第42話 偽りのない願い

 イルゼがインザラーガの離宮に連れ去られてから数日後――


 その日、アドニスの皇城の城壁門前は、見慣れない一行の到着によって賑わっていた。それは華やかな服装を身に着けた男女の集団で、一目見て旅芸人の一座であることが知れた。そんな異色異風な顔ぶれの中で、一際、強く目を惹きつけるのは、魅惑的な衣装に身を包んだ踊り子達だった。


 彼らの荷を検問するはずの兵士達の視線は、もっぱら踊り子達の艶やかな肢体に釘づけだ。いつもは堅牢な雰囲気を醸し出す城壁門だが、この日ばかりは落ち着きを失っていた。


 そんな浮き足だった空気から逃れるようにして、長い黒髪を持つ踊り子が一人、離れた場所から堅牢に守られる皇城を仰ぎ見ていた。その横顔は目を見張るほどに美しく、彼女も他の踊り子達と同様に官能的な姿をしていたが、その表情から滲み出る怜悧な雰囲気から、受ける印象は明るく朗らかな他の娘達とは対称的なものだった。そんな彼女に、癖のある赤毛の踊り子が肩を鳴らしながら近づいてくる。


「こぉら、レティっ、捜したんだよ! 一体、そんなところで何をやってるのさ? 兵士様が、やあっと入城の許可をくださったんだ。さっさと門を通っちまわないと、いつまた因縁をつけられるか分かったもんじゃないよ。あたしゃ、これ以上、城の前で待ち続けて野宿はごめんだからね!」


 蓮っ葉な女の言葉に、レティと呼ばれた美女は驚いたように振り返る。


「ああ、すみません。今、行きます」


 赤毛の女とは対照的な口調で返して、レティは彼女のほうへと歩み寄っていった。


「捜しにきてくれて、ありがとうございます。ローザ」


 レティが柔和に微笑むと、赤毛の女――ローザは皮肉そうに鼻を鳴らした。


「全く……あんたってやっぱり度胸がいいねぇ、肝が据わってるよ。そうやって、のんびりと散歩を楽しむ余裕があるってんだから。あたしのほうがドキドキしててさ、世話ないね」


 そんな言葉にレティは苦笑交じりに肩を竦める。この女の当てつけがましい言い回しは、この数ヶ月間で慣れている。初めの頃は内心、幾度となく眉を顰めたものだが、ローザのそれは悪意のあるものではなく、むしろ親しみと面倒見の良い性格からきている彼女の特徴なのだと今では理解している。


「私だって緊張しているんですよ。だから、こうして歩き回っていないと落ち着かないんです」


 そう言ってレティは再度、皇城を見上げた。その双眸は確固たる意志を秘めて力強く見えたが、どこか寂しげでもあった。そんな彼女を見てローザはその背を慮るようにして軽く叩く。


「大丈夫さ、きっと上手くいく。あたし達は毎年、ここの皇妃様が主催される春の宴に招かれて城へきてるから、中に入っちまえば誰もあんたを怪しまないだろうさ」

「本当に……貴女には感謝しています。道行きの素性が知れない私を貴女達の一座に引き入れてくれて。貴女がいなければ私は、こうも穏便にアドニスへくることはできなかった」


 レティは改めてローザに向き直って頭を下げた。


「本当に、ありがとうございます、ローザ」

「なんだい、そんなのいいんだよ、礼なんか。そうやってお上品な言葉で改めて礼を言われると、なんだか尻がむず痒くなってきちまう。大体、こっちだって剣の腕が立つあんたと一緒で助かったんだ。最近は仲間だけでの道中も何かと物騒でね。お互い様ってもんさ」


 そこまで言ってローザは「それにしても」と溜め息のように呟いた。


「あんたとは、ここでお別れなんだねぇ……。初めから分かっちゃいたし、あたし達みたいな根無し草には別れはつきものだからね。……でも、やっぱり寂しいもんさ。どうだい、レティ? 危ないことになんか手を出さないで、このまま何もかも忘れて、あたし達と一緒に旅を続けないかい?」


 そんなローザの誘いは、レティにとって嬉しいものだった。だが、それはあくまでローザとの友誼に対する感情であって、決して彼女の決意を揺るがすものにはなりえない。


「いいえ。私は、何よりもあの御方が大切なのです」


 それを聞いたローザは寂しそうに笑った。


「そうか、なら仕方ないね。あんたみたいなイイ女に、そこまで想われる男は幸せもんだ。ああ、そうだ。お別れの前に一つ、教えて欲しいことがあったんだよ。あんたの名前、本当はなんて言うんだい?」


