自由をご所望の王女殿下と幼馴染な専属従者の亡命(駆け落ち)スローライフ/砂乃一希

◆作品URL

https://kakuyomu.jp/works/16818023212545666351


◆レビュー

「王女と従者は愛のために王国から夜逃げします」


全てを捨てて自由を手に入れた王女と、その専属従者が新天地で自由な生活を送るというお話です。

ジャンルは異世界ファンタジーになっていますが、どちらかと言えば恋愛ジャンルを期待する人の方が合うように感じます。


タイトル・キャッチコピー共にかなり練られているように感じますので、作品として目を引くと思いますし、展開自体は早いのですが、逆に展開を早くしようとして亡命に至るまでの経緯がなく唐突に感じられました。

その結果として、主人公たちが亡命することに対しての共感を得られにくいと感じます。


これは恋愛系の読者の多くが成人しているということにも関係していて、社会や会社の中でも色々な不満を持っていることが多いのです。

この前提があってテンプレである「ざまぁ」「婚約破棄」「契約婚」「身代わり婚」といったワードが有効に働きます。

これらに共通することとして、「主人公は努力を十分にしているにも関わらず、思い通りの結果が得られていない状態」を演出することで、読者に対して共感性を与えています。(一部、努力が伴わないタイムリープモノもありますが、この場合は巻き戻った後で努力するパターンになります)


おそらく作者にはそういったバックグラウンドが見えているのだと思いますが、それが描写の中に入っていないこともあって、王女が「しょっちゅうお忍びで街に行っていて、その人が好きな人いるからと駆け落ちする」という風に見えるようになります。

これを現代の感覚に当てはめると、「ろくに仕事もしないで遊び歩いている人が、恋人を作って駆け落ちした」となり、共感を得られないどころか反感を抱く可能性もあるように思います。

さらには、主人公が「自分に恋している女性を唆して駆け落ちする悪い男」のように見えてしまう可能性があり、二人の行動に対する正当性を読者が感じられないように思います。


そのため、最初の3話までには「王女が努力をして王女として完璧な立ち居振る舞いができるが、政略結婚などで主人公との恋に妨害が入った」というエピソードを入れた方が良いかなと感じます。


とはいえ、戦闘の描写やストーリーのメリハリなどはしっかりしていて、読んでいて面白い作品であることは間違いないと思います。

それだけに主人公たちに共感できないと感じるのは惜しいかなと思いました。


あとは恋愛的なエピソードが少し足りないように感じます。

例えば、ありがちですが、街を散策していて露店で1個買って二人で分ける、と言ったエピソードなどを付け加えたりすると、ただの散策ではなくデート感が増すかなと感じました。

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