第11話 武術学院 入学試験当日
アスカがルークに腕輪をプレゼントしてから1年後、10歳になったルークは子ども補正が解除された。そこから本格的にレベル上げを始めたルークとマルコは、入学試験を受けるまでの2年弱で、レベルが35まで上がっていた。
名前 ルーク・ライトベール(人族 男)
レベル 35
職業 なし
HP 195
MP 74
攻撃力 166
魔力 72
耐久力 144
敏捷 154
運 130
スキルポイント 84
スキル
剣術 Lv3
身体強化 Lv2
一方、アスカは一切レベル上げには参加していなかった。どうやらアスカも武術学院に入学したいらしく、そこでみんなとレベル上げを楽しみたいそうなのだ。
ということで、キリバス達との模擬訓練には参加していたが、実戦訓練の時は俺と一緒に力をコントロールする練習に励んでいた。おかげで、今やステータスの数字を1刻みでコントロールできるようになっている。
そして、武術学院入学試験の申し込み開始が明日にと迫った日の夜、キリバス家では入学試験の確認が行われていた。
「明日申し込んで、試験は3週間後だ。ここからは筆記試験を中心に勉強して、実技は俺との模擬戦を繰り返そう。必ずSクラスに入るんだぞ!」
「わかってるよ、パパ! 僕はマルコにだって負けないさ!」
キリバスが試験に向けての最終確認を行なっている。ルークもかなり自信ありげだ。
「そんなにSクラスにこだわらなくても……無理だけはしないようにね」
一方、ソフィアはあまりクラスにはこだわっていないようだ。やはり、母親となると目線が違ってくるもんだね。
そして、その様子を見ていたアスカが予想通りの爆弾を落とす。
「アスカも試験を受ける!」
「「「…………」」」
見事に固まる3人。さすがに、今回はないと思って油断していたのだろうが、そうは問屋が卸さない。我が妹を甘く見過ぎである。
「あ、アスカちゃんにはまだ早いかなー」
キリバスの猫なで声にアスカはーーー
「やだ。ルークと一緒に、入学試験を受ける」
いつもの頑固モードが発動した。
「アスカ。あなたはまだ9歳でしよ。子ども補正だってかかってるし、合格は無理よ」
ソフィアも優しくなだめるがーーー
「試験は、誕生日の日だもん」
「「「…………」」」
言われてみれば、今はまだ9歳だが試験は3週間後。その間に、ルークは誕生日を迎えアスカに至っては試験当日が誕生日なのだ。
「でもアスカはレベル上げしてないだろう! 10歳になったって、ステータスは上がらないぞ!」
何も知らないルークはそんなことを言っているが……
いやいや、ルークちゃん。アスカの子ども補正が解除されたら、ステータスは8000以上上がるぞ。
とは言え、ルークが必死になって止めているのは、彼に6歳のアスカがゴブリンナイトを一撃で倒した記憶が、鮮明に残っているからだろう。マルコには勝つ自信があっても、アスカには勝てないと思っているような節が見受けられるし。
口では『ステータスが上がらないから』と言ってはいるが、本音では最年少入学記録も、首席も取られるのではないかと心配なのだ。
「入学してから、お友達とレベル上げするもん!」
しかし、アスカは一歩も引かない。そして、アスカが10歳になったら、この世界最強の10歳児が誕生する。試験なんて合格以外あり得ないことを、俺以外は誰も知らないだろうが。
全てを知っている俺にとっては、意味のない約束のように思えるが、結局、『落ちたら12歳まで試験を受けることはできない』という条件で、試験を受けさせてもらえることになった。
「パパ、ママありがとう! アスカ、頑張るね!」
アスカの晴れ渡るような笑顔とは裏腹に、ルークの顔は暗く沈んでいくのだった。
▽▽▽
そして次の日、キリバスが2通の申し込み用紙を武術学院に届け、その後の3週間、ルークとマルコは筆記試験対策7割、実技試験対策3割というペースで対策を進めていった。
一方アスカは、俺と一緒に力をコントロールする訓練を重ねてい。アスカには誕生日が来たときに、全てのステータスが8000を超えることを伝え、これをマスターしなければ、身近な人ですら傷つけてしまうことを理解させた。
そして、入学試験前日。
(アスカ、明日は武術学院の入学試験と同時に、お前の誕生日でもある。子ども補正が解除されたお前は、魔王をデコピンで倒せる力を持つことになるだろう。そして、くしゃみひとつでとんでもない災害が起こってしまう。
今まで力をコントロールする訓練をしたきたのはそのためだ。実技試験では模擬戦があるらしい。相手をしっかり鑑定して、同じ力で戦うんだ。わかったな?)
(うん! わかったよ、お兄ちゃん! 明日は勝ち負けじゃなくて、相手と同じ力で戦うことを優先するね!)
どうやらアスカは、俺の心配をわかってくれたようだ。力のコントロールも完璧にできるようになったし、Sクラスかどうかは別として合格はできるだろう。
▽▽▽
待ちに待った入学試験当日、ルークとアスカは、マルコと一緒に3人で王都武術学院の前に来ていた。本当はキリバスやジェーンが来る予定だったのだが、緊急の討伐依頼が入り、急遽来れなくなってしまったのだ。
だが、逆にルークはホッとしているようだった。万が一アスカと模擬戦をすることになったら、キリバスには見られたくないというのがその理由だと思われる。
3人は、大勢の受験生とその保護者らしき人達の間を縫うように受付へと向かった。
どうやらキリバスは張り切って申し込みをしたようで、ルークの受験番号は1番で、アスカの受験番号は2番だった。一方、マルコの受験番号は112番でそれでも早い方だと、受付のお姉さんが教えてくれた。
今回の受験生は600人を少し超えたくらいで、ざっと周りを見渡しても、15〜20歳くらいの年代が多いように思える。
年齢や経験よりも才能が重視される魔法と違って、技術やステータスが重視される武術では、より経験を積んでいる期間が長い方が有利だと言われている。だから、世界でも最高峰の王都武術学院の試験を受ける者の平均年齢は、魔法学院よりも高いのだろう。
そのせいか、12歳の男の子2人と10歳の女の子という3人の集団はかなり目立っている。特に受付を済ませ、番号札を胸につけてからは、明らかに『あんな子どもが受験するの?』という視線を向けられることが多かった。
「なんか、みんな僕たちのことを見てませんか?」
マルコはあまり人の視線に慣れていないのか、周りをキョロキョロ見ながら、おどおどしている。
「キョロキョロすんなよ。俺たちは、首席で合格する予定なんだから!」
その点、ルークは小さい頃からSランク冒険者の子どもとして注目を浴びてきたから、このくらいの視線はなんともないようだ。
当然、同じ環境で育ってきたアスカも……
「わー、人がいっぱい! 試験たのしみー!!」
人目は全く気にしていない。おそらく、楽しくて仕方がないのだろう。なにせ、今日が誕生日で子ども補正が解除されたのだから。
それはもう早起きして、自分の力を確かめてました。さすがに、Lv5魔法や究極魔法は使わせなかったが、目にも留まらぬ速さで動いたり、空を飛んだり、転移魔法を使ったりと。
こういうことは、実際やってみないとわからないからね。ただ、力のコントロールをたくさん練習してきたおかげで、力加減はバッチリだった。これで、意図しない破壊行為は防げるだろう。
そして、受付から少し経ったところで、受験生全員が校庭に集まるように魔法でアナウンスが入るのだった。
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