第十四話 や、やりやがった……!
:いま何階層だっけ?
:5階層。
:そっか。いいペース……
:いや、ソロで5階層は十分すごいよ? でもまあ、予想できたことではある。
「――囲まれましたか」
:ピンチだな。
:むしろここまでもったことを褒めたいよ俺は。
「やっぱり私じゃ……いいえ、ここからです!」
:途中まではよかったんだが。
:敵が増えるにつれ徐々に手が回らなくなって、どっかのタイミングで破綻した。
:やはりソロは厳しいって。
:Lv.21は一般冒険者基準ではめちゃくちゃ強いが相手も弱くないし数がいる。
:これは大和君もカバー入るか?
:いまアイツ何してるの?
:風で気配消しながら後ろで頑張れ頑張れって応援してるな。
:ウゼェ!
:あのショタくんさぁ……。
:そういうところばっかり器用なんだよな。
「まだ、まだっ……!」
†《黒の左手》†《黒魔術 (初級)》†《血霧の黒》†
:一方れんれんちゃんはガチモード続行中である。
:うおっ、赤黒いモヤがブワッと広がって……。
:血煙?
:食らったオークが真っ赤っかになってる。
:広範囲の呪詛ブッパ!?
:いや、多分状態異常……衰弱効果だ。オークどもの足がフラついてる!
†《乱れ撃ち》†
:赤い霧を維持しながら射撃続行!
:だが向こうも動いてるぞ!
:弱ってるだけで死んだ訳じゃないからな。
†《危険感知》†《逃げ足》†《ポジショニング》†
:障害物を使った位置取りが上手いな、完全に囲まれないよう立ち回ってる。
:敵がフラフラな分込みでギリギリ!
:すげえガッツ! 根性あるな!
:俺氏、ソロでモンスターに囲まれた時点で天を仰ぐ自信がある。
:分かるわ、本来それくらい絶望的な状況だぞ。
:タイトル「ある冒険者の絶望」
:洒落になってないんだよなぁ。
「もう、そろそろ……!」
:だがここからどうする?
:逃げ回ってるだけじゃジリ貧。
:向こうも状況異常で弱ってるが死ぬまで遠い。
:というかジリ貧に持ち込めてる時点で凄い。普通は囲まれた時点で詰む。
「これで一気に……終わらせます!」
:お、動くか……?
:乾坤一擲か破れかぶれか。
:頑張れ、負けるな!
†《黒の左手》†《属性権限:闇》†《黒魔術(初級)》†《不吉の風》†
:黒い突風! オークの群れがバタバタ倒れてく!?
:今度こそ広範囲の呪詛ブッパか!?
:凄いな、マジで凄いな!
:レベルが高いのは知ってたが、
:だが何故このタイミングで広範囲ブッパ……?
:もっと早く使っても良かったんじゃね?
「多分状態異常で弱らせながら群れ全体を確殺できるまで待ってたんでしょう。あの黒い風、それなりに魔力を使うみたいですしね」
:いたんかいショタァッ!
:ヌルッと現れたな。
:解説助かる。
「ブモオオオオオォォォ――――ッ!!」
:新手!? さっきから多すぎだろ!
:うえぇっ、まだ出るの!?
:ゴキブリ並みの数だな!
:増援多すぎィ!?
:流石にこれ以上は無理だろ。撤退推奨。
「ま……まだ、まだぁ……!」
:本人はやる気だぞ!
:肩で息して足取りもフラフラ。無理すんな!
:根性ありすぎ! 寝てろ!
:もう目の前だぞ、構えろ!
「ここまでですかね。ですが素晴らしいファイティングスピリットでした」
「……あ」
†《魔装:黒翼》†
:あ。
:スッとと伸びたマントでれんれんちゃんを覆って完全ガード。
:オークどもの攻撃を完全遮断。見かけふわふわなくせにかってぇなアレ。
:流石は蛇狐特製の伸縮自在マント。GJ。
「それじゃ皆さんお疲れ様でした。また明日もよろしくお願いしますね!」
†《吹き飛ばし》†
:うおっ、群れがまとめて吹っ飛んだ!?
:壁に叩きつけられて潰れてる、エグ……。
:あのスキル体勢崩すのがメイン効果なんだけどなー……。出力高すぎて普通に攻撃スキルになってやがる。
:しかも笑顔でまた明日とか人の心ある?
:オーク君可哀想……。
「や、大和様……申し訳ございません。ここまでのようです」
:めっちゃ呼吸が荒い。膝に手を置いて肩で息してる。
:無理もねえや。
:そもそもソロの攻略は無理がある。
:黒鉄大和ですらみそPとコンビ攻略だからな。
「そうですね。見たいものは見せてもらえましたし、今日はもう帰りましょうか」
:いま確か5階層か。ボスがいるのが14階層だから半分以下かな。
:ポータルで帰るには丁度いいタイミングじゃね?
:帰還ポータルイズゴッド。帰還ポータルを讃えよ。
:マジで神よ。帰還オンリーなのが難点だが、これのあるなしでダンジョン攻略の難易度が激変する。
(とはいえこのまま明日再挑戦しても今日の焼き直しになりそう。何か手を打った方がいいかな?)
:大和君何か考えこんでる?
:珍しいシリアス顔。
:黙っていれば絵になるショタ。口を開けば宇宙猫を撒き散らすトンチキボーイ。
「ナチュラルに失礼な。まるで僕が普段からおかしなことばかり言ってる人みたいじゃないですか」
:そう言ってるんだが???
:黒鉄大和は自分で自分が分からない。
「絶許訴訟……。まあいいや。それじゃライバーズのみんな、今日はここまでです。おつダンジョン~」
:大和君おつダンー。
:れんれんちゃんもおつダンー。
「は、はい。お疲れ様でし――キャッ」
:ッ!?
:おっ、疲れで足がもつれ――いや。
:これは……。
:や、やりやがった……! 野郎、やりやがった!
「大丈夫ですか?」
「あ、あ、あの……! この体勢は、ちょっと!?」
:背中から転びかけたれんれんちゃんの下へ一瞬で移動。流れるように抱き留めてお姫様抱っこ。
:なんたる早業。俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。
:顔を覗きこまれたれんれんちゃん、めちゃくちゃ焦ってる。
:顔はいいんだあのショタ。顔は。ちょっと頭がおかしいだけで。
「ん。やっぱり大分疲労が溜まっていますね。今日はこのまま帰還しましょうか」
「えっ、でも……………………えっ?」
「ポータルまですぐですから。あはは、僕にとっては役得ですね」
:お前さぁ……ほんとお前さぁ。
:悪気はないんだ。悪気は。だからタチが悪いんだけど。
:老若男女冒険者には平等と見せてたまに女に甘いんだよなぁ。
:まーたガチ恋勢を増やす気かな?
:うちの愚弟がゴメンね?@みそP
:責任とって。あんたあのナチュラルたらしイケメンムーブの製造責任者でしょ?
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