第107話 アソパにリベンジ
今、アソパへのリベンジマッチが幕を開く。エクスとティノもやる気満々だ。すでに魔力を解放している。
「行くわよティノちゃん。あの野郎をサクッと倒すわよ!」
「はい! 援護は任せてください!」
「二対一で戦うようだが、それでも俺に敵わないと考えた方がいいぞ!」
と言って、アソパは両腕を大きく広げてエクスとティノの元へ走って行った。ティノは上空から雷を発し、アソパに攻撃を仕掛けた。だが、アソパは雷の落下地点を予測し、素早く動いて雷をかわした。
「威力が高いな。当たったら、かなりの時間感電しそうだな」
「そうね。だってあれから三年よ。私もティノちゃんも強くなったわよ」
エクスが剣を構えながらこう言った。アソパの野郎、エクスがかなり接近したことを知って驚いた表情をしている。
「何!」
この隙を狙い、エクスは剣を振るった。アソパは左腕でエクスの斬撃を防御したが、このせいで左腕に深い切り傷を作ってしまった。
「グッ……ウウッ!」
「結構深い傷ね。こんな傷付けてごめんなさいねー」
エクスは剣を回しながらこう言った。アソパは攻撃を受けて、少し苦しそうな声を出していた。
「ここまで強くなったとは……魔力を解放して防御力を高めたとはずなのに……」
「あんた、この三年間何やってたのよ? 研究に集中してまともにトレーニングしてないんじゃないの?」
「俺は毎日鍛えているさ! なのにどうして……」
「トレーニングの質が違ったのね」
エクスはそう言って、アソパに斬りかかった。アソパは接近してくるエクスを見ながら、叫び声を上げて魔力を解放した。
「これで攻撃は届かない!」
「あっそ」
と言って、エクスは後ろに下がった。突如後ろに下がったエクスを見て、アソパは言葉を失った。その直後、ティノが発した雷がアソパに直撃した。
「グオオオオオオオオオオ!」
雷を受けたアソパは、大きな声で悲鳴を発した。電撃が大きな音で鳴り響いているため、それ相当の威力があると思われる。
「クソが……この程度の雷で倒れるものか!」
アソパは叫びながら、魔力を解放して周囲の雷を打ち払った。だが、エクスはその隙にアソパに接近して何度も剣を振るった。
「ウグオオオオオオ!」
「隙あり。これで少しは自分の悪事を反省しなさい」
エクスはそう言って、剣をアソパの右腕に突き刺した。
手ごたえあり。今の私とティノちゃんなら、アソパを倒すことができる。二対一という状況だが、卑劣なことをするジャッジメントライトを相手に正々堂々と戦うなんて選択はない。あっても選ばない。どんな手を使っても、アソパを倒す!
「ぐ……ぐお……ガアアアアアアアアア!」
アソパは大きな声で叫び、魔力を解放した。私は後ろに下がり、ティノちゃんと合流した。
「許さないぞ! お前ら……俺をここまで傷を付けるとはな!」
「戦う以上、傷付くのは当たり前よ。何言ってんの筋肉バカ」
「俺を侮辱するのも許さんぞ! 確実に殺してやる!」
何度も大きなダメージを負ったせいか、奴はかなり怒っている。プライドが傷付いたのだろう。あんな奴でもプライドは持っているようね。だとしたら、それを利用してやろう。
「ティノちゃん、私が囮になるから奴の隙を見計らって大きな攻撃を放って」
「囮にして大丈夫なんですか?」
「大丈夫大丈夫。今の私なら、あいつを倒す自信があるから」
私は笑顔でティノちゃんにこう言った。その後、私は剣を持ってアソパの前に立った。
「さぁ、かかって来なさい。倒した相手なら、もう一度勝てるでしょ?」
「その通りだ。それを教えてやるぞ!」
「じゃあさっさと教えなさいよ。私はここよ」
私は軽くステップをしながら、アソパを挑発した。アソパは私に接近して左腕のストレートを放ったが、私は高く飛び上がって攻撃をかわし、アソパの背中に斬りつけた。
「ギャア!」
「今のは少し魔力を解放しただけの斬撃よ。あまりダメージがないと思うけど」
「ぐ……貴様!」
