銀の鈴

 そろそろ、船着き場に朝一番の舟が到着する時刻です。


「どうしよう――」 


 猫は狼狽うろたえながら、とにかく鐘を元の姿に戻そうと必死で星屑を集めました。だけど、いくら集めても星屑は星屑のまま。砕け散った鐘が元どおりになるはずはありません。

 焦った猫は居ても立っても居られなくなり、集めた星屑の真ん中で声をかぎりに歌い始めました。鐘が鳴らないのなら、せめて、ぼくが歌って、船の到着の時間を知らせようと思ったのです。


 でも、いくら力のかぎりに歌っても、街じゅうに届くはずはありません。それは、猫にもわかっていました。だけど、何もしないよりはずっとましだと思ったのです。


 猫の歌に合わせ、猫が首から下げた銀の鈴も、澄み渡った音で鳴り出しました。銀の鈴が鳴ると、猫の足元に散らばる星屑たちが輝きはじめます。


 猫はそれにも気づかず、一心不乱に歌い続けました。


 光を取り戻した星屑たちは流星のように飛び立ち、歌い続ける猫の周りをキラキラと回りました。

 そして、星屑たちは猫を乗せたブランコになって、時計塔のてっぺんまで上がって行きました。



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