第68話 辺境の島へ
侵略者のドリューケンは、カケル達が考えていたよりも強かったらしい。アスカが持ってきた身体強化付きの武器がなければ、完全に負けていたそうだ。
今回は侵略者が一体だったからよかったが、次も一体で来るとは限らない。もし、二体以上で来られたら今の戦力では厳しいという結論に至ったようだ。
とは言え、ここにいる6人はこの世界での最高戦力といっても過言ではない。人数を増やすにせよ、下手な人選だと足手まといになりかねない。
現状、彼らの次に強いのは各種族の王達かリンの父親である現魔王あたりか。その次がSランク冒険者達とクランホープのメンバーといった感じになるだろう。
それはカケル達もわかっているようで、魔物の王達はともかく他のメンバーには救援要請を送ることになった。まあ、間に合うかどうかはわからないけど。
「それで、この後はどうするんや?」
ある程度の方向性が見えたところで、リンの一言から今度は自分達の具体的な行動についての話になっていく。
「次の侵略者がいつ来るかわかるといいんだけどね~」
「もう来てるかもしれない」
マコトのゆるい発言にアオイが鋭いツッコミを入れる。
だが、アオイのいうことはもっともだ。ドリューケンの言葉から、そもそも次元の裂け目を通ってくるという情報自体が怪しくなっている。ひょっとしたら、いつでも転移できるのかもしれない。
「確か、最初に連絡が来たのがSランク冒険者のグリモスさんとサンドラさんのところからだったんだよな? ひょっとしたら、またそこに現れるんじゃないか? ギルドに魔法通話用の
おお、ルークがナイスな意見を言ってるぞ! いやはや、ルークも成長したもんだ。
「ふむ、それはいい考えかもしれないね。みんな、どう思う?」
ルークの考えにカケルが同調し、他のみんなも頷いている。
6人は魔法通話用の
▽▽▽
無事、ギルドで
準備を終えた6人は王都を後にし、辺境の島へと向かうことになったのだが、出発した数分後には目の前に広がる森と背後にある海に唖然とすることになる。
「…………こ、これはどういうことかな?」
「はい! 時間があまりなさそうだったので
カケルがようやく絞り出したであろう震える声に、アスカが元気よく返事をしている。
そう、アスカはみんなが準備している時間を利用して、辺境の島近くまで
「もう、何でもありやな……」
魔王の娘ですら開いた口が塞がらない様子だ。
アスカはルークのレベル上げにお付き合いした頃から、自分の実力をあえて隠さないようになってきたと思う。おそらく、彼らとの付き合いの中で自分の実力がバレても大丈夫なくらい信頼関係を結べたと感じているのだろう。
俺としては前回のことがあるので少々心配しているのだが、今回は前回にいなかった家族がいる。それに以前の記憶がないので、すんなりと居場所を作ることができているのかもしれない。そう考えると、アスカを止めるの何か違う気がして、今は好きなようにやらせている。
「アスカは一体……」
「おぉ!? おぉぉぉぉぉぉ!! わしの、わしの孫が帰ってきたぁぁぁ!!」
アオイが何か言いかけた直後、俺にとっては懐かしい、他のみんなにとっては異様な叫び声が聞こえてきた。
島の端の方から走ってくる赤いローブを着た男性は、見た目はかなりの年寄りに見えるが、その接近速度は尋常じゃない。さらにそのおじいさんの後ろには、妙に色気が漂っている黄色のローブを纏った女性が歩いてくるのが見えた。
「ハァハァ、見た目はちょこっーーーと変わっているが、お前さんがわしの孫のアスカじゃな? おうおう、ソフィアには聞いておったが本当にかわいいのぅ!」
物凄い勢いで現れた老魔道士が、アスカの目の前で急停止し、素早く両手を握りしめ何やらおかしなことを口走り始めた。非常に残念ではあるが、この怪しい魔道士がグリモスだ。
「あんた、侵略者に追いかけられてるときより速かったんじゃないのかい?」
そして、グリモスの後ろから何かを呟きながら来た黄色いローブの女性がサンドラだ。
突然の2人の登場に一気に緊張が高まるアスカを除く5人。ステータス的にはとっくに追い越してしまってい入るが、この二人は数少ないSランク冒険者で魔王を討伐したメンバーだ。
転生者達にとってもルークにとっても尊敬すべき先輩であり、リンにとっては最強と言われた父親を倒したパーティーのメンバーなのだ。登場の仕方はどうであれ、緊張するなという方が無理なのかもしれない。
「えー、グリモスさんはアスカのおじいちゃんじゃないよ?」
「はぅ!?」
アスカの冷静な突っ込みに、変な声を上げるおじいちゃん。一見ダメージを受けているようにも見えるけど、案外アスカが名前を知っていたことに感動してるのかもしれないな。
まあ、登場の仕方はアレとしてもアオイの追求を止めてくれたことには感謝、感謝。
カケル達6人はグリモスとサンドラに自己紹介をし、実際に侵略者が現れたところに案内してもらうことになった。リンの自己紹介の時に、グリモスもサンドロらも一瞬驚いていたようだがそこは百戦錬磨のSランク冒険者。一切顔には出さず平然としていた。
それから6人は侵略者が現れた場所を記憶し、グリモス達が寝泊まりしている小屋へと戻る。カケルがグリモス達に侵略者を倒したことを伝えると、2人とも『信じられない』と驚いていた。
正直、あの侵略者を止めるのは無理だと思っていたようで、それこそこの世界の終わりを覚悟していたらしい。
さらにドリューケンが漏らした不審な言葉を伝えると、2人とも難しい顔をして黙ってしまった。しばらく考えた後に2人が出した結論は、6人が出したものと同じだった。
お互いの意見が一致したところで、侵略者が複数体出た場合の対策を考えたが、Sランク冒険者の2人を含めいい案は浮かばなかったようだ。せいぜい、二体以上出た場合にこのメンバーをどのように分けるのかを決めたくらいだ。
そして、話し合いも終盤に差し掛かった頃、異変が起こった。
ブゥゥゥゥン
小屋の外から、何かが振動するような音が聞こえてきたのだ。
「まずい!? ヤツらが来たみたいだよ!」
サンドラの叫び声に、全員が小屋を飛び出すのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます