1/27/RURI

◆作品URL

https://kakuyomu.jp/works/1177354054918012868


◆レビュー

「夢破れた投手は、失意のどん底から英雄へと成り上がる」


この作品はプロ入り確実と言われた投手が、全てのチームから見放され、どん底の状態から、心機一転して再びプロチームで活躍するまでの軌跡を描いた作品です。

この作品を見て、やはりリアル寄りのスポーツをテーマにした作品は魅せるのが難しいと感じました。


まず、主人公の凄さについてはきっちり書かれているのですが、野球というスポーツについてある程度の理解が前提となるものとなります。

また、その凄さの描かれ方も平均以上という控えめな表現になっているため、おそらくWEB小説の読者には刺さりにくいのかなと感じました。


スポーツをテーマとした作品は漫画などにもかなりありますが、昭和の時代の作品以降は、基本的に何らかの必殺技や唯一無二の特性を持っていることがほとんどです。

しかも、それが簡単に唯一無二だとわかる、というのもあります。

分かりやすい例だと「黒子のバスケ」などは主人公の持っている「ミスディレクション」はほぼ唯一無二の特性(本人の影が薄いという特徴も相まって)と言えます。


また、こういった作品の特徴として、いきなり主人公を落とすような描写を入れない、というのがあります。

ことスポーツ系の作品は、主人公の凄さの表現が難しいこともあって、主人公がすごいと読者に認識させるまでに、結構文字数が必要となると思われます。

その上で、障害として落とすような描写が入る感じの構成が多いかなと思われます。


また、リアル寄りの作品である以上、仕方ないのかもしれないのですが、主人公が落ちるときのヘイトが全て自分に向くというのも敬遠される要因になっていると考えられます。

他の創作論でも書かれていることが多いですが、WEB小説の読者が求めるものとして最大のものが、「自分にはまだまだ目覚めていない能力がある」「うまくいかないのは自分の力不足ではなく、それを理解していない周囲にある」「努力して、認めさせれば上に上がれる」といった思いを肯定して欲しいというものがあります。

この2番目の要素を満たすために「ざまぁ」系の作品では、能力は凄いのだが、それが地味で認められないという主人公の状態を演出し、ヘイトを認めない相手に向けることでうっぷんを晴らすと言った仕組みになっています。


例えば、誰か特定のライバルを用意して、その人との競争として負けた、という演出であれば、そのライバルのヘイトに持っていけるので、それを努力で打ち負かすという展開があると、読者としては爽快感を得られるのかなと感じました。


もっとも、こういった要素を入れれば入れるほど現実味はなくなっていくので、WEB小説として読まれる作品にするか、それとも自分の理想を追求するかというバランスで、どう取っていくかになるかなと思います。

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