第13話 電車内での戦い
私とティノちゃんはバッハへ向かうために電車に乗った。その電車に裏ギルドか何か分からないけど、変な奴らが乗り込んで来た。まぁ、あまり強くないけど。とりあえず奴らが持っていたアサルトライフルは使い物にならないし、奴らを止めることはできただろう。
だが、まだ騒動が終わったわけではない。少数で電車を襲うとは考えにくい。恐らく、各車両に奴らの仲間がいるだろう。そう思っていると、ティノちゃんが私に近付いた。
「窓を見ていたんですが、変な連中がバイクに乗ってこっちに近付いてくるのを見ました」
「多分仲間ね。これから数が増えると思うから、ティノちゃんも戦うかもしれないわね」
「分かりました。覚悟を決めます」
ティノちゃんはそう言っているが、その顔には緊張の色が見えた。いざとなったら私が何とかしないと。
その後、私とティノちゃんは今いる車両が無事であることを確認し、次にすることを決めた。奴らの目的は分からないけど、電車を狙うとしたら運転手がいる車両に戦力を集中しているだろう。手っ取り早くこの騒動を終わらせるにはそこへ向かえばいい。しかし、ここで暴れたことを奴らは察しているだろう。後ろから私とティノちゃんを追いかけて来るはずだ。ならどうする? 答えはすぐに出る。さっさと騒動を終わらせよう。
「前へ行くわよ。早く奴らを倒すことに専念しましょう」
「はい」
私はそう言って前を歩いた。後ろにいるティノちゃんはおどおどとしながら後ろを見ていたが、しばらくして声を出した。
「エクスさん! 後ろから黒マスクが来ています!」
「多分銃を撃つわね。バリア展開お願いできる?」
「はい」
ティノちゃんはバリアを張り、奴らが撃つ弾丸を防御した。ティノちゃんの魔力は大人の魔力使いと同じくらいの強さだ。下手な鉄砲じゃあティノちゃんのバリアは壊れない。安心できる。
私はとにかく前へ行くことに専念しよう。私の存在に気付いた黒マスクがアサルトライフルを構えたが、さっきと同じように素早く移動し、アサルトライフルを使用不能にして奴らも倒す。奴らはそこまで強くないから、簡単に倒すことができる。
そのおかげもあってか、楽に前の車両へ行くことができた。やはり私の予想通り、前方車両には強そうな奴らが集まっていた。戦力を前の方に集めていたな。
「お前か、俺たちの仲間を斬りまくっていた剣士とは」
「何だ。女剣士に仲間はやられたのか。油断していたのか……哀れなもんだ」
この言葉を聞き、奴らは私が弱いと判断しているようだ。見た目で判断したら油断するのに。その時、後で銃を撃っていた黒マスクが私とティノちゃんの所へやって来た。
「リーダー! こいつら……強すぎる! 俺たちじゃあ敵いません!」
「このガキも強い魔力を持っています……はぁ……はぁ……いくら銃で撃ってもバリアが壊れない……」
「ティノちゃん、こいつらを外へぶっ飛ばせる?」
「はい。簡単です」
私はティノちゃんに雑魚の掃除を任せると、ティノちゃんは魔力を解放して黒マスクを外へ吹き飛ばした。うん。これでボスとの戦いに専念できる。
「さて、あんたらの目的は後で話を聞くとして、こんなバカ騒ぎを起こしたんだから、どうなるか身を持って教えてあげるわ」
「ふん。舐めた口を言うガキだな。殺してやる」
と言って、黒マスクのリーダーらしきマッチョマンが太い槍を持って私に襲い掛かって来た。
「オラァッ!」
マッチョマンは両手で太い槍を握り、私に向かって勢いよく突き刺した。私は攻撃をかわし、太い槍の上に乗ってマッチョマンの所まで走って向かい、左肩を斬り落とそうとした。だが、その時だった。マッチョマンは無理矢理太い槍を上に振り上げた。
「おっと」
私は急いで床に着地し、ティノちゃんの元へ戻った。その時、他の敵が私たちに向かって襲い掛かって来た。
