第二話 文明崩壊ダンジョンライバーズ②
:このおバカ@みそP
:来た、みそP来た! これで勝つる!
:俺らのライバーズチャンネル公式管理人にしておバカ専属プロデューサー!
:そして自称姉。大和君は否定している。
:今日のおバカ頂きましたッ!
「みそP、なんとかして!」
:身も蓋もないヘルプコール。これは追い詰められてますねぇ。
:ダンジョン攻略でも見ないくらいガチで焦った顔と声じゃん。
:所詮弟なぞ姉がいなければ何もできない存在よ@みそP
「クッ、実際頼ってる分言い返せない……!」
:悔しそうにしてる。
:うーんこのジャイアニズムシスター (自称)。大和君も大変だわ。
:よっしゃ、今発狂コメントが大半消えた。みそPが条件絞ってコメント弾いたな。
:あのね大和くん。古参勢はネタ発言と分かるけどそうじゃない奴らには心臓に悪いんだよ!
:マジでお前の存在が日本の国防を左右するんだからな? ちったぁ自重しろ!
「おぅ……ごめんなさい」
:私は?@みそP
:みそP凄い! 偉い! いやほんと苦労をかけます。
:大和様とみそP様は2人で1人までありますからね!
:引き篭もりとネット弁慶と顔出ししないことと家事と家計管理以外は完璧な女。
:完璧か、それ……?
:大和君が不足分を補ってるからセーフ。少なくとも大和君に付いていけるのみそPだけだぞ。
:なお迷宮には付いていかない模様。
:引き篭もりを極めた果てに自宅からダンジョン攻略を含む完全な
:お前は何を言っているんだ(真顔)
「久々にやらかしたなぁ。ありがと、みそP」
:頭を搔いて反省の図。冷や汗流れてるあたり割とガチ目にうっかりだったんだなって。
:報酬に岩戸屋の醍醐味プリンを頂こう@みそP
:わぁ (戦慄)。迷宮産の食材使ったガチ目にお高い奴じゃん。最近皇室からもご用命頂いているって話。
:というか稀少性が高すぎて予約が1年待ちな方が問題では?
:とんでもない無茶ぶり。可愛いおねだりに見せかけてえげつなくない?
「OK! 予約するから1年待っててね!」
:普通に了承してからの「待て」とはたまげたなぁ。
:めっちゃいい笑顔やぞ。悪魔か。
:いやまあ予約に横入りしないのは好感もてるけどさwww
:多分やろうと思えば『やれる』からな。
:でもそれやったらダメだろって自然と自制するあたりほんといい子なんだよ。
:丁度プリンの気分だったからリクエストしたのに。これは許されない@みそP
:自制してない奴がいたわ。
:いい話してたのに……。
「あれカロリー高いから太るよ? ただでさえ普段から甘いものばっかり食べてるのに」
:くwwwそwwwわwwwろwww
:小首を傾げて真顔で言ってるのが笑う。多分純粋な善意なんやろなって。
:みそP様にだけタメ口の大和様、尊くないですか?
:みそPからの好感度を錬金して視聴者の好感度を稼いでやがる。
:黒鉄大和は錬金術の使い手だった……?
:マジで許さねぇ@みそP
:ごめん。笑うわ。
:和気藹々してるところ悪いけどよろしい、お二人さん?
:そろそろコメント欄の連中構ってやれーや。多分今頃画面の前で発狂したままやで。
「おっと、失礼しました。皆さん、今の発言は冗談です。僕自身のスタンスは何も変わっていませんので」
:これよりコメント欄の制限を解除@みそP
:ただし配信の進行に差し支えると判断したらキックします@みそP
:お、解除来たか。
:ほんと? ほんとに冗談? ほんとのほんとのほんとにほんと?
:頼む。今みたいのは止めてくれ。吐きそうになった。
:古参勢の冗談判定が流れなければ即死だったな。
:リアルで「え、嘘……」って声が出た。今も心臓バクバクしてる。
:冗談って分かってるのに目の前が真っ暗になった。お願いだから勘弁して。
:大和君が日本見捨てたら死にます。希望が消えたので。
:俺も。
:私も。
:分かっちゃいけないけど分かる。
:流石に死なないけど確実に景気がどん底ダイブするので首くくることになるかも。
「おぅ。えー……………………あ、はい」
:クソつよモンスターが相手でもビビらない大和氏がビビッておられるぞ!
:視線を散々泳がせた挙句に言葉が出なくて真顔で頷いたあたり本気で冗談のつもりだったんだろうなって。
:メンヘラっぽいコメントまである……。
:わ、わぁ……(恐怖)。
:SNSで早速#日本終了のお知らせ と#外国大歓喜 がトレンドに上がってる。切り抜きも。
:はえーよ。いやほんとはえーよ。
「みそP、SNSの方もなんとかしといて」
:また無茶ぶりを……@みそP
:サラッとみそPに無茶ぶりする大和君も常識人に見えて大概アレ。
:発狂は収まったけどコメント欄が完全にお通夜ムードになってるぅ。
:死 屍 累 々
:屍山血河でも可。いや、うん、怖いな(小並感)
:まあ九州大迷災でトラウマ捻じ込まれた日本国民は少なくないからな。
:そういう人って大体大和君のフォロワーらしい。見てると安心できるとかなんとか。
:精神安定剤黒鉄大和概念……?
「というか経済云々ってなに……?」
:大和君の存在が海外からの投資を呼んでるのはまあ事実。
:海外の富裕層が移住を希望する国ランキング、日本がダントツよ?
:安全という何にも代えがたい価値が日本にはある。
:なおそれを担保するのが個人という迷宮時代のバグ。
:そんな大物があんなこと言えばこんなことになるわな。
:これは有罪。反省して。
「むむ……これは言い返せない。すみません、迂闊な発言でご心配をおかけしました」
:キチンと頭を下げて謝って偉い。いや偉いというか苦労してんな。
:さっきからポツポツ発狂コメントが映り込んでは消えてる……。
:キックされるって警告されたろうに。
:ライバーズのみんなとプロレスも迂闊にできねぇって怖い。
:マジのヒーローって大変なんだなって。
:仮面ヒーローも演者は清廉潔白を心掛けてるって言うけどちょっとこう……ベクトルの方向性と重さが違う。
「慣れれば意外となんとかなりますよ? 今日はちょっとやらかしちゃいましたけど。ここは素直に反省ですねー」
:笑顔でそう言っちゃうあたり根っからヒーロー気質。
:やってることもマジのヒーローだから。
:Aランク迷宮のモンスターの間引きとかやれるの大和君とか自衛隊くらいだしな。
:一人ボランティアを続けながら笑顔でダンジョン配信も続ける鉄の男 (と書いてショタと読む)
:ボランティアってか義勇軍では。語源的にも。
:そして義勇軍と書いてワンマンアーミーと呼ぶ。なおショタだ。
:全く誇張じゃないのが最高に草。世界狂ってんな。
「そこです」
:ビシッとキメ顔で指さすこのショタ相変わらず顔がいいな。
:どこだよ?
:え、ショタがどうしたって?(難聴)
「言ってませんが? 僕もいい加減パーティメンバー増やしたいんですよね。いつまでもみそPとの2人パーティじゃAランク迷宮攻略なんて夢のまた夢なので」
:ゴミを見る目で見られた……もっと見て?
:ド変態自重しろ。
:君、あれだけBランク迷宮を潰しておいてまだ満足してないの?(震え声)
:あの……。あの、Bランクは世界でも一握りのトップ冒険者だけが攻略に成功してる鬼畜難易度なんですが。
:実質地獄行って閻魔大王ぶん殴って来いと言われるのと変わらない程度の難易度。
:お願いだから神話英雄呼んできて。
:Aランクに至っては大和君でさえ50階層超えたあたりで手に負えなくなって撤退してるからな……。
:現状は自衛隊が定期的にモンスターを間引きして《
「ええ、はい。だからいい加減仲間集めて終わらないマラソンを終わらせようかなって。という訳で皆さんどうですか? 大丈夫、慣れれば慣れますよ?」
:無 茶 を 言 う な !
