第3話 ライトベール家の日常
ミーシャはこの日、キリバス家で夕ご飯を食べ、一晩泊まっていった。夜になって帰って来たキリバスも交え、久しぶりの昔話に花が咲いていたようだ。
ゴードンも一応いたのだが、相変わらずのみんなのスルーっぷりにちょっと同情しちまった。まあ、言ってることにはドン引きなのだが……
食事を終えたところで、俺にまさかのボーナスタイムが待っていた! なんと、ソフィアとミーシャが一緒にアスカをお風呂に入れたのだ!!
さりげなく一緒に入ろうとしたゴードンが、キリバスに叩きのめされている姿を尻目に、ソフィアに抱かれ、お風呂へと移動したアスカと俺。そこには、猫耳美人のミーシャが、一糸まとわぬ姿で……俺に鼻があったら、絶対鼻血を出していただろう。ごちそうさまでした。
次の日、ミーシャとゴードンはまた
ミーシャは今、決まったパーティーには属さず、助っ人として、色々なパーティーを手助けしているらしい。探知に鑑定、弓スキル持ちのミーシャは優秀な斥候として、超人気者なのだとか。もちろん、猫耳で美人なのも一役かっているのだろうけど。
ただ、斥候として入ってもらったのに、あまりの強さに、メインアタッカーの出番がないという事態もよくあるそうだ。
ギルドとしても、Sランクに限りなく近いミーシャが助っ人で入れば、クエストの成功率も上がるし、何より不意の事態が起こっても、パーティーが生き残る確率が格段に上がるので、願ったりかなったりという状況のようだ。
そんなミーシャ達が帰った後は、またいつもの日常に戻っていった。相変わらず、ルークはやんちゃだし、アスカはふてぶてしいし。抱かれても、ミルクを飲んでも、偉そうな顔で笑い声ひとつ上げない。かといって、泣くわけでもない。何とも不思議な赤ん坊だこと。
そんなライトベール家の生活を見ながら、半年が過ぎた。そして、この半年でわかったことがいくつかある。
まずはこの家は裕福だということだ。夫婦揃ってSランク冒険者だから、当たり前といえば当たり前だが、お金は腐るほどあるようだ。ただ、2人とも比較的質素な生活が好きなようで、きちんと常識を守って生活している。
それから、キリバスとソフィアは割と家にいることが多い。魔族がおとなしくなった今、Sランク冒険者が対処しなければならない出来事など、早々起こらないというのが理由らしい。働かなくても、お金は十分あるし。
アスカの兄であるルークは、やんちゃではあるが両親の言うことをよく聞く、いい子に育っているようだ。それにまだ2歳ながら、見よう見まねで覚えた剣術も、それっぽく見える。
また、妹のアスカのことが大好きなようで、よく可愛がってくれる。幼いながら、自分が守るべき存在として認識しているみたいだ。そこは嬉しくもあり、悔しくもある。ただし、一番兄は絶対に譲らないからな!
肝心のアスカはというと、ここに来てようやく人並みに感情を表すようになってきた。そして、やっぱり俺の感情を敏感に感じ取っているようだ。俺の気分がいい時は、アスカの機嫌もいいみたいだし。
俺もかつてアスカの赤ん坊時代を見てきたはずだが、何せその時は俺も小さかったからほとんど覚えていないのだ。こうして、赤ん坊のアスカを改めてみることができて、幸せだと思う。だって、赤ん坊のアスカはめちゃくちゃ可愛いのだから。
▽▽▽
そんなこんなで5年が過ぎ、ルークが7歳に、アスカが5歳になったのをきっかけに、俺の『アスカ幸せ計画』がスタートした。なぜこのタイミングかと言うと、ルークがキリバスと剣術の訓練を始めたからだ。
(鑑定!)
名前 ルーク・ライトベール 人族 男
レベル 1
職業 なし
HP 25
MP 14
攻撃力 15
魔力 12
耐久力 13
敏捷 16
運 11
スキルポイント 0
スキル
剣術Lv1
ルークの初期値はかなり高かった。おそらく、キリバスの初期値を超えているのではないだろうか。キリバスも、知り合いに鑑定してもらいこの数値を見たときは、思わず口笛を吹いていたくらいだから。
そして、キリバスはルークを、王都剣術学院に入学させるつもりのようだ。それに関しては、ソフィアも反対していないようで、5年後のルークが12歳になる年の入学を目指そうと2人で相談していた。
そして、キリバスはルークの特訓を始める。ステータスやスキルとは別に、剣術の技能を高めるために。そんな兄の姿を見たアスカも、兄の真似をして剣術を学びたいと言い出したのだ。
もちろん、まだ5歳の子どもだから、単にお兄ちゃんの真似したいだけなのだろうが、キリバスは嬉しそうに小さな木刀をアスカに渡していた。
アスカも、子ども補正はかかっているが、赤ん坊の頃よりステータスが上がっている。動きも活発になってきたので、危険な目に遭う可能性も増えているはずだ。
そこで一番兄の俺としては、アスカの身を守るために『アスカ幸せ計画』を発動したのだった。
まあ、単純に俺の存在がバレないように、ひたすら沈黙を貫いてきたのにも限界がきたというのが本音だっりするが……
そして、この5年間で俺も少しは考えた。前回は、あまりにアスカが強くなりすぎたため、自分の居場所がなくなってしまったと感じたのだ。今回も同じ結果にさせてはいけない!
……と思っていたのだが、あのステータスを見て諦めた。いや、正確には諦めたのではなく、『今回は12歳での転生ではなく、赤ん坊として生まれ直している』=『家族がいる』=『どんな状況になろうとも、居場所がある』と考えたわけだ。
そうと決まればやることは決まっている! 必要なスキルをアスカにつけるのだ!
手始めに全属性耐性と全状態異常耐性をつける。これで、家が火事になろうが、雷に打たれようが、ルークの剣で斬られようが大丈夫。病気にもかからず、食中毒で死ぬこともない。
それから危険察知Lv5もつけておこう。万が一、
他には経験値倍化、経験値共有、スキルポイント倍化といったところか。レベルはどうせ100に、いや限界突破をつけるから200になるだろうし、スキルポイントは必要がないが、ゆくゆくはスキルクリスタルを作ることになるかもしれないからつけておく。こういうものは、早めに付けておいた方が高い効果を得られるからな。
ただ、能動的に発動させるスキルに関しては保留だな。5歳じゃ使いこなせないだろうし、スキルなしと表示されているのに使ったりしたら、周りに怪しまれること間違いなしだから。
そして1番大事なことは、これから10歳までの間に、アスカに俺の存在を認識させつつ、俺の言うことを聞いてもらえるようになることだ。
それができなければ、アスカの10歳の誕生日に悲惨なことが起こるだろう。いきなり解放された真の力を、手加減せずに振るってしまったら……。考えただけでも恐ろしい。
10歳になるまでに、自分の力をコントロールさせることを覚えさせないと、大切な人を片付けてしまうかもしれない。アスカにそんな悲しい思いをさせないのは、1番目の兄である俺の役目なのだ!
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