第108話 アソパの危険な秘策
いいぞいいぞ! エクスとティノは圧倒的な力でアソパを追い込んでいる! 二人の猛攻を受けたアソパは、大きなダメージを受けた。ここまでアソパを追い込むとは俺も予想していなかった。しかも、エクスは俺を使っていない。俺を使わなくてもアソパを追い込むまで、エクスは強くなったようだ。
「グッ……ううう……ガァッ!」
アソパは魔力を解放し、床を殴った。すると、ティノの周りに炎で作られた檻が現れた。
「エクスさん!」
ティノはエクスに近付こうとしたが、炎の熱が高いのか、檻に接近しなかった。
「どうやら、アソパは一対一でエクスさんと戦おうとしています」
「上等。ちょっと待っててねティノちゃん。あいつを秒で倒してすぐに開放するから」
「分かりました。私もこの檻をどうにかするので」
「うん。了解」
エクスとティノが話をしていると、アソパがエクスに向かって走って来た。エクスはアソパの蹴りをかわし、その背中に向かって剣を振り下ろした。
「グウッ! こんな傷み……耐えてみせる!」
強がりを言っているのだろう。アソパは体に力を込めて筋肉を盛り上げた。だが、それを気にせずエクスはアソパに接近してその背中に剣を突き刺した。
「ほーらほらほら。どれだけ我慢できるのかしらねー」
「グガッ! グッ! ウッ……グウッ!」
エクスは笑いながらアソパの背中を剣で刺していた。しばらくすると、アソパは魔力を解放してエクスを吹き飛ばした。
「あらま。まだやるつもりなのね。一体あとどれくらい斬ったら倒れるの?」
「俺は倒れん! 俺は負けん!」
アソパは叫びながらエクスに接近して殴りかかった。だが、エクスはアソパの攻撃をかわしてアソパのあごに蹴りを放った。
「グウッ! クソッ!」
強烈な蹴りのせいで大きなダメージを負ったのか、アソパは後ろに下がった。その時、アソパの態勢が崩れた。相当ダメージを負っているようだ。
「ハァ……ハァ……俺がここまで……一人でなら勝てると思ったのに……」
「先にティノちゃんが動けない状態になっても、私は一人であんたを倒せるほどの力があるって思っているわ。それと、ティノちゃんの方も私がいなくても、あんたぐらいなら倒せる実力があると思うし」
「どっちにしろ、俺に勝ち目はないということか? ふざけるな!」
「ふざけてないわよ。本気で言っているのよ。見て見なさい、あんたが作った立派な炎の檻、今のティノちゃんの実力じゃあ短時間しか閉じ込められないわよ」
エクスはそう言っているとが、今のティノは座ってエクスとアソパの戦いを見ていた。
「ティノちゃん、脱出しないの?」
「さっき考えたんです。もうアソパはやられる。だとしたら、やられた時に檻は消えます。魔力を無駄に使いたくないので」
「それもそうね。アソパ、さっさと倒れなさい。ティノちゃんが外に出れないでしょうが」
エクスがこう言うと、アソパは怒りの声を上げながらエクスに襲い掛かったが、エクスはアソパの突進をかわした。
「考えなさい。今のあんたじゃ私を倒せないって」
床に着地したエクスは、傷だらけのアソパを見てこう言った。
この調子ならアソパを倒せる。アソパは私を睨み、荒く呼吸をしながら攻撃の支度をしていた。
「死ね……エクス・シルバハートォォォォォ!」
アソパは叫びながら魔力を解放し、私に向かって飛びかかった。単純で分かりやすい動きだ。私は剣を持ち、居合の形で反撃を行った。剣はアソパの右腕に奥深く刺さり、そのまま刃は動いた。これで腕の筋や筋肉に大きな傷を作っただろう。腕を斬り落とさなくても、これじゃあ動かすことはできない。
「ガァァァァァァァァァァ!」
痛みを感じているのか、アソパは大きな声で悲鳴を上げた。私はアソパの右腕から剣を引き抜き、様子を見た。予想通り、この攻撃でアソパの右腕は動けないようだ。
「そ……そんな……この俺が……」
「観念しなさい。私の言うことを聞けば、痛い目に合わなくて済むわよ」
「ふざけるな……俺はまだ……負けを認めていない」
この瞬間、私は嫌な予感がした。その直後に私は動いたのだが、遅かった。アソパはカプセルを取り出し、口の中に入れた。
「これでお前を殺してやるぞ」
アソパはそう言って、カプセルを飲み込んだ。私はアソパに接近してアソパの腹に向かって剣を振り下ろしたけど、剣の刃がアソパの腹に届く前にアソパの右手が剣の動きを止めた。
「エクスさん!」
後ろにいるティノちゃんの声が聞こえた。その後、弱弱しくなっていた炎の檻が再び燃え上がった。まずい……今、アソパが飲み込んだのはストッパーブレイク! あのせいで、アソパは強くなってしまった!
