第14話 バッハへ到着
とりあえず電車にやって来た変な連中を倒すことに成功した。戦力が集まっていた先頭車両にいた運転手も怪我がなく無事であり、予想通りバッハへ向かうことができた。
駅に到着してすぐにバッハのギルドの戦士が車内に入ってきて、私とティノちゃんが倒した黒マスクの集団を捕らえた。私が座ってリラックスしていると、中年の男性が私に近付いてきた。
「フリーとなったギルドの戦士、エクス・シルバハートとティノ・オーダラビトだな」
「その通りです。あなたは?」
「私はバッハのギルドに所属している戦士、ソセジ・ハムベーコンです。最初に、電車に入って来た裏ギルドの撲滅、お疲れ様です」
と言って、ソセジさんは頭を下げた。
その後、私とティノちゃんはソセジさんと共にバッハのギルドへ向かった。すぐに会議室へ向かい、ソセジさんと向かい合うように椅子に座った。
「率直に話をしよう。ジャッジメントライトがバッハでテロを起こす前に、奴らを倒してほしい」
「分かっています。私とティノちゃんは奴らを止めるためにここに来ました。あなたから言われなくても、自分たちでやるつもりでした。ギルドに話が通っていたのなら、話が伝わりやすいですね」
どうやら、私とティノちゃんがジャッジメントライト討伐のために動いていることはすでに把握しているようだ。私たちの動きを知っているのなら、話が通りやすい。そう思う中、ソセジさんはコーヒーを一口飲んで話を続けた。
「エルラが起こした事件は私たちも把握済みだ。ジャッジメントライトがギルドに浸食しているとは思わなかった」
「私はその可能性があると思っていました。奴らの表は宗教みたいな団体です。宗教に入るのに、身分は関係ありませんので」
「そうだな……話がそれた。今、バッハで起きようとしていることを話そう」
その後、ソセジさんはバッハで起きるだろうテロのことを話してくれた。バッハにはピアノタワーと言うシンボルがある。高さは何百メートルもあり、建物もかなり広い。奴らが狙うとしたらピアノタワーだとソセジさんは考えている。もし、高くて大きなタワーが爆破されたら、大規模な被害が発生する。奴らはそれを狙っているのだろう。私とソセジさんが話をする中、ティノちゃんがこう言った。
「あの、どうしてジャッジメントライトはテロを起こすのでしょうか? 世界をリセットするって目的は知っていますが」
その言葉を聞き、私は自分の考えをティノちゃんに伝えた。
「脅しかもね。それか、わざと騒ぎを起こして一気にギルドの戦士を始末する考えがあるかもしれないわ」
その言葉を聞き、ティノちゃんは驚いた。それと同時に、ソセジさんが唸り声を上げた。
「確かにそうだな。テロを起こすと情報で流し、ギルドの戦士を現場に集め、集まった所を攻撃する」
「奴らの組織はでかいですが、一人一人がどれだけ強いか私は分かりません。もしかしたら、私より強い奴がいるかもしれないし、エルラのようにギルドから寝返る奴もいるかもしれません」
私はそう言った。だが、私は心の中でこう思っている。実際に事件が起きてからじゃないと何が起きるか分からない。それに、今ここで対策を練ったとしても、イレギュラーなことが起きて練った対策がパーになる可能性もある。私個人の考えとしては、事件を起こした首謀者を狙って攻撃し、敵を混乱させて行動不能にさせたいんだけど。まぁ、そんな簡単に事は運ばないか。
「まぁここで話をしても何が起きるかどうかは当日になってからじゃないと分かりません。とりあえず、ピアノタワーって所に案内してもらえませんか? 一度、奴らが狙う建物をこの目で見たいんです」
私はソセジさんにそう言った。ソセジさんは分かったと返事をし、もう一人の戦士を呼んだ。そんな中、ティノちゃんは不安そうな顔で私を見ていた。
「何だか、大きな騒動になりそうですね」
「確かにね。まぁ、落ち着いて対処すれば多分大丈夫よ。私が何とかするから」
と、私はティノちゃんにこう言った。
数分後、私たちはピアノタワーの前にいた。建物は白く、汚れが一つもなかった。
(相変わらず美しいタワーだな)
急にヴァーギンさんがこう言った。驚いた私は脳内でヴァーギンさんに話しかけた。
(ここに来たことがあるんですか?)
