調べ

「ぼく、もう、覚えた!」

 勢い良く身震いすると雪が落ち、白猫だった黒い仔猫はもとの黒猫に戻りました。「ねぇねぇ、歌うたいの猫さん、ぼくのオルゴールの歌、聞いてくれる?」


「うん。いいよ」


 歌うたいの猫がうなずくと、黒い仔猫は覚えたばかりの調べに乗せて、地上で大好きだった沢山たくさんのものを順番に歌いました。もちろん、おうちの人たちの名前は真っ先にうたいました。


「次は、あたし」


 黒い仔猫がうたい終わると、白い仔猫がうたい始めました。白い仔猫は、楽しかったこと嬉しかったことを次々に歌詞にしました。


 仔猫たちの歌を聞いているうちに、歌うたいの猫の目から涙がひとすじこぼれました。

 白い仔猫はびっくりして歌うのをやめました。


 歌うたいの猫は慌てて目をこすりました。

「あっ、ごめん。雪が目に入っちゃっただけだよ。続けてうたってよ」


 ふたりは顔を見合わせてから、白い仔猫が言いました。


「あたしのお歌は、ちょうど終わるとこだったから。ねぇ、今度は歌うたいの猫さんのオルゴールのお歌、聞かせてほしい」

「ぼくも聞きたいよ、歌うたいの猫さん」


 歌うたいの猫は泣き出しそうになりましたが、どうにかこらえました。そして、時計塔のてっぺんから降りてきたときから、気になっていたことをふたりにたずねました。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る