第十一話 足切り基準みそP
――で。
大和と恋華の出会いからあっという間に時間がが過ぎ去りながらも打ち合わせを重ね、恋華が登場する配信の日取りが決まった。
4月最後の三連休。一応は学生の身である恋華が最もフリーに動ける日程だ。
SNSを通じて事前に配信日時を告知。さらにゲストの存在も匂わせつつ当日を迎え……ついに配信が始まった。
「今日も元気に迷宮攻略、《文明崩壊ダンジョンライバーズ》始めまーす!」
:来ちゃ!
:待ってたぜ。
:今日はゲストがいるんだっけ?
:事前告知だとそうらしいね。
「ふふふ、気になりますか? 気になりますよね!?」
:煽るじゃんかよ。誰だ?
:すげーニコニコ笑顔だけど有名Dtuberとか?
:いや、関係ないな。
:こいつはそういうタイプのDtuberじゃねえから。
:知名度とかマジで屁にも思ってねえ。冒険者の才能、あとは自分のセンスが全てだ。
:というか知名度ならこいつが殿堂入りすぎて誰呼んでも大体誤差。
「では早速ゲストをご紹介します。この前のAランク迷宮配信で偶然お会いした才能豊かな冒険者さんです。どうぞ!」
:偶然? ……え、偶然? Aランク迷宮で偶然???
:ごめん。登場前から既に半笑いしてる。
:話の流れ的にもしかしてあの救難ミッションの依頼主?
:確信した。絶対キャラが濃い。
「れ、れんれんと申します。皆様、どうぞよろしくお願い申し上げます」
:れんれんちゃん!
:意外! それは美少女! 声しか聞こえねぇけど!
:声が可愛い。
:しっとりと落ち着いててなのに甘く耳に入ってくる。
:あ”あ”~、脳が蕩けるスイートボイスなんじゃ~。
:ASRMとか興味ありませんか(迫真)
「なおご本人の希望により偽名で顔出しNGとなっております!」
:先に言えや。
:声だけでもわかる。美少女で間違いない。
:どんなネタキャラかと思えば清楚系美少女とか意外。
「い、いえ。私は美少女などでは……本当に違うのです!」
:この慌てぶり。配信に慣れてないのが丸わかりだな。
:また素人引っ張ってきやがった。
:同業者より素人とのコラボが多いってマジ?
「だって才能がありそうな人がたまたま素人だったんですもん」
:もんじゃないよこのショタボーイ。
:拗ねてる口調が似合ってるのが微妙に腹立つ。
:目を付けた逸材にホイホイ声かけてガンガン支援してドンドン冒険者沼に落とす悪魔。
:パーティメンバーが欲しいからってたまにドン引くくらい貢ぐよね怖い(真顔)
「何故流れるように僕へクレームが投げつけられるのか……おかしい、ここは僕のチャンネルですよね?」
:だからじゃないですかね(名推理)
:当たり前なんだよなぁ。
:あなたの
「ダメだこのライバーズ。血も涙もない」
「げ、元気をお出しください大和様。ファイトです!」
:肩を落として見え見えの落ち込みを本気で励ますれんれんちゃん優しい。
:天使かよ。
:可愛いは外見じゃねえ。声と中身だ。
:声を譲らないあたりにこだわりを感じる。
:声フェチニキ顕現。
「うーん、優しい。そんなれんれんさんのためにプレゼントフォーユー!」
「は、はい。お話に聞いていたアレですね!」
「じゃーん。顔隠しのベールです。これで顔出し事故は防げますね!」
:ただのフェイスベールじゃんかよ。
:布切れ一枚で顔出し事故防止とか舐めてんのか。
:アナライズ持ちの冒険者なら動画越しでもフェイスベール程度貫通できるからな〜。
:ふむ? ベールの上にうっすら飾り織りが見えるな。……なんか魔力篭ってない?
:風向き変わったな。
:冷静に考えろ。こいつがただのフェイスベール持ってくるはずがないだろ。
:そう言われると確かに。
「勘がいいですね! 蛇狐君に頼み込んで作ってもらった特別製のマジックアイテムです。このフェイスベールを貫通してれんれんさんの顔を覗くのはみそPでもなければ厳しいと思います」
:足切り基準みそPとか性能がガチすぎる……。
:たかだか配信でそこまでやるか……。
:多分顔出しどころかアナライズでデータ抜かれるのもシャットアウトするのでは?