(一回だけな。俺がまだ駆け出しの時だ。ジャッジメントライトの情報を探してここに来た時、このタワーの前に来たんだ。あの時は周りを見ただけで、中は見ていなかったが)
と、ヴァーギンさんは語っていた。そんな中、タワーの役員が私たちの元へやって来た。
「お待たせしました。私はピタのタワー案内人のハママツと申します。本日はよろしくお願いします」
どうやら、案内人を呼んでくれたようだ。何も知らずに中を見るより、分かる人の説明があった方がいいか。私はそう思いながらピアノタワーへ入った。
ピアノタワーは下に演奏会などのイベントのための海上、上の方にはショッピングモール、さらに上は富豪用のマンションとなっていた。人が集まり、富豪レベルの人たちが住んでいるタワーか。テロで狙われてもおかしくない建物だ。中の構想はシンプルで、どの階にも非常口が設置されていて、火災用のために長い滑り台も用意されている。それなりに防犯設備はあるようだ。だが、本当に何かがあった時にそれらが役に立つかどうかは、今の時点では分からない。
案内を終え、私たちはギルドへ戻った。私とティノちゃんは用意されたゲスト用の部屋へ向かい、休むことにした。
「もし、ピアノタワーでテロが起きたら大変なことになりそうですね」
と、ティノちゃんがこう言った。私は荷物を整理しながら言葉を返した。
「そうね。防犯設備もあるようだけど、何かがあった時に役に立つかどうか分からないわ。逃げられるように長い滑り台もあるけど、敵がそれを利用して上へ来ることも考えられるわ」
「あの滑り台を利用する……もし、上の方でバランスを崩して落っこちたらぺちゃんこになりますよ」
「そうならないようにあの滑り台の周りには、落下防止の高い柵がある。けど、敵がどんな武装で襲ってくるか分からない」
「確かに。爆弾で攻撃されたら、あの長い滑り台も破壊されます」
「その通り。いくら金をかけて立派な防犯設備を作ったとしても、爆発の前じゃあ意味がないかもしれない」
「被害者が出そうですね……」
「そうならないように私たちが動く。だけど、いつ奴らが動くかどうかは分からないわね。これから毎日ピアノタワーへ行って見張りをしないと確実にテロを止めることはできないわ」
「もう少し情報が欲しいですね」
ティノちゃんがこう言うと、ソセジさんが扉をノックした。
「今、話をしても大丈夫かね?」
「はい。着替えていないので安心して扉を開けてください」
「分かった」
私の返事を聞いたソセジさんは扉を開けた。何か話があるのかしら?
「今、君たちが電車内で倒した組織の取り調べを終えた。奴らはジャッジメントライトの一員だった」
「あいつらが電車を襲ったんですか。その理由は?」
「君たちがここに来ることを阻止するためにだ」
ほう。エルラのことがあったから、奴らは私とティノちゃんのことを注目しているのだろう。ティノちゃんは驚く声を上げているけど、私としては好都合。敵が私を狙うなら、返り討ちにして情報を手にしてやる。
「奴らが私とティノちゃんがバッハのギルドに加担し、テロを防ごうとしていることも把握済みの可能性が高いです。もし、奴らが行動を起こすとしたら近日中かもしれませんね」
「そのことについても奴らは教えてくれた。テロを起こすのは明後日の早朝だ」
おっと。思いがけない情報を手に入れた。敵の方からテロの情報をくれるだなんて思ってもいなかった。これはラッキーと思うか、私に対しての挑戦状として受けるか……まぁ、どっちでもいい。どうであれ、私は奴らを止める。
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