「エクスさん。私に任せてください」
と、ティノちゃんがこう言った。ティノちゃんは魔力を解放し、雷を周囲に発した。そのおかげで、襲い掛かって来た連中が皆感電し、その場に倒れた。
「ありがとうティノちゃん。あのマッチョマンは私が倒すから、援軍の相手を任せてもいい?」
「分かりました。エクスさん、あのマッチョマンは強そうです。気を付けてください」
「うん。ありがと。サクッとやって来るから」
私はティノちゃんに笑顔を見せてマッチョマンの元へ向かった。
さて、第二ラウンドと参りましょうか。マッチョマンの動きはさっきの攻撃で大体把握した。太い槍を使った攻撃は威力が高いだろう。だけどまぁ、奴はアホだ。負ける相手じゃない。
「また俺に歯向かうつもりか?」
「あまり偉そうなことを言わない方がいいわよ。そういうことを言うと負けるんだから」
「負けるのはお前の方だ! 覚悟しろ、俺の槍で貫いて殺してやるからな!」
と言って、奴は私に向かって連続突きを放った。見た感じ、太い槍はそれなりに重いはずだが、攻撃の速度は早かった。
「ハッハッハ! 重い槍だと思って油断したか? 力があれば重い槍でも自由に操ることができるんだ!」
「見た目通り、力に任せて攻撃しているわね。でも、同じ攻撃を続けていると、いずれ見切られるわよ」
私はそう言って攻撃をかわし、素早く奴の元へ走って行った。奴は私が近付いてくると察して反撃する動作を見せた。だけど、それよりも私の動きの方が早い。
「遅いわよ」
短く私はそう言って、剣を振り上げた。この一閃で奴の片腕を斬り落とすことはできなかったが、深く傷つけることに成功した。
「グアアアアアッ!」
剣が命中したのは奴の右腕。槍を握る時、右手を前にしていたから奴の利き手を奪ったと考えてもいい。それでも、奴は右手から槍を手放すことはなかったが。
「俺に一撃与えるとは……すごい奴だ」
「すごい奴って言葉、そのまま返すわ。あんたの腕を斬り落とすために剣を振るったのに」
私は言葉を返し、攻撃の構えをとった。奴は槍を左手に持ち替えて私を睨んだ。
「右手が使えなければ、左手で戦えばいい。お前を殺すのは片手だけで十分だ」
「両手を使って苦戦していたくせに何を言っているの? 私に勝てないならハンデをあげましょうか?」
と、私は奴を挑発した。おっ、奴の顔が赤くなった。こんな挑発に乗っかるだなんて本当にアホだな。
「ふざけるなよガキが! お前は俺が殺してやる!」
奴は叫び声を上げながら槍を突いた。だけど、片手だけで太くて重い槍を扱うのは無理だった。威力も落ちているし、狙いも定まっていない。簡単に対処することができる。私は奴の攻撃をかわし、もう一度攻撃しろとジェスチャーした。
「そんなに死にたいなら、お望み通り死なせてやる!」
再び怒った奴は、私に向かって槍を突いた。動じない私を見て、ティノちゃんは危ないと叫んでいたが、避ける必要はない。どうあがいても奴の攻撃は私に届かないんだから。奴が放った槍は、座席などの障害物に阻まれ、私に届くことはなかった。
「なっ! そんな……」
「最初からあんたに勝ち目はないのよ。電車と言う狭い空間で、座席などの障害物がある状況でそんな長い武器を使うからそうなったのよ。槍使いだと思うけど、状況に適した武器を使わないと」
「クソッ……最初からそのことを考えて俺に戦いを挑んだのか……」
「そうね。だけど電車の外で戦っても、結局あんたは私には勝てないわよ」
そう言って、私は奴の左腕を斬り落とした。右腕はすでに深く傷ついており、治療しない限りは動かすことはできないだろう。これで奴はもう戦えない。
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