 ローザの思いがけない言葉に、レティは驚愕の表情を見せる。


「気づいていたのですか?」

「まーねぇ……あんた、レティって名前に馴れていないようなとこがあったからね。それとも、やっぱり本名を晒すのには問題があるのかい? だったら無理強いはしないよ。人には大なり小なり事情ってやつがあるからさ」

「……いえ」


 黒髪の女はローザという女性に改めて好感を抱きながら頭を振った。


「私の本当の名前は、レシェンド=アルヴィースと言います」

「はっはぁ、そりゃまた随分と勇ましい名前だ」


 そう言ってローザは嬉しそうに笑った。


「まるで、どこぞの国の騎士様のようだね。でも、あんたらしい名前だよ」


 その評を得たレティ――レシェンドは好意的に受け止める。


「さて、それじゃあ、兵士どもの嫌らしい目が光る門に出陣だよ、騎士様。いいかい? 何を言われても愛想良くニッコリと微笑んでおきな。少しくらい腰や尻を撫でられても、ギャアギャアと喚くんじゃないよ。そうすりゃあ面倒ごとは起きないからさ」


 ローザの忠告にレシェンドは神妙に頷く。ここで揉めごとを起こして失敗するわけにはいかない。


「無事、あんたの愛しい男が見つかるよう、祈っててやるよ、レシェンド」


 そう言ってローザは、成就を祝福する女神のように微笑んだ。




 セレファンス様は必ず、このいずこかにいらっしゃるはずだ――レシェンドは確信を持って皇城の庭を密やかに駆け抜ける。


 その確信の根拠となりえるものは、セレファンスのアドニス入国を手引きしたウラジミールの青年サニエルから聞き出した情報のみだ。そして彼によると、その後の足取りまでは分からないとのことだった。


(……だが、セレファンス様がアドニスに向かおうとなさる理由は、ただ一つ)


 カルカースと共に立ち去った鳶色の髪の少年――イルゼを取り戻すことだけだ。


(全く……何故、こんなことになってしまったのか)


 レシェンドは苦々しく口端を歪める。


 セレファンスと二人、誰にも告げることなく密やかに、リゼットの皇城を発って早二年。当初は数ヶ月ほどでセレファンスの気が済むだろうと考えていたが、暫くしてからレシェンドが考えていたよりも少年の決意は固かったのだと知る。それから彼女は半ば諦念とした心地で、セレファンスの旅路に随行することになった。旅に出た直後は、まだまだ幼さの残る十四歳の少年だったセレファンスだが、この二年で見違えるほどに成長を遂げた。身体つきは少年のものから青年に近いものへと変化し、何より意識や物の見方が驚くほどに大人びた。


 その誇らしくも頼もしい成長が、決して楽ではなかった旅の経験にあると認め、それはセレファンスにとって無駄ではない有意義な年月だったとレシェンドは理解していたが、彼女にしたらいつまでもこのような状態を許容しておくわけにはいかなかった。


 それは、そろそろリゼットに戻るよう、主である少年を促そうとレシェンドが考えていた矢先のことだった。セレファンスが〈神問い〉によってイルゼを見つけ出したのは。


 イルゼは田舎育ちのためか、全く世間擦れしていない素直な性格と思考を持ち、実際の年齢よりも幼く見えるような少年だった。しかし、そんな穏やかな気質とは裏腹に、レシェンド達が目の当たりにした彼の〈マナ〉は恐るべき威力だった。だからこそレシェンドは当初、イルゼを警戒の目で見ていたのだ。だが、この純朴な少年に対して、そんな刺々しい感情を持ち続けることは甚だ難しく、いつのまにかレシェンドはイルゼに対する警戒心を解くまでに至ったのだった。


 レシェンドはイルゼを様々な面から最低限ではあったが支援した。彼が剣術の取得を望んだ時には稽古をつけてやったりもした。それは自分達の真意を隠している罪悪感からでもあったし、彼の境遇に同情したからでもあった。セレファンスも初めは似たような理由から彼を構っていたのだろう。だが一緒に過ごす時が長くなるにつれ、レシェンドもセレファンスもイルゼという少年に対して好感を持つようになっていった。特にセレファンスなどは、よほど対等な立場で得られた友人が嬉しかったのか、端から見ていても感心するほどの構いようだった。だが、それがまさか、このような事態を招くまでになろうとは。


(いや、初めから懸念はしていた。単に自分達が割り切れなかっただけだろう)


 レシェンドは己の未熟さに歯噛みをしたい気分になった。


 イルゼがアドニスの皇子であることはレシェンドもセレファンスも出会った当初から知っていた。セレファンスが長年、苦手な〈神問い〉を駆使してまでも捜し求めていた者は、エスティア最後の王族アラリエル王女の血を受け継ぐ〈ディア・ルーン〉の継承者――行方知れずになっていたアドニスの皇子であり、その末にやっと見つけ出したのがイルゼだったのだから。


