第69話 最終決戦①

 カケルを先頭に、金属が震えるような不気味な音のする方へ疾走する8人。


 その音の発生源となっているであろう場所に着いたとき、誰もが絶望の表情を浮かべていた。いや、アスカかだけは興味津々といった様子だったが……


「まさか3体同時とは……」


 サンドラの呟き通り、目の前で空間に入った裂け目が3つ広がっているのが見えた。


 真ん中から出てきたのはどす黒い全身板金鎧フルプレートアーマーに身を包んだ、身長四メートルほどの巨大な戦士。両手に持っている戦斧バトルアックスは鎧と同じ色をしており、その大きさから両手斧グレートアックスと言ってもおかしくなさそうだ。

 そんな巨大な戦斧バトルアックスを片手で軽々と扱っている姿から、とてつもない攻撃力を持っているのであろうことが読み取れる。纏っている鎧をよく見ると、まるで鎧自体が生きているかのように脈打っているのが見えた。どす黒い色と相まって、表面を血液が這いずり回っているようだ。


 右の裂け目から出てきたのは……ドラゴンの首? 首の大きさから察するに、5mほどの裂け目からは胴体はでられないんじゃないだろうか?


「ぬ、狭いのぅ」


 その言葉を発したのが、目の前のドラゴンだと認識するのにしばらく時間がかかった。


 その間、黒光りするドラゴンは空間の裂け目をこじ開けるかのように、強引に身体をこちら側へ引っ張り出そうとしている。その度に、空がバリバリと音を立てて震え、空間の裂け目が徐々に広がっていった。


(無理矢理空間の裂け目を広げるってどんだけだよ……)


 みなが唖然とする中、ついにその姿を現した黒竜は体長およそ20mほど。全身光沢のある黒で背中には二対四枚の羽が生えている。瞳は赤色で頭には2本の角がやや後ろに向かって伸びていた。


 そして、最後に左の裂け目から出てきたのは……


「ピエロ?」


 そう、先に出てきた二体と比べ遙かに小さな、大きさにして人間の子どもくらいだろうか、その侵略者は右半身は赤、左半身は黄色、至る所にひらひらが付いたまるでピエロのような恰好をしていた。


 シュッ!


 そのピエロが全身を現した瞬間、その顔めがけて一本の矢が飛んでいく。誰もが予想だにしなかった、アオイによる完全な奇襲だ。だが、完璧かと思えるタイミングで放たれた矢は、ピエロの顔をすり抜けて後ろの裂け目へと飲み込まれていった。


「おいおい、いきなり何するんだよう! 危ないじゃないかよう!」


 ピエロがおどけた顔でアオイに向かって抗議する。だが、アオイはそれには応えず苦々しい表情を見せていた。


「ガハハ! 随分好戦的な種族じゃな! 前に滅ぼした世界の住人とは違ってな!」


 全身鎧の侵略者がどこから出しているのかわからないが、低い声を地響きのように響かせ笑っている。この低い声から察するに男性か。


「そうじゃの。この前の種族は脆弱じゃったからのぅ。ドリューケンを倒したところを見ると、今回はもっと楽しませてくれると思ってるんじゃがな」


 全身鎧の男の言葉に、ドラゴンが応える。それはもう、彼らの目的がはっきりとわかるくらい明確に。


(まずは鑑定だな)


名前 ブラウディ(悪魔族 男)


 レベル 100

 職業  侵略者

 HP 25300

 MP 19500

 攻撃力 24389

 魔力  20021

 耐久力 25341

 敏捷  22334

 運    4326

 スキルポイント 0


 スキル

 鑑定 Lv?

 探知 Lv?

 斧術 Lv?

 格闘術 Lv?

 闇操作 Lv?

 危機察知

 無詠唱

 闇属性耐性

 光属性耐性

 土属性耐性

 全状態異常耐性

 狂$※化

 遠?通信


名前 ドラゴディア(黒竜族 ?)


 レベル 100

 職業  侵略者

 HP 48300

 MP 29800

 攻撃力 21389

 魔力  23021

 耐久力 21341

 敏捷  18334

 運    4926

 スキルポイント 0


 スキル

 鑑定 Lv?

 探知 Lv?

 炎操作 Lv?

 闇操作 Lv?

 危機察知

 無詠唱

 闇属性耐性

 光属性耐性

 風属性耐性

 全状態異常耐性

 咆>

 %鱗強¥

 遠?通*


名前 アルマロス(堕天使族 男)


 レベル 100

 職業  侵略者

 HP 20200

 MP 41500

 攻撃力 14389

 魔力  28754

 耐久力 20121

 敏捷  26503

 運    5326

 スキルポイント 0


 スキル

 鑑定 Lv?

 探知 Lv?

 槍術 Lv?

 格闘術 Lv?

 光操作 Lv?

 治癒 Lv?

 危機察知

 無詠唱

 闇属性耐性

 光属性耐性

 風属性耐性

 雷属性耐性

 透※

 &醒

 遠?#信


(おいおい、何だこいつら。素のステータスがほぼ2万超えか……しかも、先に出てきたドリューケンだっけか? あいつが倒されたのを知っててこの余裕なら、何らかのステータス上昇スキルがあるってことだよな)


(お兄ちゃん、みんなは勝てそう?)


(いや、無理だな。アスカ以外は身体強化込みでも、誰も2万に届かないから。こいつらがステータス上昇のスキルを使うまでもなく、蹂躙されちまうんじゃないかな)


(そっか、そんなに強そうには見えないのにね)


 それはスキルの身体強化のみで、全てのステータスが5万を超えているアスカちゃんだから言えるのですよ……とは言えずに苦笑いする。


「アスカ、もし王都、聖都、帝都に空間転移テレポーテーションできるなら、クランホープのメンバーと僕の師匠、Sランク冒険者達をできるだけ集めてきてくれないだろうか」


 おそらく目の前の3体の侵略者を鑑定したのであろうカケルが、アスカにそんな指示を出した。足りない戦力は数で補おうという作戦だろうか?

 ……いや、悪あがきだな。今言ったメンバーを集めたって戦力にはなりそうにもない。ただ、どのみちカケル達が負ければ次の標的はこの世界の全住民だろうから、各個撃破されるより、僅かな可能性に賭ける意味でもできるだけ人数を集めるというのも悪くはないか。


 それともアスカを逃がすための方便かな?


「えー、アスカも戦いたいのにー」


 そんなカケルの思いを知るよしもないアスカは、ほっぺたを膨らませて抗議する。


「アスカ、頼むからカケルの言うことを聞いてくれ」


 ルークがこんなに真剣にアスカに頼み事をするなんて見たことがない。アスカも何か言おうとしたみたいだが、3体の侵略者を厳しい表情で見つめるルークに何も言えなくなってしまっていた。


「絶対に死なないでね」


 2人の覚悟を前に、アスカも指示に従うことにしたようだ。偉いぞアスカ。お前は空気の読める子になったんだ! だが、かわいいアスカが心配しすぎないように俺がフォローをしてやろう。


(アスカ。あの侵略者達は戦いを楽しみたいようだ。だから最初は素のステータスのままで戦うはず。それならば、一瞬で負けるということはないだろう。直ぐにみんなを集めて戻ってくれば大丈夫!)


 ちょっと落ち込んでいたアスカは、俺の説明で少しホッとしたのか少し笑顔を見せる。


 そして、王都、聖都、帝都の冒険者ギルドに集まっているであろう実力者達をこの場に集結させるために空間を渡った。

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