:笑顔でおいでおいでしながら地獄に誘うショタという恐怖体験。
:このショタ、自分ができるからって人類の限界を見誤ってる説あるからな。
:基本おめーは例外なんだよ!
:「もう全部あいつ一人でいいんじゃないかな」をリアルでやっといて何を言ってんだ。
「えー、全然そんなことはないですよ? 世界を救うのはいつだって愛と勇気と数の力ですからね!
:お、おう……。
:重てぇ……。ニコニコ笑顔なのにめっちゃ重てぇ……。
:夢見がちなんだかリアリストなんだか分からんけど本気で言ってることだけは分かる。
:ガチの人類最強が『たかが』と言い切るかぁ……。
:君、ほんとに17歳……?(震え声)
「僕のパーティ云々は一旦置いてもっと強い冒険者が増えてほしいです。根本的に全国のダンジョンを潰す人手が足りないんですよねー。文明崩壊からの人類滅亡コンボ決めたくなきゃライバーズのみんな頑張って。冒険者でしょ?」
:それはそれとして笑顔で無茶ぶりが過ぎる。
:確かにライバーズは冒険者の比率高いけどよぉー、一般人も山ほどいること忘れんなよ?
:正直ダンジョン潰すのも楽じゃねえからなぁ~(現役冒険者並感)
:攻略までいける時点で割と上澄み寄りよ。
:上層で間引きするだけで精一杯ななんちゃって冒険者も少なくないからな~。
:しゃーあんめぇ。地方過疎地の一般人が《
「地方の冒険者不足は割と洒落にならない社会問題ですよねー」
:大和君、なんとかして?
「お任せをっ。そのための《文明崩壊ダンジョンライバーズ》です!」
:うおっ。急に生き生きし始めたぞ。
:目が輝いてる。
:これは獲物を見つけた虎の眼ですわ。
:新たな冒険者候補を見つけてウキウキしてんな。
「そもそもこのチャンネルは『迷宮時代を生き抜くために冒険者になろう!』というハウツー系コンテンツなんですよね」
:ライバーズの由来もそこからだしな。
:このクソッタレな迷宮時代を生き抜くために冒険者になるのは最早マストよ。
:人類総冒険者時代。
:故に我ら、
「そう、なので僕の過去動画には冒険者として成長するノウハウが詰まっているのです! 大丈夫、キチンと知識を入れてガッツと装備と慎重さをもって臨めばLv.10くらいまでなら誰にでも――」
:いや、そういうのじゃなくて大和君に直接助けて欲しいなって。
:他力本願寺止めろ。
:こいつにンなこと言っても回答は一つしかないゾ。
「え。僕が助けるとか無理ですけど?」
:バッサリw
:すげえスンって顔してるw
:知ってた。
:親の顔より見た光景。
:もうちょっと親の顔見てやれよ。
:もう親の顔見れねえんだよ。
:あっ(察し)
:ちょくちょく闇が噴き出すチャンネルやなー……。
「日本全国なんて物理的に手が回りませんし。Aランク迷宮の間引きもあるし。非営利でノウハウをバラまいてるんであとは国と当事者の自助努力にお任せかなって。これはチャンネルの当初から繰り返し伝えている方針なので悪しからず」
:うーんこの。
:まさに正論。
:いくら最強でもなんでもかんでもはやれんよ。
:でも冒険者を増やすのに積極的なの大和君がボッチパーティ脱却したいからだよね。
「的確に人が嫌がる台詞でチクチク突くの止めません? 否定はしませんけど」
:図星突かれてすげえ嫌そうな顔w
:ん? ちょい待ち。どういうこと?
:俺もよく意味が掴めなかったんだが。
「だって冒険者が増えればそれだけ僕のパーティーメンバーができる確率も上がるじゃないですか」
:なに真顔で寝言吐いてんだ起きろ。
:確かに母数が増えればその分上澄みも増えるけどさwww
:パーティーメンバー増やすために業界そのものへプロジェクト・ヒカルゲンジを仕掛けたってマジ?