(こういう事態が起こりうるであろうことは予想ができていた……恐らくはセレファンス様も。ならば初めからイルゼを利用するだけの存在として、いつでも切り捨てられるように心構えをしておけば、なんら問題はなかった。だが、私もセレファンス様も、それをすることができなかったのだ)


 本懐を遂げるためには、非情にならざるを得ない時がある。ようは自分達は甘かったのだ。その上、今回のセレファンスは、あまりにも軽率過ぎる感情的な行動を取っている。


 だがレシェンドは、そんな彼を許容できなくはなかった。多くの者はセレファンスの選択をリゼットの皇位を継ぐ立場の者としては、あまりにも思慮に欠けていると咎めることだろう。しかし少なくとも――とレシェンドは思う。


(きっとセレファンス様の御父上である陛下と、母君であるあの御方ならば、周囲とは正反対のことを言うに違いない)


 レシェンドは苦笑した。セレファンスの気質は確かに、あの何事をも恐れずに切り拓こうとする強かな両親から受け継がれたものなのだろうから。そして、だからこそ幼い頃の自分は、彼らに魅せられて一生の忠誠を捧げようと誓ったのだ。


 ふとレシェンドは、どこからか流れてくる賑やかな楽曲を聞きつけて足を止める。それは数ヶ月間、寝食をともにした仲間の奏でる音色だった。そんな彼らの音楽は、今やレシェンドの耳に良く馴染むものとなっていた。


 どこか憂いをもって夕闇を渡っていく音色に、レシェンドは暫しの間、聞き惚れていた。


(きっとローザは、誰のものよりも視線を惹きつける素晴らしい踊りを披露していることだろう)


 レシェンドは恐らく二度と会うことはないであろう友人に思いを馳せる。


(彼女のおかげで、こうしてアドニスに潜入することができたのだ。その恩を無為なものにしないためにも、私は私の目的を成し遂げなければ)


 レシェンドは気持ちを新たにし、まずは誰かに話を聞いてみようと考える。情報を探る相手は、見回りの兵士か侍女辺りでいいだろう。なんにしても、この踊り子姿ならば、まず怪しまれることはあるまい。


 そう思ってレシェンドが再び歩き出そうとしたその時だった。


「――!?」


 横に茂った庭木の中から突然、何者かが飛び出してきた。そして勢い良くレシェンドにぶつかる。その反動でよろめいた相手をレシェンドは咄嗟に抱きとめた。


「大丈夫か? 私のほうも少し余所見をしていた。すまなかった」


 レシェンドは謝罪を口にした。自分より少しばかり背の低い相手は、どうやら侍女のようだった。


 その年若い侍女の金髪からは、ほのかに甘い香りが匂い立つ。そんな乙女らしい心配りにレシェンドは何気なく感心しながら、これは良い機会だと思って穏やかに相手へと話しかけた。


「実は人を捜している最中なのだ。申し訳ないが、少し話を聞かせてはもらえないだろうか?」


 警戒心を持たれないように配慮をしながら、レシェンドは柔和な口調で頼んだ。すると侍女は勢い良く顔を上げる。


 その上げられた面立ちを見て、レシェンドは少なからず驚いた。その侍女が見目麗しいと称せるほどに美しい少女だったからだ。


 高級な金糸を思わせる淡く輝く髪、それに縁取られた繊細な輪郭と滑らかな肌。品良く整った愛らしい目鼻立ち。また、走っていたためか、かすかに息が上がり、ほんのりと頬が薔薇色に上気している。それがまた甘やかな初々しさを誘っており、そして大きく見開かれた夏空を閉じ込めたかのような眩い双眸――


 と、ここでレシェンドは、どこかで出会ったことのあるような……と首を傾げた瞬間。


「レシィ!?」


 金髪碧眼の少女は目を見開いて小さく叫んだ。レシェンドも同時に驚く。少女の声が見目に相応しい声質ではなかったからだ。それはどちらかといえば、少年に近いかのような――。しかもそれは聞き間違えようのない、懐かしくもレシェンドが最も望んだ声音。


「セレファンス様!?」


 レシェンドはたっぷりと二呼吸分ほど少女を眺めたのち、その名を悲鳴のように叫んだ。


 それはローザが『愛しい男』と表現し(ローザはレシェンドが恋人を追ってアドニスまできたと勘違いをしていたようだ)レシェンドが焦燥として捜し求めていた少年、セレファンスその人だったのだ。


 あまりの衝撃で開いた口が塞がらない彼女に向かって、金髪碧眼の美少女――の姿をしたセレファンスは、驚きや戸惑い、気まずさなどの入り混じった表情で、


「ええと、まあ、久しぶりだな、レシィ。まさか、こんなところまで追いかけてくるなんて――元気だったか?」


 と、レシェンドにとれば、なんとも気楽で暢気に思える再会の挨拶を述べた。


「……あ、貴方は……! この半年間、私がどのような思いをしていたのか、お分かりにならないのですか……!?」


 この少女がセレファンスだと確信した途端、レシェンドの昂ぶる感情は頂点に達する。


「何故、黙って一人でアドニスに向かうなどという無謀なことをなさったのですか? 何故、その前に一言でも私にご相談をいただけなかったのですか? 何故……!」


 レシェンドは言葉を詰まらせる。これ以上、平静を保って続けることは不可能だったのだ。


 そんなレシェンドをセレファンスは呆気に取られて見ていた。そして、おもむろに困り切った顔になると、


「……ええと……その、悪かったよ。勝手に黙って、こんなところまできてさ。でも、あの時は必死で、とにかくイルゼを連れ戻さなきゃと思っ」


 セレファンスはレシェンドに抱き竦められて言葉を途切れさせる。


「本当に、本当にご無事で良かった……」


 レシェンドは身体全体に確かな温もりを感じて心から呟いた。


「……本当にごめん、レシィ……」


 レシェンドに抱かれたまま、セレファンスは小さな子供のように呟く。


 暫くしてからレシェンドは、セレファンスを解放した。


「……失礼しました。セレファンス様のご無事な姿を拝見したら、本当に安堵してしまって」


 大きく溜め息をつきながらレシェンドが謝ると、セレファンスは笑って頭を振った。


「いいや、レシィと会う時は、頬に平手打ちくらいは覚悟しておかなきゃなって思ってたし」

「そんなことは」


 レシェンドは言いかけたが、多少、そういう気持ちがあったことに気がついて頬を赤らめる。そして改めてセレファンスの姿を確認すると、複雑な表情を浮かべた。


「それにしても、そのお姿は? いえ、もちろん、素性を隠すためになさっているのだとは重々に承知しておりますが……よりにもよって」

「まあ……なんというか色々と理由があってさ。話せば長くなるんだこれが。そういうレシィこそ、随分と色っぽい格好をしてるじゃないか」

「こ、これは――」


 からかうようなセレファンスの声に、レシェンドは自分の姿を顧みた。現在、彼女が身につけている衣類は、素肌の多くが露わになった踊り子のそれであり、肢体の曲線を艶やかに強調するような代物だった。


 自分のあられもない姿を自覚し、レシェンドは慌てて理由を説明する。アドニスに入国する前、たまたま知り合った踊り子の女性に一座の護衛を頼まれたこと。彼らはアドニスの皇妃から宴に招かれていた旅芸人の集団であり、数ヶ月間、彼らと寝食をともにしたこと。皇城へ入る時には、護衛としてよりも踊り子としてのほうが警戒されずに済むだろうと勧められ、この格好をするに至ったこと――


「そうか、レシィには随分と苦労をかけたみたいだな」


 この数ヶ月間の経緯を簡潔にレシェンドから説明され、セレファンスは済まなそうに肩を竦めた。それにレシェンドは「全くですよ」と忌憚なく答える。いつもならば「そんなことはありません」と答えるところだが、さすがに今回ばかりは、そんな心遣いは持ち得なかった。


 レシェンドの素気ない態度にセレファンスは苦笑する。


「そんなに怒ってるのに俺を殴らないでいてくれるレシィは優しいな。それどころか、そんな魅力的な姿で抱きしめてくれるんだから、すごく得した気分だ」

「なっ……か、からかわないでください、セレファンス様!」


 絶句するレシェンドに、セレファンスは朗らかな笑声をたてる。そんな主君にレシェンドは呆れ心地で溜め息をついた。


「全く……暫くお会いしないうちに、随分とお口が軽妙になられたようですね」

「そうか? まあ、この数ヶ月間、色々と変わった経験を積んできたからかもな」


 そんなセレファンスの言葉に、どんな経験をしてきたのか聞くのが恐ろしいとレシェンドは思った。


「ところでセレファンス様は、このように薄暗くなった庭で何をなさっておいでですか?」

「ああ、実はちょっと、人と会う約束をしていたんだが……」


 セレファンスが苦々しそうに呟くのを見て、レシェンドは眉根を寄せる。


「何か、お困りごとでも?」


 そうレシェンドが訊ねた時だ。


「セレシア! どこだっ? どうか姿を見せてくれ!」


 突然、響き渡った必死に懇願する若い男の声。レシェンドは驚きに目を瞬く。


「――あれは?」

「本当にしつこいな」


 セレファンスは、うんざりとした顔つきで溜め息をついた。


「これ以上、つきまとわれるのは困るんだよな、全く……」

「セレファンス様?」


 レシェンドは嫌な予感を察してセレファンスの顔を見た。この金髪の少女が――いや、少年が今まさに何かをしでかそうとしている気配を感じ取ったからだ。


「セレファンス様、私にできることがあれば、なんなりとお申しつけください。ですから、何卒」


 自重を、と続けようとしたレシェンドに、セレファンスは有無を言わせない口調で言った。


「レシィができることといえば、ここに身を隠しておくことだけだ。いいか? 何があっても人前に出てくるんじゃないぞ。これ以上、ややこしい事態はごめんだからな」

「で、ですが」

「いいから隠れてろ!」


 ぴしゃりと言い残して、セレファンスは先程の声がした方向に立ち去っていく。


 思いのほか強く退けられてレシェンドは動揺したが、すぐにこうしている場合ではないと思い直す。いくら叱責を受けることになろうとも、今は少しでもセレファンスの傍を離れたくはなかった。


 庭木を隠れ蓑にしてレシェンドはセレファンスのあとを追った。そうして難なく、彼の姿を見つけ出す。


 そうっと気づかれないようにしてレシェンドがセレファンスのほうへと近づいていくと、彼が一人ではないことを知る。美しい少女の姿をしたセレファンスは、見知らぬ一人の男と対峙していた。


(あれは誰だ? 見たところ、この城の兵士のようだが……)


 なんにしても、先程のセレファンスが示した態度からして、歓迎できない相手であるということは間違いない。


 レシェンドは彼らの会話を聞くため、更に二人へと近づいていき、その真横に位置する庭木に身を潜める。


 この盗み聞きのような行為は、セレファンスの身を案じるがためのものなのだと、レシェンドは自分に言い訳をしながら息を潜めて耳をそば立てた。すると彼らの会話が聞こえてきた。とはいっても、喋っているのはセレファンスではなく、相手のみだったが。


「君も聞いているとは思うが、イルファード皇子はもう二度と、この皇城には戻られないんだ」


 セレファンスを前にして話すのは二十代前半の兵士だ。恐らく、この辺りを警備する一人だろう。どうやら青年の話ぶりからして、二人は顔見知りのようだった。


「イルファード殿下はディオニセス陛下より、直々のお役目を仰せつかったそうだ。その内容は明らかにされていないが、インザラーガの離宮において一生涯、続けなければならないという、とても重要なお役目らしい。だから、その……いくら君が彼を待ち続けても無駄なんだよ、セレシア」


 青年は憐憫めいた表情を浮かべ、目の前の少女を説得するかのように語りかける。そんな彼の言葉をセレファンスは俯き加減で聞いていた。


(一体、この状況は? 『セレシア』……というのは、セレファンス様の偽名であろうが)


 レシェンドは妙な雰囲気を感じ取って戸惑い、セレファンスである美少女と、そんな『彼女』に熱っぽい視線を向ける青年を見ていた。


(確か『イルファード』とはイルゼの皇族名だったはず。つまり彼は今、この皇城にはいないということか)


 レシェンドは困惑しながらも、青年の会話から必要な情報を取り出して分析する。


 恐らくセレファンスは、この皇城にいたイルゼとの接触に成功していたのだろう。だがアドニスを脱出する前に、彼と引き離されてしまったとみる。


(インザラーガは古代皇国のあった場所。アドニスは以前、その地に初代皇王シエルセイドとその妃リースシェランを奉る大神殿の建設を計画していたと聞く。しかしその実態は、大陸統一を目指すアドニスの布石だったのだろう。だが結局は財源不足と民衆の反発、現皇妃クロレツィア側からの阻止によって、その計画は頓挫したらしいが)


 それでも離宮の建設だけは半ば強制的に着工されたようだ。インザラーガにおける開発に意欲的だったのは皇王側だったと聞く。元々、身分も皇統も持たないクロレツィアが、皇王という『魔法の杖』を有する勢力を完全に封じ込めることは易くない。大神殿の建設を阻止できただけでも幸いなことだろう。


(そんな因縁のある離宮に、連れ戻されたばかりのイルゼが、他の皇子達を差し置いて重要な役目についたのか――)


 ならばそこにはイルゼでなければならない理由があるはずた。そしてそれは彼の持つ特殊な力にあるのだろう。


 何やらキナ臭い、とレシェンドは思う。


(先程の会話のおかげで現状が大方、把握できた。それはいい、それはいいのだが――)


 再びレシェンドは複雑な心境で相対する二人に目を向ける。

 先程から青年はセレファンスに向かって熱い想いをとうとうと語っている。その内容は自分がどれだけセレファンスを――というより、セレシアという少女を心配していたか、ずっと再会を願っていたのだとか、今も必死で追いかけてきたのだといったことなど。


「だからセレシア、俺は君に再会できたことがすごく嬉しいんだ。君がイルファード殿下の専属から外されたと聞いた時は、そりゃあ気の毒だとは思ったけれど、俺にとっては喜ばしいことだった。何しろ今後は君に憚りなく話しかけることができるのだし――」


 青年は自身の言葉に陶酔したような表情で『セレシア』を見た。


(……どうも、おかしなことになっているらしい。まさかとは思っていたがこの男、少女姿のセレファンス様に懸想を抱いているのか……)


 レシェンドは呆れ果てて頭を振った。とはいえ確かに今のセレファンスは、見た目だけは紛れもなく愛らしい少女であり、しかも彼の母親で月の女神だと称されるほどに美しかった女性と良く似た美少女だ。そんな想いを抱いてしまう気持ちは分からなくもない、とレシェンドは奇妙に理解を示してしまった。


 しかしセレファンス様は一体、何を考えていらっしゃるのだろう――


 レシェンドがやきもきしていると、青年が「だからセレシア!」などと叫んで少女に詰め寄った。


 レシェンドは思わず腰を浮かせる。だがセレファンスの「何があっても人前に出てくるな」という厳命を思い出して、この場は踏みとどまった。


「俺はあの夜あの庭で、イルファード殿下と一緒にいた君に微笑まれて以来、ずっと君のことが忘れられなかったんだ! あの時から今日までは、叶わぬ想いに絶望しかなかったけれど、今はっ……!」


 青年は目の前の少女――セレファンスに尋常ではない双眸を向ける。どうやら今まで秘めてきた想いをぶちまけて、理性のたがが外れるほどに感情を高ぶらせてしまったらしい。青年はレシェンドが飛び出す暇もなく、一気にセレファンスに向かって突進した。


「セレファンス様!!」


 今度こそレシェンドは庭木から飛び出す。そしてセレファンスに掴みかかった青年を、怒りのままに投げ飛ばしてやろうとでも思っていたのだが。


「……全く! いきなりか弱い乙女に襲いかかろうなんて、不埒なヤツ!」


 セレファンスは憤ったように声を荒げ、自分に不貞を働こうとした青年を無造作に地へと落としていた。


「……か弱い乙女は、そうも鮮やかに兵士を昏倒させたりはしませんよ……」

「ん? ああ、見てたのか、レシィ」


 セレファンスは忌々しそうに眉根を寄せたまま、レシェンドに顔を向ける。そして「ああ、気色悪かった」と言って身震いをした。

 そんな少年を見て、レシェンドは再度、溜め息をついた。


「今の一件で、この数ヶ月間のセレファンス様の暮らしぶりが窺えた思いです」


 皮肉交じりに言ってやると、少女の姿をした少年は不機嫌そうに唇を尖らせた。


「言っておくが、俺はなんにも悪いことなんてしてないぞ。俺が喋れないのをいいことに、この男が都合のいい解釈をして一人で勝手に盛り上がってただけなんだから」


 そんな冷ややかな言い分に、レシェンドは少しだけ昏倒したままの青年が気の毒になった。


「しかし、この男につきまとわれてお困りだったのでしたら、おっしゃっていただければ私が対処をいたしましたのに」

「馬鹿を言うな。そんな格好をしたレシィに、こんな奴の相手なんてさせられるか」


 セレファンスは眉根に皺を寄せ、完全に意識のない青年から兵士専用の服やら防具を剥ぎ取り、それを次々にレシェンドへと放った。


「そんな薄い格好をいつまでもしてるな。この辺りは標高が高いし、夜は冷え込む。それに素性隠しなら兵士姿のほうがいいだろう。ある意味、その姿は目立つからな」


 自分のことは棚に上げ、怒ったように言うセレファンスにレシェンドは目を瞬かせる。そして心の中で小さく笑いながら「はい、申し訳ありませんでした、セレファンス様」と素直に謝った。


 レシェンドには少年の言葉が自分を慮ってのことだと十分に理解していた。だから、そんな彼の優しさを誇らしく嬉しく思ったのだった。




「遅いじゃないのよ、セレ! この私を待たせるなんて、いい度胸じゃないの!」


 セレファンスを目の前にするなり、勢い良く怒り出した黒髪の少女を見て、レシェンドは少なからず気の抜ける思いがした。この黒髪の少女、ラートリー=イディア=アドニスこそが、セレファンスと会う約束をしていた相手だった。


 彼女の素性は道すがらにセレファンスから聞いていた。アドニスの第五皇女で、イルゼの異母妹にあたる少女。イルゼと唯一、親交のあったアドニス皇族で、セレファンスの素性を知りながらも全面的に協力をしてくれているのだという。


 そんな少女は、セレファンスの遅刻がよほど気にくわなかったのか、更に嫌味たっぷりに言葉を重ねた。


「全く! こっちは宴を抜け出すのに、すっごく嫌な思いをしてきたのよっ? 少し気分が悪いからって嘘までついてね!」

「良く言う。ああいう場所での会話は疲れるって、宴への出席を嫌がってたくせに。てい良くサボれて良かったじゃないか」

「私は、そういうことを言ってるんじゃないのよ」


 セレファンスの嫌味返しに、ラートリーはムッとしたように眉根を寄せた。


「この時期に開かれる母様主催の宴は、お世話になっている方々との交流会なのよ。本来は私も母様を手伝って皆様の接待を努めなくちゃいけない立場なの!」


 ラートリーに猛然と抗議され、セレファンスは少しばかり決まりが悪そうな表情を見せるが、


「ほんと、私との歓談を楽しみにしてくださっていた大勢の殿方には申し訳ない思いだわ」


 といった少女の溜め息を聞くと、阿呆らしいとばかりに頭を振ったのだった。


「それよりもラートリー。庭に下着姿の兵士が一人、気絶して転がっているはずだからさ、悪いけど対処しておいてくれないか?」


 先程、奪った兵士の装備に着替えたレシェンドは、その場で脱ぎ捨てた踊り子の衣装で昏倒させた兵士を縛り上げ、そのまま庭木の下に放置してきたのだ。そんな哀れな彼のことをセレファンスが伝えると、ラートリーは柳眉を吊り上げた。


「はあっ? 貴方、また一体、何をやらかしたわけ? なんで兵士が気絶するような真似になるのよっ?」

「……俺が悪いんじゃない。あっちが勝手にのぼせ上がって迫ってきたから返り討ちにしただけだ」


 憮然と答えるセレファンスに、ラートリーは呆れたように、だが皮肉交じりの表情で「ほんと、貴方の淑女ぶりには感嘆するわ」と評した。それにセレファンスは不機嫌そうに顔をしかめたが、そのことについて議論するのも嫌だったのか、それとも自覚しているのか、何も反論しなかった。


「ところで、ねえ、セレファンス? そちらにいる気の毒な兵士の装備を着込んだ彼を紹介してくれないかしら?」


 ようやく黒髪の少女はレシェンドに視線を向ける。

 その場でレシェンドが平伏すると、セレファンスはラートリーに自分の信頼する臣下だと簡単に紹介をする。


「レシェンド=アルヴィースと申します、ラートリー=イディア=アドニス皇女殿下。お目にかかれて光栄です。先触れもなく参上した非礼をお許しください」

「あら、女の人だったの? 背が高いから男の人かと思ってたわ」


 ラートリーは物怖じせずにレシェンドへと近づいてきた。そして平伏を解くように命じる。


 その声にレシェンドが顔を上げると、ラートリーは大きな黒い双眸でまじまじと女騎士を見つめた。


「貴女も黒い瞳と黒髪ね。ご両親のうち、どちらかが大陸外の方なのかしら?」

「いいえ、私の両親も祖父母も大陸人です。ただ、遠い祖先には大陸外出身の者もいたとのことですので、隔世遺伝かと」

「まあ、そうなの。じゃあ、その綺麗な黒い髪と瞳は、貴女が偉大なる先人に深く愛されて生まれてきた証しね」


 そう言ってニッコリと微笑んだラートリーを見て、レシェンドは彼女の中に宿る気高さを見たような気がした。


 ラートリーの母親は言わずと知れたクロレツィア皇妃だ。皇統を受けない身で、その上、大陸外出身にして革命寸前だったアドニスの舵取りに成功し、その政治的手腕を内外に知らしめた女性――


(クロレツィア皇妃は噂通り、聡明で気丈な御方らしい)


 感銘と共にレシェンドは思った。


 黒い髪と瞳は、大陸外の血が交じっていることを否が応でも周囲に知らしめる。血統を重んずる皇族の中で生きる身であれば、それが負担になりこそすれ、益になることはまずない。だが、それでも矜持を失わずにいられたからこそ、彼女の娘であるラートリーは大陸外の血を疎ましく思うことなく、その身に気高い精神を育んだのだろう。


 自身を卑下する人間は、持ち得るはずの光さえも失う――クロレツィアは、それを良く理解しているのだ。


「ラートリー、そろそろ本題に入りたい」


 セレファンスがラートリーを見る。


「あれからイルゼが戻ってこない。俺が聞いた理由によると、イルゼはディオニセスから重要な役目を命じられ、インザラーガに封じられることになったと聞いた。そんなこと、あいつからは一言も聞いてなかったぞ。どういうことだ?」

「私も良く分からないのよ。そのことについては初耳だったの。恐らくイル兄様にとっても、そうだったことでしょうよ」

「つまりイルゼは、前もっての説明もなく、無理やり攫われたってことか」

「攫われただなんて、そんなこと」

「離宮への幽閉なんて、あいつが自ら望むわけないだろう。だったらそういうことだ。違うか?」

「……私を責めるように言わないで、私だって困惑してるんだから!」


 きつい物言いのセレファンスに、ラートリーは直情的に叫んだ。


「私だってこんなこと、兄様の意思だなんて思ってないわ。でも、これは始めから決められていたことよ。それこそが今更になって、兄様がアドニスに連れ戻された理由なんだわ」


 ラートリーは勢い良く、だがどこか独白めいた口調で言葉を継ぐ。


「本当は、このことを兄様に忠告するべきだったのかも知れない。でも私、兄様とお別れしたくなかった。だから兄様にとって、このアドニスが危険であることなんて一言も言わなかったわ。だって、あんな恐ろしいこと、やっぱり夢だったって思いたかったんだもの……! それなのにイル兄様は、私の見た夢の通りにアドニスへと現れた――」


 そこでラートリーは、セレファンスを真っ直ぐに見た。


「私、リゼットの皇子がアドニスにくることも、ずっと前から知ってたわ。夢で知ったの」

「ラートリー……お前が見た夢は〈神問い〉だ! どういう夢を見たんだ? 世界はお前にどんな未来を見せた!?」


 セレファンスは問い詰めるようにして彼女の肩を掴む。


「……闇と、紅い炎の夢」

「それは、セラフィーナ様が見たものと、同じ……」


 セラフィーナはリゼットの前皇妃にして、セレファンスの亡き母親だ。

 レシェンドはセレファンスを見た。金髪の少年は、怒っているような泣き出しそうな呆れているような、いずれともつかない表情で目の前の少女を見ていた。


「……兄様は〈鍵〉よ。世界を――フォントゥネルを混沌に戻すためのね。〈闇からの支配者〉は、フォントゥネルを原生に戻すことを渇望している。全ての隔たりを無くすことが望みなのよ。インザラーガには〈破壊の王〉が眠っているわ。そこに兄様という紅い炎が捧げられた時――〈破壊の王〉は目覚め、フォントゥネルは滅びる」


 少女の揺るぎない予言が、セレファンスとレシェンドに突きつけられた。


「……なんてこった」


 セレファンスは悪夢だと言わんばかりに頭を振った。


「不思議だったんだ。何度も〈闇からの支配者〉に狙われながら何故、イルゼが今まで命を落とさずに済んでいたのか。その理由が今、やっと分かった。イルゼは俺達人間にとって最後の希望とも言える存在だが、〈闇からの支配者〉にとっても混沌を実現するのには必要不可欠な存在だったのか」

「違うわ、イル兄様はイル兄様よ。それ以外の何者でもないわ」


 ラートリーは迷いのない口調で言い切る。


「世界の滅びなんて、あの兄様が望むわけがない。ううん、たとえ一時の感情で選び取ってしまったとしても、イル兄様はとてもお優しい方だもの、きっと後悔して泣いてしまうに違いないわ」


 そんな少女の言葉にセレファンスは思わず苦笑した。どうやら彼女の中では、イルゼという存在は守るべき側のものらしい。このことをイルゼが知れば、兄としての威信のなさに嘆くことだろう。


「セレファンス皇子は……イル兄様のことをどう思ってるの? ただ単に、世界の存亡に関わる存在ってことで一緒にいただけ?」


 ラートリーの窺うような質問に、セレファンスは情けないような、なんともいえない表情を浮かべた。


「俺ってさ、そんなに信用がないように見えるのか? 兄妹から揃って同じようなことを言われると、さすがに傷つくんだが」

「……別に、そういうわけじゃないけど」

「そりゃ俺だって損得勘定で人との関わりを考えることはある。でもイルゼは、絶対にそういうのじゃない。それだけは確かだ。ちなみに俺は、あんたのことも結構、気に入ってる」


 そう言ってセレファンスはラートリーを見てニッコリと微笑んだ。


「……それは、どうもありがとう。大変光栄だわ」


 平然とした少年の台詞に、ラートリーは多少、呆れ気味に応えた。


「まあ、私も、あなたのことは嫌いじゃないわ。兄様に対する接し方を見た限り、悪意はないと思えるしね。だったら、改めてお願いするわ」


 ラートリーはセレファンスに星の輝きを封じ込めているかのような漆黒の双眸を向ける。


「セレ、イル兄様を助けてあげて。そして兄様が一番、望むように、全てのしがらみから解き放ってあげて」


 黒髪の少女は、どこか寂しげに微笑んで言った。


「ああ、もちろん――必ず約束する」


 偽りのない少女の願いに、セレファンスは力強く頷いた。




第三部 完

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る