妃様が話された。
私は何故か元々王妃様とうまが合うのだ。
「はい王妃様」
「その腕の中がその方の息子のシャルルか」
「はい、左様でございます」
私達は陛下を無視して話しだしたのだ。
「ほううう、これは可愛いではないか」
「そうでしょう。本当に可愛くて」
私達が話していると
「おほんおほん」
陛下が咳払いをされた。
「これは陛下。このようなところでどうされたのです?」
始めて知ったかのように王妃様が陛下を見られた。
「ジャンヌが言うにはその方が側妃に対して妾と呼べと言ったという話しであるが」
「当たり前でしょう。そもそも側妃などという名前はないのです。正式名称は妾でございます。正式名称を呼んで何が悪いのですか」
王妃様が正論を述べられた。
「いや、そのだな」
「側妃など、あなたのお祖父様から作られた俗称でしょう。そう呼ばれたほうが汚らわしいと私は存じますが」
「いや、まあ、あのだな」
王妃様に強くでられるといつも陛下は弱いのだ。
「そもそも、既に跡継ぎはエドワードがいるのですから、これ以上の王子は必要ないと申したのに、あなたとそこの財務大臣が勝手にしたことなのです。何故私までが付き合わないといけないのですか」
急に王妃様の機嫌が悪くなった。
こうなると王妃様の独断場だ。
「ということで、ジャンヌは連れてまいります。宜しいですね」
「……」
王妃様の前に陛下は何も言えなくなってしまったのだ。
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