第17話 側妃視点 生意気な女の子供を攫う計画を立てました

私はアデラ、この国の財務卿、ナッツフォード伯爵の娘で今はこの国の第二王子ダグラスの実の母でこの国の側妃様なのだ。


そう、私は側妃様よ。誰がなんと言おうと側妃、妾なんてものでは決してない!


なのに、あの娘、何なのよ。


いや、娘じゃなくて未亡人だ。お父様に聞いたら、夫に先立たれた可哀そうな女だそうだ。


何でも、その旦那は爵位を狙った伯母たちによって殺されたらしい。まあ、あの女はあの態度だ。陛下に対しても敬うという感じじゃなかったから、不敬女だ。あの傲慢な態度は周りからも恨みを買いまくっていたに違いない。だから夫を殺されたのも当然の天罰だ。そうか、あの女、自分の自由にするために伯母たちを指嗾して夫を殺させたのかもしれない。そして、その後を乗っ取ったのだ。その可能性は十分にある。お父様に言って調べてもらうのもいいかもしれない。


しかし、今考えても本当にむかつく。


私の事を妾なんていうなんて!


そう、基本的に私は側妃様側妃様と羨まれる存在なのだ。


それをあの女、妾だと、それも私に頭を下げないなんて許せないわ。


絶対に許さないんだから!


私は手の中の鉄の棒を握りつぶせ……なかった。


危ない危ない。思わず手が傷つくところだったわ。


ムカついたからあの後、陛下を呼び出してあの女を虐めてもらおうと思ったのに、あの女、陛下の前でもびくともしないのだ。


なんて図太いんだ。


私でも陛下の前では少しは大人しくなるのに!


最後は鬼ババアの王妃が出てきて、あの女を引っさらっていきやがった。

本当にむかついた。あの王妃も私の事を妾とか言って蔑んでくれて。


絶対に仕返ししてやる。

あの二人、私を妾と呼んだことを死ぬほど後悔させてやるのだ。


その為には私の息子のダグラスを何としても国王にするのだ。


あの王妃の息子のエドワードとかいうさえない男を引きずり降ろして。



「しかし、惜しいことをしましたな。オルレアン侯爵家で内紛があった時に、第一皇子殿下がいらっしゃったとか。何かの間違いがあれば、第二皇子殿下が王太子になられましたのに」

コールマン近衛騎士団長がきわどい話をしてくれた。


「そうなのか。あの場にエドワード様がいらっしゃったのか」

お父様が聞いてくれた。


「近衛もつけずにあの女に呼ばれて侯爵家に滞在していたそうですぞ。そうだよなダニー」

コールマンが隣の文官に聞いていた。確か、ボフマンとかいう子爵家の息子だ。この男はこの国の暗黒街にもつてがあって何かと便利なのだ。


「はい、当主が亡くなって、せっかくの機会なので、ダグラス様のお味方に出来ないかといろいろ画策していたのですが、あの女にやられました」

「お前が、オルレアン侯爵の爵位を叔父にしてくれと頼んできた件か」

その件ならば私も枕もとで陛下に聞いてみたのだ。こういう場合、誰が継ぐのかと。陛下も普通は乳児が継げるわけは無いとおっしゃっていた件だ。そうか、あの女が抱いていた子供がそうだったのか。オルレアンという名前をどこかで聞いた事があると思ったらその家だったのか。


そうか、あの件がうまくいかなかったからあの乳児が侯爵家を継いで、私があの女に威張られたわけか。


私はあの女をますます許せなくなった。


「まさか、第一王子殿下があそこまで、あの女に肩入れするとは思ってもおりませんでしたな。必死に宰相に頼んでいましたから。嫌ならお前が断りに行けと言われてあの宰相が何故か顔を青ざめさせていましたから。まあ、側妃様に噛みつくくらいですから、余程の狂犬なのですかな」

コールマンが笑って言ってくれるんだけど。


でも笑い事ではないわ。


「お父さま。あの女をなんとかして!」

私はお父様に頼んだのだ。


「しかし、お前、相手は侯爵家だぞ。さすがの儂も分が悪い」

お父さまは弱気だ。


「何を言われるやら、財務卿らしくもない。偉い弱気ですな」

その横から近衛騎士団長のコールマン伯爵が私の言葉に援護してくれた。


「しかし、コールマン殿。相手の実家は将軍のところだぞ。あそこを敵に回すと何かと厄介だ」

お父さまはなおも弱気だ。


「なあに、揉めれば近衛の私が全面に出ますぞ」

「そう言われてもな」

お父さまは煮えきらない。


「しかし、側妃様に妾なんて言うなど本当に無礼ではありませんか。将来国王になられるかもしれない第2王子殿下の母上に対して」

コールマンは良いことを言ってくれる。


「そうですわ。コールマン様。あの時は本当に屈辱でした。何かいい手はないものでしょうか」

私が聞くと


「あの女の弱点は子供でしょう。盗賊共に子供を誘拐させて見るのが良いのではないですかな」

「子どもの誘拐ですか」

それは良いかも知れない。あの女はとても慌てるだろう。


「しかし、うまくいくのか」

お父様は心配そうに聞いて来た。


「私のつてにういうのが得意なものがおります。やらしてみましょうか?」

ダニーが申し出てくれた。


「そうだな。ダニーの知り合いの者なら間違いもなさそうだ。例え失敗しても足は付かないでしょう」

「足がつかないのなら良いが、本当なのか?」

安心するコールマンに、更に疑い深そうにお父さまが聞いた。


「ナッツフォード様。この前の伯爵の件もうまくいきましたでしょう。ここはお任せください」

ダニーは自信を持って言ってくれた。


そう、私に噛みついて来た生意気な伯爵令嬢がいたのをダニーに頼んで破落戸に襲わせたのだ。令嬢は今は修道院にいるという。私に逆らうからだ。


「まあ、ダニーが言うのならば間違いはないでしょう」

「そうだな。よろしく頼む」

「お願いしますわ」

私は笑った。


そう、これであの女に目にもの見せてやれる。

私に逆らった事を後悔するのだ

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