第4話 母である聖女を殺す運命を背負っている主人公の物語
いや?違うな? そもそもゲームではどうだったのか……?
セリスは、母である聖女を殺す運命を背負っているけれど……。
(殺してはいなかったよな……?)
そんなことを考えているうちに眠くなってきた。
「とりあえず、今は休んでくれ」
俺は優しくベッドに寝かせられる。
(あれ……なんでだろう……)
すごく安心できるな……。
(眠いな……)
さっき起きたばかりなのに……。
(おやすみなさい……)
再び夢の世界へと旅立ったのだった──。
──朝起きると、父親と母親の会話が聞こえた。
「おはようセリス」
「ああセリス、おはようございます」
お?
新しい名前で呼ばれたぞ?ってことは?
◆
あれから三ヶ月ほど経っただろうか。
ようやく言葉が話せるようになってきたぞ。
「ばう!」
「どうちまちたか~?」
ちなみに今はベッドの上でハイハイしているところである。
最初は自分の体を動かすことすらできなかったが、今ではかなり自由に動けるようになっていた。
もちろんまだまだ赤ちゃんなのでできないことは多いのだが。
まずはこの世界について調べないとな。
本当に『RE:ゼロ・ブレード・アーティスト・オンライン』の世界なのだろうか。
ネット環境があればいいんだけど、そういうものはない。
あとは本とか新聞かな。
文字はまだ読めないが、絵を見ればだいたいわかるだろう。
もしセリスに転生したのなら、両親はそう裕福ではない村人だ。
そんな彼らが字の読み書きができるとは思えない。
とりあえずは両親を観察しつつ、情報を集めよう。
まずは自分のステータスを確認するか。
「ステータスオープン」
──────
名前:セリス・レイドハート
種族:人間(♂)
年齢:1歳(+16)
Lv:1
HP:720/720
MP:560/560
STR:15
DEX:50
AGI:55
MID:3855
VIT:4525
LUK:50
スキル:『鑑定Lv1』『無限収納』
お、ちゃんと出たな。
さらに時間が流れた。
両親の話してる内容や、周りの俺への扱いで分かって来た。
(疑いようがない。俺は転生して、セリスになったんだ)
セリスというのは主人公の友人にして『RE:ゼロ・ブレード・アーティスト・オンライン』で騒動を巻き起こし、魔王と結託までした黒幕だ。
そして最後には主人公に倒される。
極めつけは聖女を殺してしまう。
「俺の未来は……?」
絶望に目の前が真っ暗になる。
セリスなんて最悪だ。
唯一の救いは、今がゲーム開始前の時間軸だってことだ。
待てよ……? もしかしてこれは……聖女殺しの運命を回避できるチャンスじゃないか?
俺が転生したということは、少なくともゲームの本編が始まる前だということだ。
セリスを倒さなくても済む可能性がある。
(まだだ……焦るな……)
まずは情報収集を優先しよう。
両親には悪いが、俺の目的は自分の安全を確保することだ。
(そのついでにこの世界を楽しんでもいいけどな)
まずは屋敷の外へ出てみようと思う。
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