「フハハハハハ! ストッパーブレイク、限界を壊すこの薬の力は素晴らしい! お前を殺すのもたやすくできそうだな!」
「クッ!」
私は高笑いするアソパから離れた。急激に上がる魔力。そして、動けないと思っていたアソパの右腕が動いている。ストッパーブレイクのせいで、魔力が上がったから傷も治ったのか。
「さぁ~て、よくも俺を傷だらけにして、血まみれにしてくれたな? その分の痛みを返してやるよ」
アソパは私に接近し、右腕を引いた。私は飛び上がったが、その瞬間にアソパの右腕が私の頬に命中した。殴られた私は物凄い勢いで吹き飛び、少し離れた所にある岩場に命中した。
「ガハッ!」
(エクス!)
脳内でヴァーギンさんの心配する声が聞こえた。強く岩場に叩きつけられたためか、少しめまいが起きた。だけど、まだ戦える。私は立ち上がり、私に向かって飛んでくるアソパを睨んだ。
「ここをお前の墓場にしてやるぞ!」
「悪いけど、私は死なないわよ!」
私は魔力を解放し、周囲に風を発した。その風はアソパの体を傷付け、吹き飛ばした。だが、アソパは態勢を整えて地面に着地し、どや顔で笑っていた。
「フフフ……いい魔力だ。強い魔力を隠し持っていたのか」
「いざという時のためにね。本当は、この力を使わないであんたを斬りたかったけど」
「手加減して俺に勝つつもりだったのか。俺も見下されたものだ」
「元からあんたらを見下しているわよ」
「フン。何とでも言え。この力の前では、お前も赤子同然だ!」
と言って、アソパは私に殴りかかった。私はバリアを張ってアソパの攻撃を防御し、動き回ってアソパの隙を見つけようとした。だけど、アソパの動きはストッパーブレイクのせいでかなり早くなっている。まずい。このままだと、アソパの姿を見失う!
「俺を見失ったのか? なら、分からないまま、お前を殺してやる!」
アソパの声が聞こえた。その言葉通り、私はアソパの姿を見失っていた。だけど、自信たっぷりのアソパのこの言葉を聞き、居場所を把握した。
(ヴァーギンさん。力を借ります)
(ああ。使ってくれ)
私はヴァーギンさんを手にし、素早く振るった。その瞬間、アソパの悲鳴が響いた。
「グッ……しくじった……」
「油断して声を出したわね。声さえ聞こえれば、場所なんて把握できるわ」
私はそう言って、片膝をついているアソパに近付いた。
「俺を斬るつもりか?」
「そのつもりよ」
「フッ……油断したな! エクス・シルバハート!」
予想通り。やられたふりをしてアソパは私に攻撃を仕掛けた。私は後ろに下がってアソパの攻撃をかわした。その時、アソパは悔しそうな声を出した。その瞬間、アソパの真上から強烈な雷が放たれた。
「グアアアアアアアアアア!」
突如落ちてきた強烈な雷をかわすことができず、アソパは雷を受けてしまった。
「な……何故……雷が……」
「ティノちゃんのことを忘れたの? 今のティノちゃんの実力なら、あんたの炎の檻をどうにかできるって」
私の言葉を聞き、アソパは驚いた表情をした。それからすぐ、アソパの炎の檻を消したティノちゃんが、私の元へやって来た。
「無駄な魔力を使ってしまいましたが……アソパをどうにかできましたね」
「ええ。だけど、まだあいつは立ち上がるわ。油断しないで」
「はい」
私の言葉を聞いたティノちゃんは、アソパを見ながら返事をした。それからしばらくして、アソパが苦しそうに立ち上がった。
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