第11話 伯母視線3 甥の嫁をなぶり殺しにすることにしました
ガンガラカッチャーーーーン
大きな音がして、陶器製の巨大花瓶が地面に叩きつけられて木っ端微塵に砕け散った。
「な、何なのよ!あいつは!」
私は完全に切れていた。
当たるや幸いと次々に物を地面に投げつけたのだ。
ガシャーーーン
パリン
地面はガラスや陶器の破片が散らばって、水浸しになっていた。
それでも全然怒りは収まらなかった。
「あの、クソジャンヌ、今まで大人しくしていたから許してやっていたのに、もう許さないわ」
私はいきり立っていた。
あの後、あの女はなんとこの私に、この母屋を引き渡せと言って来たのだ。
私が今まで住んでいたこの侯爵家の母屋を。
「今までいろいろと面倒を見て頂いていましたけれど、今後は私が見させていただきますわ。伯母様」
といいやがったのだ。
私はその時のあの女の勝ち誇った顔を思い出して、むかむかした。
私は目の前にあった大きな鉢植えを窓ガラスに向かって投げつけようとして、ブランドンに止められたのだ。
「バーバラいい加減にしないか」
「何を言っているの、あなた! これが許せると思う? せっかくあなたが侯爵になれるところだったのよ。それをあんな赤ちゃんに横取りされて。今までの努力が全部水の泡じゃない!」
「それはそうだが、お前のつてはどうなったのだ? 絶対に大丈夫だとお前が言ったから安心していたのだぞ」
「本当よね。あのダニーの野郎、絶対に大丈夫だって言ういうから任せたのに」
「何だ、お前! あのダニーに頼んだのか」
嫌そうに夫は言った。もともと私とダニーが昔付き合っていたのを知っているのだ。
「だってあいつは大臣の秘書官の一人なのよ。絶対にうまくいくはずだと思ったのよ。あいつもそう言っていたし」
「じゃあ、どうしてあの赤ん坊になったんだ? 普通は赤ん坊が爵位を継ぐなんてありえないだろう!」
ブランドンが文句を言ってきた。
「でも、あなたも、実家の公爵家に働きかけるって言っていたじゃない」
ブランドンの言葉に私も言い返した。
「親父も赤ん坊が侯爵家を継ぐことは無いと言っていたんだ」
「そうよね。普通はあり得ないのよ」
そう。誰に聞いてもこういう場合は伯父が継ぐことが多いと言われたのだ。たとえ継いでも親戚の男が後見人になることが大半なのだ。女が後見人になるなんて聞いた事が無かった。それも実の姉の私が後見人になるならいざ知らず、伯爵家出身の女が侯爵の後見人になるなど、あり得なかったのだ。
だから私も安心していたのだ。最悪、赤子が後継者になってもブランドンが後見人になって、この侯爵家を自由にできると。
それに、元々、ジャンヌはエイミスの後妻になる予定だったのだ。
どんな手を使ったか知らないが無事に帰って来てくれて、余計な事ばかりしてくれる。それ以来エイミスはこの家に寄り付きもしないのだ。あの女何をしたのだ?
「あの、ジャンヌが体を使って籠絡したのかもしれないわ。あの男、カーティスとか言ったかしら。王太子殿下の側近よね。今日の感じでは元々二人は知人の可能性があるわ」
「そうだな。その可能性はあるな」
ブランドンも頷いてくれた。
エイミスといい、カーティスといい、ジャンヌが体を使って篭絡したに違いない。そして、それを武器に脅したのだ。
「あのカーティスのジャンヌを見る目の怯えていたことと言ったら無いわ。抱いた事をばらすと脅されたのか、そうか別の何かか。あの男が何か弱みを握られているのは確実よ」
私はカーティスのジャンヌを避けようと彷徨う視線を見て感じたのだ。
「それを使って、爵位を息子に継がせたというのか?」
ブランドンは忌々しそうに言った。
「そうよ、そうに違いないわ」
私は思わず爪を噛んでいた。
「どうするのだ?」
「再度ダニーに確認してみるわ」
私が言うと
「勅書も出てしまったら、もう覆しようが無いだろう」
「それはそうね」
ブランドンが言うとおりだ。
私達は目を合わせた。
「こうなったら、ジャンヌを亡き者にするしかないわね」
私は笑って言った。
「どうするのだ」
「強盗が押入ったことにしましょう」
「大丈夫なのか?」
私の提案に夫が心配そうに聞いて来た。
「大丈夫よ。あの離れには使用人といってもあの生意気な侍女一人しかいないのだから。騎士団の連中を使って襲わせればそれまでよ」
「それもそうだな」
ブランドンも笑って頷いた。
「ふん、あの女に絶対に頭を下げて命乞いさせてやるわ。そして、その後なぶり殺しにしてやるのよ」
私はその時のジャンヌの泣きわめくさまを想像してわくわくした。
絶対に私に逆らった事を後悔させてやるのだ!
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