第34話 一対の翼
~side ルーク~
今日は学院までの足取りが軽い。なぜかって? それは今日からしばらく
「おはよう!」
いつもより、早い時間に家を出たはずだが教室に入るとすでにみんな揃っていた。どうやら、
「おはよう、ルーク。今日からよろしくね」
そう声をかけてくれたのは、転生者のアオイだ。入学当初は、こんな風に声をかけてもらえるようになるとは思えなかったけど、これもアスカのおかげだな。
「こちらこそよろしく!」
笑顔で返答する僕の横で、歯ぎしりが聞こえる。この間の実戦訓練で散々な目にあったマルコだ。と言っても、僕にはどうすることもできないが。
僕らが少し会話をしているとイリーナ先生が現れて、
そして、先生の説明が終わりいよいよ出発の時間が来た。
▽▽▽
エンダンテ王国の王都から、馬車で西に2日ほど行ったところにある
この
そのおかげでこの
「冒険者カードを拝見します」
入り口にいる衛兵にイリーナ先生が冒険者カードを見せる。金色のカードはAランク冒険者の証だ。
「武術学院の実地訓練ですね。許可できるのは49層までです。それより深くは潜らないようにお願いします」
「ええ、わかっていますわ」
国が管理している
「緊張するな!」
俺と同じく初
「ここの
イリーナ先生が先導しながらこの
「おお!? それはもしかして
リックのナックルを見たカケルが興奮して大声を上げる。
「おっと! さすがにカケルは知っていたか? こいつは親父に借りてきたんだが、正真正銘の
普段はカケルに負けっぱなしだから、カケルが驚いているのがよっぽど嬉しかったのだろう、リックの頬が緩んでいる。ところで幻の
「その幻の
意外にも、リックに尋ねた俺の質問に答えてくれたのは、アオイだった。
「カケル、あなたの剣を貸して」
「ほい」
アオイがカケルから真っ黒に見える片手剣を受け取った。そして――――――
「ルーク、ここを見て。ここに一対の翼のマークがあるでしょ。このマークがついているのが、
俺はアオイが指を差したところを見る。すると、確かに一対の羽に見えるマークが刻まれてるの見えた。
「後期の作品になると、付与が5つついているのもある。リックのナックルもそのひとつ」
アオイが続けて説明してくれたように、リックのナックルを見せてもらうとカケルの剣と同じマークがついていた。
「つまり、この2つの武器は誰かが作った武器だと考えられているんだ。他に知られているのは、Aランク冒険者のレスターが持っている
この3人は同じパーティーを組む冒険者で、初期のウイングシリーズを持っている。それから、俺のこの剣
「こんな
マルコも
「
後ろを歩いていたリンが、興味津々といった様子で俺達の会話に参加してきた。
「そうなのか!」
マルコは自分の質問に、かわいい女の子が答えてくれただけでご機嫌になっている。
「「漆黒の天使」」
カケルとアオイの声がハモる。
「そうそう、16年くらい前に突然現れて、1年足らずでSランクまで上り詰めた冒険者。その素性は一切謎で、15年前に魔王を倒した後、煙のように消えちまったのさ」
リンが漆黒の天使について知っていることを教えてくれたのだが、なぜかその顔は悔しそうだ。
「その漆黒の天使さんに、僕のお師匠がこの剣と防具を譲ってもらったのさ。それを僕がさらに譲り受けたってわけだ」
漆黒の天使については俺も聞いたことがある。確か、俺の両親のが所属しているクラン"ホープ"のメンバーだったような。
「さあ、そろそろ魔物が出るから、おしゃべりはお終いよ」
イリーナ先生の一言で、俺達は会話を止め魔物の襲撃に備えるのだった。
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