第11話 危険な裏ギルド
とりあえず騒動は終わった。ケサク、ウラガネが死んでしまったため、素直に喜べないが。私とティノちゃんは拘束したエルラをギルドの差し出し、森で起きたことを話した。話を聞いたギルドの役員はすぐにティノちゃんが所属するギルドにこのことを伝えた。奴がどの組織に入っていたのかもう少し詳しいことを知りたいのだが、今は体を休めること、そしてティノちゃんの精神面を回復することに専念しよう。今のティノちゃんは信じていたエルラの裏切りを知り、かなりショックを受けている。私が何とかしないと。
今、私とティノちゃんは私の部屋にいる。泣き疲れたのと精神的に疲れたせいで、ティノちゃんは私のベッドで眠っている。一緒に食事でもしようと思ったのだが、今は物を食べられる状況ではない。眠って休む方が一番かな。そう思っていると、ギルドの役員がやって来た。
「エクスさん、あれから取り調べを続けた結果、あいつが所属していた裏ギルドが判明しました」
「本当ですか」
私は立ち上がりながらこう言った。ギルドの役員は持っていた資料を見ながら、話しを続けた。
「あいつが所属していたのはジャッジメントライトと言う組織です。表向きはボランティアや募金活動などの慈善行動を行っている組織と同じ名前の裏ギルドですが……関連があるかどうかはまだ調べている途中です」
(ジャッジメントライトだと!)
突如、ヴァーギンさんが声を出した。私は驚き、その声を聞いたギルドの役員は目を大きく開けて驚いた。私は気にしないでと言ったので、あまり気にしないように素振りをしていた。
「ま……まぁ分かったのはこれくらいです。あとは奴が所属していたギルドに渡し、もう少し詳しく調べるつもりです」
「分かりました。教えてくれてありがとうございます」
と、私は笑顔を作って頭を下げた。その後、ギルドの役員が去って私はヴァーギンさんを手にして語り掛けた。
(ようやく見つけましたね、奴らの情報)
(ああ。今回の騒動がきっかけで情報源が見つかるとは思ってもいなかった)
(どこで情報が見つかるか分からないものですね。それよりも、後の取り調べはギルドに任せるらしいですけど)
(いや、後で何とか理由を付けてエルラと会ってくれ。もう少し情報を聞きだしたい)
(分かりました。では、今から取調室に行きましょう)
私はヴァーギンさんを持ち、寝ているティノちゃんが目覚めないように静かに扉を閉めた。
私がまだ修行中の時。ヴァーギンさんは自分のことを私に教えてくれた。
ヴァーギンさんはギルドの戦士だが、どこにも所属せず、各地を回って悪人や凶暴なモンスターを倒していた。だが、各地を回っていたのは理由がある。それは、ジャッジメントライトを追いかけるため。
ジャッジメントライトはヴァーギンさんが生まれ育った村を滅ぼした過去がある。ヴァーギンさんは仇討ちのために各地を回り、ジャッジメントライトの情報を探していたのだ。だが、志半ばでヴァーギンさんは死に、剣として転生した。
私が廊下を歩く中、ヴァーギンさんは改めてジャッジメントライトについて話をしてくれた。
(あいつらは表向きだと慈善活動を行い、綺麗ごとを言って人々を組織に招待している。そして招待した人々を洗脳に近いことをして操り、凶暴な戦士として育てている)
(表向きの活動で政治家や富豪たちにも注目が入り、そいつらに金を出してもらって組織を大きくしているんですよね)
(裏の顔を奴らは知らないからな。知ったとしても、ウラガネのように自分のために利用する奴がいるだろうが)
ヴァーギンさんと心の中で会話をしながら私は廊下を歩き、取調室へ向かった。部屋の前に到着し、扉をノックして返事を待った。
「どーぞー」
中から声がし、私は部屋に入った。部屋の中には取調官と、右手と左足に包帯を巻かれたエルラが座っていた。エルラは私を睨み、文句を言いたそうな表情をした。
