第4話 母である聖女を殺す運命を背負っている主人公の物語

いや?違うな? そもそもゲームではどうだったのか……?

セリスは、母である聖女を殺す運命を背負っているけれど……。


(殺してはいなかったよな……?)


そんなことを考えているうちに眠くなってきた。


「とりあえず、今は休んでくれ」


俺は優しくベッドに寝かせられる。


(あれ……なんでだろう……)


すごく安心できるな……。


(眠いな……)


さっき起きたばかりなのに……。


(おやすみなさい……)


再び夢の世界へと旅立ったのだった──。


──朝起きると、父親と母親の会話が聞こえた。


「おはようセリス」

「ああセリス、おはようございます」


お?

新しい名前で呼ばれたぞ?ってことは?



あれから三ヶ月ほど経っただろうか。

ようやく言葉が話せるようになってきたぞ。


「ばう!」

「どうちまちたか~?」


ちなみに今はベッドの上でハイハイしているところである。

最初は自分の体を動かすことすらできなかったが、今ではかなり自由に動けるようになっていた。

もちろんまだまだ赤ちゃんなのでできないことは多いのだが。

まずはこの世界について調べないとな。

本当に『RE:ゼロ・ブレード・アーティスト・オンライン』の世界なのだろうか。

ネット環境があればいいんだけど、そういうものはない。

あとは本とか新聞かな。

文字はまだ読めないが、絵を見ればだいたいわかるだろう。

もしセリスに転生したのなら、両親はそう裕福ではない村人だ。

そんな彼らが字の読み書きができるとは思えない。

とりあえずは両親を観察しつつ、情報を集めよう。

まずは自分のステータスを確認するか。

「ステータスオープン」


──────

名前:セリス・レイドハート

種族:人間(♂)

年齢:1歳(+16)

Lv:1

HP:720/720

MP:560/560

STR:15

DEX:50

AGI:55

MID:3855

VIT:4525

LUK:50

スキル:『鑑定Lv1』『無限収納』

お、ちゃんと出たな。


さらに時間が流れた。

両親の話してる内容や、周りの俺への扱いで分かって来た。


(疑いようがない。俺は転生して、セリスになったんだ)


セリスというのは主人公の友人にして『RE:ゼロ・ブレード・アーティスト・オンライン』で騒動を巻き起こし、魔王と結託までした黒幕だ。

そして最後には主人公に倒される。

極めつけは聖女を殺してしまう。


「俺の未来は……?」


絶望に目の前が真っ暗になる。

セリスなんて最悪だ。

唯一の救いは、今がゲーム開始前の時間軸だってことだ。


待てよ……? もしかしてこれは……聖女殺しの運命を回避できるチャンスじゃないか?


俺が転生したということは、少なくともゲームの本編が始まる前だということだ。

セリスを倒さなくても済む可能性がある。


(まだだ……焦るな……)


まずは情報収集を優先しよう。

両親には悪いが、俺の目的は自分の安全を確保することだ。


(そのついでにこの世界を楽しんでもいいけどな)


まずは屋敷の外へ出てみようと思う。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る