:そうだよ@みそP
:え、なにそれ怖っ! 性能じゃなくてクソ高アイテムを躊躇なく貢ぐ大和君が怖い!?
「? お金でゲストを呼べるなら迷わず出すべきでは? お金は使うためにあるんですよ?」
:うーんこの配信フリーク。
:金のための配信ではなく配信のために金を使う数寄者の極み。
:全力で趣味に生きてやがる。ある意味憧れるわ。
:あ、画面から消えた。
:フェイスベールを手渡したのかな?
「しょ、少々お待ちを。身繕いの時間を賜りたく」
「大丈夫ですよ。ライバーズは待たせておくので」
:顔見てぇ~。
:大和君からのライバーズの扱い、雑……。
:逆方向からも雑だから鏡みたいなもん。
:まあまあ時間がかかってるな。
「や、大和様……」
「準備は大丈夫ですか? では改めてドローンの前へどうぞ」
「……はい。あの、本当に大丈夫なの、ですよね? 大和様を疑う訳ではないのですが」
「大丈夫です、僕を信じて!」
「大和様……はい、信じます!」
:いや、たった一言で信じちゃダメだろ。
:チョロそう。
:悪い男に騙されそう。
:この子一人にしちゃダメなタイプでは?
:お前マジでちゃんと面倒見ろよ黒鉄。
「……すぅ、はぁ。え、えいっ!」
:かけ声も可愛い。
:可愛いの化身かよ。
:むっ!
:ぬっ!
:なんと!
「ど、どうでしょうか皆様? おかしなところは……ありますよねすみません! 大和様、やはり私にはこのような――」
「ステイステイ。落ち着いてください」
:顔は見えない……見えない、が!
:可愛い!
:可愛い!
:可愛い!
「ほら、ライバーズからも好評みたいですよ」
「……え?」
:均整の取れたスレンダーなスタイル! 黒のミニスカ学生服! 黒髪ロングツインテール!
:お洒落に被った制帽! 革の編み上げブーツに黒の手袋。ほのかに薫る大正ロマン女学生っぽい雰囲気がグッド!
:顔を隠す桜色のフェイスベールもアクセントとしてみればいい感じ! 隠されてるのが却って気になる!
:髪の艶も凄いし小物の趣味もいい。これはモテる(確信)
:いい趣味してますねぇ!
:大和君に合わせたのか? お揃いだし似合ってる。
「あ、フェイスベール以外の装備はれんれんさんの自前です」
「は、はい。大和様とのペアルックなど……その、恐れ多くて」
:あ”あ”~、奥ゆかしい大和撫子最高なんじゃ~。
:これは逸材。相変わらず目の付け所がいいわ。
:しかし装備が学生服ってことは迷専生か?
:迷宮高等専門学校。うちの甥っ子も通ってるが、全国に幾つもあるし流石に分かんねえなー。
「おっと、それ以上素性の詮索はNGですよ」
:いかんいかん、つい。
:まあ正直学生服=迷専生とは限らんし詮索は無駄と思う。
:そもそも学生服タイプの装備ってかなり世間に流通してるし。
:大和君に憧れた若いフォロワーが結構着てるからな。
:実際性能も優秀だしなー。オモイカネ工業が大和君の装備データをフィードバックした廉価版だけはあるわ。
:改造なしで物理耐性ありは優秀すぎだろ。
:最早学生服というより軍服に近いイメージ。見た目と機能性を両立したところも。
「まあ装備の話は置いておいて」
:相変わらず自分が話題になった時の顔が”無”だわ。
:世界で一番有名な黒鉄大和の話題に世界で一番興味のない奴。
:ダンジョン配信に全てを捧げ続けるショタ。
「そんなことよりれんれんさんのステータス知りたくないですか?」
:知りたい!
:知りたい!
:知りたい!
:はよデータ出すんだよおらっ!
:え、無料で推定美少女の個人情報を教えてくれるんですか!?
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