アソパは私の方を振り返り、大きく踏み込んだ。私はアソパの動きに合わせてしゃがみ、剣を逆手に持って飛び上がった。この攻撃で、アソパの右胸から右肩にかけて大きな切り傷を作ることができた。
「ガアアアアア!」
「うっわー、痛そうな傷ねー。誰のせいなの?」
「それはお前だァァァァァ!」
私を見ながら、アソパは再び大きく左腕を動かした。攻撃を仕掛けるつもりなのだろう。次の動きがどう動くかよく分る。もう一度攻撃を仕掛けるつもりだな。そんなことをさせるわけにはいかない。私は剣を構えなおし、アソパの左肩に向けて突き刺した。
「グアアアアア!」
攻撃の途中だったせいか、アソパは大きく後ろに下がってから転倒した。私はアソパに上乗りになる形になったのを察し、左手を広げて魔力を解放した。
「さ、もう少し痛い目を見なさい」
と言って、私は左手に発した強烈な風の刃をアソパに押し当てた。風が動く音が響き、それと同時にアソパの悲鳴が響き渡る。
「グアアアアア! クソ! こんな攻撃で……倒れるもの……か……」
「まだ倒れないのね。それじゃ、もう少し強くするわねー」
私は魔力を強め、風の動きをさらに活発化させた。激しくなった風の動きはアソパが受けた傷をさらに深くした。このままなら、アソパを倒せるかもしれない。一瞬私はそう思ったが、自分の思い通りに行かないのが人生と言うものだ。
「俺はまだ倒れない! 倒れるわけにはいかないんだ!」
アソパは周囲に魔力の衝撃波を放った。私は吹き飛ばされ、かなり後ろに飛んで行った。ただの衝撃波のため、そこまで傷を受けることはなかった。
「グフゥ……グフゥ……エクス……シルバハート……必ず殺してやる」
「何か言っているけど、私を殺すことより自分の心配をした方がいいんじゃないのー?」
私は大声でこう言うと、アソパはティノちゃんのことを思い出したのか、周囲を見回した。人生は思い通りに行かないが、努力や気力、運しだいで自分の思い通りに行くものだ。ティノちゃんはアソパに存在を察しできないように動き回り、魔力を解放していたのだ。
「強烈な一撃を放ちます。エクスさん、離れてください!」
「大丈夫よ。私はここにいるわ。安心して攻撃を仕掛けて」
私はそう言って、ティノちゃんの肩を叩いた。私が安全圏にいることを知ったティノちゃんは安堵した表情を見せ、アソパの方を向いて真剣な声で叫んだ。
「喰らいなさい! これが私の一撃です!」
その直後、アソパの足元から大きな炎の渦が放たれた。
「ウワァァァァァァァァァァ!」
炎の渦から、奴の痛々しい悲鳴が聞こえる。ティノちゃんは炎の渦を消した後、地面から水を流し、そこから無数の氷柱を宙に浮いたアソパに向けて放った。
「グッ……こんな氷柱……俺の手で破壊してやる」
アソパは両手を前に出し、飛んでくる氷柱を対処しようとした。魔力を解放してバリアか衝撃波を発して氷柱を壊そうと思っているだろうが、そう簡単にはいかない。ティノちゃんはそうなるだろうと予測し、アソパの背後に見えない風の刃を何発も放っていた。
「グオッ!」
後ろから攻撃を受けたアソパは、防御を解いた。その直後、無数の氷柱がアソパの体に突き刺さった。
「グッ……こんな攻撃で……俺がやられるわけが……」
アソパは強がっているが、途中で吐血した。いいぞ、大きなダメージを与えている!
「これで終わりです!」
ティノちゃんはこう言うと、再びアソパに向かって強烈な雷を放った。一発ではなく、何発も放った。
「ウギャアアアアアアアアアア!」
アソパは何度も強烈な雷を受け続けたせいか、大きな声で悲鳴を上げていた。三年前、私が手も足も出なかったアソパは、今は私によって追い込まれ、ティノちゃんによって大きなダメージを受けている。その光景を見て私は思った。あの三年間は決して無駄ではなかったと!
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