「どうかしましたか、エクスちゃん」
「この人とお話がしたくて」
「そうかい。それじゃ、気が済むまでとことんお話しな。俺は煙草でも吸ってくるわ」
取調官は立ち上がり、背骨を伸ばして喫煙室へ向かった。私は奴の前に座り、口を開いた。
「最悪な気分の用ね」
「その通りよ。で、何の用? 私は本当に所属している組織のことをちゃんと話したよ」
「知っているわよ。あなたはジャッジメントライトに所属している。いつ、どのタイミングでギルドを裏切ったのかはどうでもいいから、ジャッジメントライトの目的について話をして」
私がこう言うと、奴は舌打ちをした。
「口外するなと言われているの」
「へぇ。それじゃあ」
私は立ち上がってヴァーギンさんを見せた。奴から見たら、何も言わなかったら私がこの剣で斬ると思ったのだろう。すぐに悲鳴を上げた。
「分かったわよ! 簡単に話すわ。ジャッジメントライトはこの腐った世界をリセットしようとしているのよ」
「リセット? ゲームのように、もう一度一から作り直すってこと?」
「その通りよ。この世界は不平等。貧富の差や学歴の差など、いろんな差がある。個人的にも国的にも。ジャッジメントライトはそんな不平等な世界を根本から壊すため、活動をしているのよ!」
とまぁ綺麗ごとのように言っているが、簡単に言えば全世界相手にテロを起こすつもりか。
「夢見る子供のようなことを言う組織ね。全世界に喧嘩を売って勝てると思っているの? あんたたちの組織は人が多いけど、それでも全世界の軍やギルドの戦士相手に戦って勝てるわけがないわよ」
(待てエクス。ジャッジメントライトには政治的にも繋がりがあることを思い出せ)
と、ヴァーギンさんがこう言った。確かにそうだ。政治家と関係があるとしたら、そいつを利用して裏から政治の世界を支配することも可能だ。軍を動かす政治家もいるし、もしそいつらによって国の一部が乗っ取られたら不可能ではない。
「世界を潰すためには、政治家も利用するのね」
「奴らは金を持っている。奴らは国を動かす力もある。使える物は何でも使うわ」
そう言いながら、奴は笑い始めた。私は席から立ち上がり、扉の方へ向かった。そんな私を見て、奴はこう言った。
「あら? お喋りはもう終わり?」
「聞きたいことを聞けたので、もう十分です。あとの処分はギルドに任せます」
私はこう言った後、取調官を呼んで部屋から出て行こうとしたが、奴は続けてこう言った。
「もう一つ教えてあげるわ。来月末、ジャッジメントライトはバッハと言う町で騒動を起こすつもりよ」
思いがけない情報を一つ聞いた。バッハはここからバスと電車を使って三日はかかる。それなりに大きい町だ。そこでジャッジメントライトが騒動……テロを起こすつもりなのだろう。だけど、どうして奴はそんなことを私に教えたのだろう?
「どうして私に大事な情報を教えるの?」
「この話を聞いてすぐにバッハに向かうんでしょ? そこで知るといいわ。あなたが敵対しようとしているジャッジメントライトがどれだけ素晴らしく、強いことを」
どうやら、奴は私にジャッジメントライトの素晴らしさを教えようとしているのだ。そのためには、自分の目で確かめろということか。ふざけたことをすると思ったが、かなり重要な情報を手に入れることができた。
「分かったわ。あんたらがどれだけ素晴らしいかこの目で確かめてあげる。そしてその後は、跡形もなくジャッジメントライトを潰してやるから」
「無駄よ。ジャッジメントライトは絶対に滅びない」
と言って、奴は笑い出した。その時、煙草を吸いに行っていた取調官が戻って来たため、私は後を頼むと言って取調室から出て行った。
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