第66話 vs 侵略者②
〜 side ルーク 〜
「ハッ!」
ドリューケンと名乗った侵略者のステータスは1万超え。魔法で攻められたらあっと言う間に倒されてしまう。だから俺は相手が油断しているうちに距離を詰め、接近戦へと持ち込んだ。最も、俺の敏捷はスキルの"身体強化"込みで7800程度。12000を超えているドリューケンには通用しないと思ったのだが……
俺は
「ケケ!? ちょ、まっ、うわっ!?」
ドリューケンは俺の一撃を躱そうと、空中に飛び出したが明らかに俺の剣の方が速い。とは言っても、俺の攻撃力は9000代。耐久力が13000を超えているドリューケンには大した傷など与えられないと思っていたのだが、俺の剣は、動き出すのが遅れたドリューケンの右の腕を一本切り落としていた。
「グガァ! お、お前はいったい……」
十メートルほど飛び上がって空中でホバリングしているドリューケンは、切れた右腕を押さえている。ちなみに、血の色は緑色だ。
「ル、ルーク。そ、その剣は?」
カケルが驚いたように俺の剣を見つめている。おそらく、鑑定しているのだろう。かく言う俺も、この剣のことは詳しく調べていなかったのだが。
「信じられない。付与が5つ。しかも、"身体強化"が付与されている」
同じように、俺の剣を鑑定したのであろうアオイが呟く声が聞こえた。
(スキルの身体強化はLv5でステータス3倍だけど、付与の身体強化はどのくらいステータスがあがるんだ?)
俺はふと疑問に思ったが、次のマコトの一言でその疑問は解消された。
「武器に身体強化とは羨ましい。確か、最高でステータス2倍だったよね」
であればアスカが用意してくれた武器だ。最高の2倍に決まっている。
「それより、今はチャンスやで! 魔法で追撃や!」
リンの一言でみんなが我に帰る。カケルは得意の氷魔法で、アオイは風魔法、リンは闇魔法、マコトも炎魔法で追撃を開始した。しかし、魔力が11000を超えている上、こちら側で魔力が高い二人、リンとアオイの得意属性に耐性を持つドリューケンは、それらの魔法を躱すことすらせずにその身に受けている。
現段階で唯一ダメージを与えられる俺は、空中に止まる相手には無力だった。
「グゥゥゥ。これは予想外だ。まさか俺様に傷をつけれる者がいたとは。俺様はこれからあのスキルを使う。…………ああ、大丈夫だ。そうなる前に終わらせる。…………あいつにあったら文句を言っといてくれ」
四人の魔法攻撃に晒されながらも、全くダメージを受ける気配がない侵略者は、左腕の一本をこめかみに当て何やらぶつぶつ独り言を言っているようだった。
いや、独り言というより、誰かと会話をしているような感じだったか。もしかしたら、何らかの手段で仲間と会話しているのかもしれない。あの文字化けしていた二つのスキルのうちの一つか?
誰かとの通信を終えたドリューケンは、唯一自分を傷つける可能性を持っている俺を睨みつける。と言っても複眼だからそんな気がしただけなんだけどね。
「ケケケ、まさかこの技を使うことになるとはな。だがこれでお前達に勝ち目はなくなった。いくぞ、"巨大化"!」
吠えるような大声と共に、ドリューケンの身体が文字通り巨大化していく。元々三メートル程あった巨体がさらに膨らみ、倍の六メートル程まで大きくなり止まった。千切れた腕はそのままだったが、その傷口は中から肉が盛り上がりすでに塞がっている。
スキル"巨大化"。そんなものはこの世界にはなかったはずだ。いや、俺も全てのスキルを知っているわけではないが、あの文字化けしていたスキルの一つに違いない。
「グガァ、ウゴゴゴゴォ! ハァハァ、コ、コロス! ゴロシテヤルゥゥゥ!」
明らかに理性を無くしたドリューケンの目は血走って……血走ってはいないか。複眼だから。
しかし、その口からはよだれが流れ、殺気が増している。それどこかステータスを"鑑定"すると、全てのステータスが1.5倍になっていた。
「なんやあれ? ちょっと、やばいんやない? ステータスが2万近くになってるで……」
リンが唖然とした顔でドリューケンを見つめている。それはそうだろう。この中で一番ステータスが高い俺が、アスカに貰った武器のおかげでステータスを2倍にしてようやく傷をつけることができた相手だ。魔王の娘であるリンも、転生者であるカケル達でも及ばない侵略者のステータスが1.5倍になってしまったのだ。最早、俺でも勝つのが難しくなってしまった。リン達が唖然とするのも無理ないだろう。
「……アオイ、逃げた方がいいかもしれない」
理性を無くしたドリューケンを見た俺は思わずアオイにそう呟いていた。なぜアオイにそんなことを言ってしまったのか自分でもよくわからないが、とにかくこのままでは全滅してしまうと思ったのだ。
「ここで倒せなければどこにいても同じ。私はルークと一緒に戦う」
リンやカケル、マコトの瞳には絶望の色が浮かんでいるがアオイの目はそれがない。俺の隣にそっと並び立った彼女は覚悟を決めた顔をしていた。だが剣を握るその手はかすかに震えている。怖いんだ。アオイもあの化け物が怖いんだ。それでも僕の横に立ってくれた。ありがとう。
そのアオイの行動にカケル達も覚悟を決めたのか、俺とアオイの横に並び武器を構える。
「アオイだけにいい格好はさせない。僕達も戦うぞ!」
カケルの言葉に俺を含めた全員が腰を落とし、ドリューケンを睨みつける。例えステータスの差があっても、俺達は俺達の連携で乗り越えてみせる。
「ウググググ、ガァ!!」
俺達が並び立つのと待っていたわけではないだろうが、全員が揃ったところでドリューケンが仕掛けてきた。
「ううぅ……」
俺達が意気込んで始まった戦いだが、勝負はあっけなくついてしまった。魔力15000超えから放たれた風操作Lv5魔法"
「グガァガァガァ!」
倒れる五人を前に勝利の雄叫びを上げる侵略者。その侵略者が本能のままに俺達にトドメを刺そうと一歩を踏み出したその時。
「
場違いなほどにかわいい声が響き渡り、俺達全員の身体が光り輝いた。瀕死だった全員の傷がみるみる治っていく。今この場で一番聞きたくないような、それでいて一番聞きたかった声が聞こえたのだ。
「これが侵略者さんですか?
治癒で治った俺達が見たのは、たくさんの武器をかかえるアスカの姿だった。
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