第十三話 地下世界の入り口


:Dランクダンジョン、《地下世界の入り口》。全14階層。パーティ基準の攻略推奨Lv.は18。洞窟型。出現モンスターはオーク、吸血蝙蝠、亡者など。視界は問題ないが障害物と地形に注意。

:Wikiニキ攻略情報サンキュー。

:ヌルッと現れてそのまま消える謎のライバーズ。なお他にもキャラの濃い連中が複数いる模様。

:ここの住人も大概蟲毒の壺で揉まれてるんだよな。


「洞窟型ダンジョン……外よりも薄暗いですが、思ったより視界は利くのですね」


:洞窟型にありがちな謎の松明助かる。

:分かる(分かる)


「一口に洞窟型と言っても千差万別ですからね。光源があるタイプ、逆に一切なしの真っ暗闇なタイプ。たまに光源を持ち込んでも強制的に無効化されるタイプもありますが」

「そ、そんな恐ろしいダンジョンが?」


:何それ怖い……。強制視界制限は格下相手でも普通に負ける特大ハンデぞ。

:人類の大半が苦手な奴じゃん。

:なに? 武芸極めて心眼でも身に付けろと?


「それも対策の一つですね。僕はみそPのサポートと風を索敵に使って突破しましたが」


:冗談のつもりだったのに真顔で頷くなよ反応に困るだろ。

:ナチュラルに一般勢と感覚がズレてやがる……。

:馬鹿言うな。大半の冒険者も置いてけぼりだよ。

:話せば話すほど頭のおかしさがバレるショタがいるらしい。


「と、いいますか心眼の使い手って結構いるのですか?」

「達人なら標準装備してますね。僕は達人未満の半端者なので未装備ですが」


:ひょうじゅんそうび。

:マジかよ(驚愕)

:ヤベえな達人。いるのかよ達人。


「まあそんなことより攻略を始めましょう」


:待って、凄い気になるんだけど達人の話!

:まあ気持ちは分かる。

:でも今日は攻略配信回だし……。

:れんれんちゃんの攻略も気になるし。

:後日問い詰めようぜ!


「外野は気にせず始めましょうか」

「は、はい――では、参ります」


:おっ、声が変わった。

:いきなりキリッとしたガチトーンに。

:甘さが消えて凛々しさが3割増し。

:これはこれでいい。推せる。


 †《黒の■婦》†《眷属招集:夜魔》†


:眷属招集スキル! うわ、マジでレアだ。モンスターでも持ってるのはごく一部だけなのに。

:戦闘型眷属を呼べるヨトゥン・エリートはマジのガチで強レアモンスだったんだよ。それ以上に相手が化け物だっただけで。

:悲しいなぁ……。

:眷属契約型ならそこそこいるんだがなー。

:招集型の質より数スタイルは使い勝手がめちゃくちゃ良い強スキルよ。


 恋華の影から飛び回る小さな生き物が飛び出していく。彼女が呼び出した眷属だ。

 眷属招集スキル。読んで時のごとく所持者に従う眷属を招集するスキルだ。

 特定個体のモンスターと契約・使役する眷属契約スキルと比べ、その最大の特徴は呼び出せる眷属の数。通常眷属契約スキルで呼べるのは精々1体。だが眷属招集スキルは質が大きく落ちるものの二桁から三桁近い数を呼ぶことが出来る。


:いや眷属の見た目グロ……。デフォルメされてるとはいえ翼生えた飛び回る目玉はフィルターかけるべきでは?

:このチャンネル基本R-15指定だぞ。というかそんな根性でグロありありの冒険者系チャンネルを見るな。

:見かけより性能だろ常識的に考えて。

:なんだかんだ冒険者ガチ勢が多いよなここ。


「みんな、お願い!」


:おおっ、眷属が一斉に飛び立っていった。

:見るからにパワーは無さそうだからな。偵察や囮要員か。

:もう既に優秀じゃんかよ。うちに来ない?(ガチ)


「そうでしょうそうでしょう! 皆さんも分かりますか、最初に見た時から才能あるって思ってたんですよねー!」

「や、大和様! どうかそれ以上はご容赦を……は、恥ずかしくて」


:れんれんちゃんが褒められて何故か本人より嬉しそうなショタ。

:そして恥ずかしそうにショタを嗜めるれんれんちゃん。

:あースレてない(推定)美少女とかいう天然記念物に癒されるんじゃあ……。

:まだガンには効かないがそのうち効くようになる。


「――! 大和様、モンスターを発見。移動します」

「分かりました」


:おお、あわあわしてたのが一気にキリッと。

:大和君相手に迷わず指示出し。締めるべきところは絞めてる。

:やはり声がいい。甘いだけじゃない、凛々しい。

:ブレねえな声フェチニキ。

:あ、敵見っけ。

:オーク。棍棒持ち。単独。

:仕掛けるには悪くない相手だな。


:データを開示します@みそP


 【基礎データ】

 種族:オーク

 位階:12

 【スキル】

 《棍棒術(初級)》

 《悪食》

 《頑丈》

 【耐性】

 耐性:物理

 弱点:火、光


:Lv.12のオーク……Lv.90オーバーのショタがいるせいで認知バグ起こしてるけど平均Lv.10の冒険者パーティなら奇襲かければ1人は持っていける強モンスなんですよね。