:ブレねえなこのショタ。
:正気じゃねえ。
「そういう意味じゃ冒険者の母数は順調に増えてるらしいんですが、どうも高レベルが中々増えないんですよねー」
:Lv.10で凡人の壁。Lv.20で才能の壁。Lv.30で人間の壁とはよく言ったもんだ。
:なお目の前のショタ、
:きが くるっとる(白目)
「ガッツがあれば普通の人でも割といいところまではいけますよ?」
:ならねーよ!
:ここに来て精神論かい!?
:無茶を言いおるわ。
「高レベルになるほど下手な才能より手足飛ばされても戦えるガッツの方が大事になってきますからね~。スペックはある程度装備で底上げできますし」
:腕組んでしみじみ呟いてるところ悪いがちょっと何を言ってるかよく分からないですね(真顔)
:ごめん。手足がなんだって???
:聞いて驚け。高レベルの回復魔法はな、失った手足が生える。
:それどころか死んだ直後くらいなら蘇生する。
:尤もLv.30以上の話であるが。
「どこかにガッツと向上心があって才能豊かで僕より背丈低い人いませんかねー。あ、最後のはギリギリ妥協してもいいです……チラッ」
:最後の1個いる???
:背丈じゃなくて器が小さい……。
:こっち見んな(こっち見んな)
:お求めの品はただいま品切れ中でございます。入荷をお待ちください(迫真)
:ママ―、何アレ。シッ、目を合わせちゃいけません!
:未来ある若者に忠告する、止めとけ(迫真)
:ガチ殺し合いでノースタント・ノーリトライのアクション連発を期待される地獄に行きたい奴おる?
:これな。
:人類にはちょっとばかりハードルが高すぎる。
「……うーむ。本当に反応が鈍い。昔が良かったとは口が裂けても言いませんけど最近のライバーズはちょっと目のギラつきやハングリー精神が足りてなくないですか?」
:お前のお陰だゾ。感謝してるゾ。
:あなたの
:ヌクれる環境が出来たらヌクりにかかる日本人の宿痾だからね。仕方ないネ!
「仕方ないので次回以降の課題に回すとして今日のところは勘弁してあげましょう。それじゃ今日の雑談配信を終了しまーす!」
:まだ諦めてないのか。
:人手が必要なのは事実だからなぁ。
:でも一個言わせて? 個人が産業育成しようとしてある程度成功している現状がバグなんですよね。普通はもっと時間がかかるもんなんですよ。
「という訳で今日はここまで~。これまでの配信でお伝えした有料級の無料情報は概要欄にリンクを張ってるのでよかったら見てくださいね~」
:ガチで有料級の攻略情報を惜しげもなく晒してるから困る(困らない)
:国が出す攻略情報より速いし量もある。
:たまにある抜け漏れ誤りは自衛隊の方で検証して埋めてくれるし。
:速度と量の冒険者Wiki、質と確実性の自衛隊。
:互角っぽく書いてるけど実質自衛隊は大和君の後追いじゃん。
:17歳ショタに勝てない検証ガチ勢のこと自衛隊って言うの止めろよ! 可哀そうだろ!
:お前は死体蹴りやめろよ。
「それじゃ今度こそおつダンジョン~。次の配信はAランク迷宮の間引きクエストの予定なので楽しみに!」
:おつダン〜。
:おつダン〜。
:おつダン〜。
:ニコニコ笑顔でバイバイするショタ。これだけ見れば可愛い男の娘なのに。
:笑顔で修羅の巷に踏み込む以外欠点のないショタ。
:その一点が問題じゃないですかね?
:画面が消えた。今度こそいったか。
:相変わらず嵐を呼ぶショタであった……。
:ところでさぁ、概要欄で一個だけ説明も何もない《サバイバーズ・ギルド》ってなんなん? リンクからとんでも年号と入力欄しか表示されないんだけど。
◆
”あなた”はそのコメントを最後にこれまで配信視聴のために開いていたパソコンを落とす。
次いで立ち上げた専用PC――専用回線と独自の暗号技術で堅牢なセキュリティが確保された特別製――の画面で一つのアプリを立ち上げた。
そのアプリの名は――《サバイバーズ・ギルド》。
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