狸火/野栗

◆作品URL

https://kakuyomu.jp/works/16817330660110362077


◆レビュー

「夏の球場の空に映る、子狸たちの青春」


徳島県を舞台に、2匹の子狸が人間に化けて青春をかけて野球に打ち込む話です。

ストーリー自体はオーソドックスなスポーツモノの話ですが、阿波弁をはじめとして、ところどころ徳島らしさが入り、個性的な作品に仕上がっています。


ただ、この作品はローカルネタを含んでいることもあり、かなり人を選ぶ作品だと感じます。

阿波弁もそこまで難しいものは使われていないので、概ね読むことに支障はないのですが、やはり共通語のルビは欲しいと感じました。

一見共通語に見えるような単語でも意味が違ったりするものもあり、正しく読み取れない可能性も考えると、できる限り徳島県民でなくても読めるようにルビを入れた方が良いかなと感じました。


また、ローカルネタに対しての注釈がなく、徳島県民とそうでない人で認識に差が出てしまうのも、読者の幅を広げるという意味では改善点になるかと思いました。

例えばとして、主人公が狸であることですら、徳島県民でないと正しく理解できないかと思われます。(徳島では稲荷のキツネと同じように神の使いとされている)


その一方で、徳島らしさを表現するものに対しての記述が軽く触れるに留められており、その点でも人を選ぶ作品であると感じます。

例えば、スイカは美馬地方の特産品だったりするのですが、この作品の描写だと、夏を表現するだけのものとして感じられました。

また、応援の阿波踊りに関しても、かなりあっさりと扱われているのも気になります。

例えば、野球で頑張っている二人の対照として、スイカを食べているときに阿波踊りの練習をしている人がいる描写を加えると、その後で二人が口ずさんだ「よしこの」の意味も通りやすくなるかなと思われます。

初見だと、「よしこの」や掛け声の意味がわかりませんでした。(最初「よしこの」は人名だと思ってました)


また、3話目の最後に「彼女」としておりますが、恐らく「二塁手と控えの名を叫ぶ甲高い声」の主だと思うのですが、ここでは主語が声になるので、「彼女」と書かれても、すぐにつながりが分からないかなと感じました。


短編として書いているかと思われますので、いろいろと書き足すのは難しいかとは思いますが、ストーリーが良いだけに、こういった部分で人を選ぶのは幾分か残念に感じました。

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