:冒険者の大半がLv.10以下という過酷過ぎる現実に震えろ。

:オーク君もうちょっとキャライメージに合わせて雑魚キャラになってくれていいんだよ(震え声)

:基本一般人はLv.0だからなぁ。

:冒険者と一般人の壁は厚い。なお冒険者の中でも才能の壁はさらに分厚い。


「……まだ気づかれてはいないようです」

「どうしますか?」

「ここまで誘き寄せ、奇襲をかけます」


:なお全く怯んでないれんれんちゃんである。

:流石は大和君推薦。声に迷いがない。

:キッチリ自分のスタイルを確立してる感じだな。やはり優秀。


「囮、お願い」


:空飛ぶ目玉がモンスターに寄ってって……攻撃!

:当然効かないが注意は引いた。

:あとは反撃躱しながらレンレンちゃんがいるところまで誘導、と。

:手慣れておるわ。


「3、2、1……行きます!」


 †《黒の左手》†《属性権限:闇》†《黒魔術(初級)》†《魔弾》†


:うおっ、闇系か。珍しっ!

:左手で指差した先から黒い弾が出た……。

:魔女の呪詛だな。

:ちょっと遅いが、軌道が曲線……もしかして敵を追尾してる!?

:ホーミング機能付きか、優秀!


「――ぶぎいいいいいいいぃぃぃッ!?」


:あっ、当たった。

:遅いと見て躱そうとしたのが仇になったな。

:うおっ、闇が弾けてオークがのたうちまわってる。めっちゃ苦しそう。

:攻撃・状態異常特化の闇系統スキルは火力過剰になることがままある。

:その分補助や防御は手薄だが。

:逆にそっちが得意な光系統とは対照的だよな。


「追撃します」


:その場にとどまって二発目。

:距離を取りながら残心。うーむ、卒がない。

:のたうち回ってたのが動かなくなった……。

:いや動いてはいるぞ。死に際の痙攣って感じだけど。

:よ、容赦ね~……。


「まず一匹……今のうちに移動を」


:やるやん!

:撃破後即移動。ソロの基本だが練れておる。

:大和君が目を付けただけのことはあるわ。逸材じゃん。

:えぇ……今の見ての感想がアレ?

:殺伐というか凄惨なシーンだったんだが。オークの悲鳴が耳から離れん……。

:高評価してる冒険者層とドン引きしてる一般層の温度差で風邪ひきそう。


「ブモオオオオオオオォォォッ!!」

「ッ!? 新手!」


:ま、そう来るわな。

:割と叫び声が響いたしね、やむなし。オーク1匹ならまだマシよ。

:さて、どうなるかな。

:冒険者勢のお手並み拝見感が凄い……。


「近寄らせない!」


†《射撃(初級)》†《魔銃:黒火箭》†《乱れ撃ち》†


:今度はハンドガンに持ち替えて撃ちまくり!

:火属性の魔力弾をバラ撒く魔銃か。手数重視の牽制用だな。

:とにかく近づけさせないのが先決。

:呪詛がメインウェポンならこっちは近接用のサブウェポンか。

:いい趣味しておるわ。


「みんな、お願い!」


:眷属をけしかけて注意を逸らしつつ。

:撃ちながらのバックステップで距離を取り。

:魔銃を下げて左手で指差し――で、呪詛ブッパ!


†《魔弾》†


「ぶもっ、ぶぎょぺっ!?」


:呪詛喰らって派手に吹っ飛んだ……。あ、灰になって消えてく。

:今度は一撃か。牽制分で体力が削れてたかな?

:犠牲者二号、ここに眠る。

:いやあの呪詛クソ強いな。高火力、速度そこそこ、追尾機能付きは素直に優秀。


「フゥゥゥ……早く移動しないと」


:立て続けに二体葬りながら油断なしか。

:物陰の死角を利用しつつ奥へ前進。

:ちょいちょい立ち止まってるのはマップの確認かな。

:手首のウェアラブル端末と連携したアプリによる自動マップ作製機能、神。

:一昔前にはこんなんなかったからなぁ(遠い目)

:立体地図の投射機能といい半分SFに片足突っ込んでるわ。

:ジャンル的には現代ファンタジーじゃね?


「ダンジョンで迷ったら洒落になりませんからねー。最低限来た道を把握できるマップ作成アプリは冒険者に必須です」


:マップ情報を作成しながらだから移動速度遅めかな?

:普通はこんなもんじゃね? 俺のところも速度はそう変わらんよ。

:いや、そうなんだが。

:クソヤバ冒険者を見慣れてるせいかみんな目が肥えてんのかな。

:いい調子じゃん。


 

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