雉白もようの猫

 あるとき、ひとりの猫が虹の橋にやってきました。

 この雉白きじしろもようの猫はとても歌が好きで、地上からの舟旅の間に渡し守のうたう歌をみんな覚えてしまいました。




 雉白もようの猫にとって、虹の橋での生活は穏やかでとても楽しいものでした。友だちも仲間もできました。


 でも猫は時々、地上がたまらなく恋しくなるのです。そういうときは門のところの時計塔まで来て、船着場を見下ろしながらうたいました。猫のうたう歌は渡し守の歌だったり、地上のおかあさんが猫のために作ってくれた歌だったりしました。


 雉白もようの猫がうたっているとき、街の住民たちが時計塔のそばを通りかかるとしばし立ち止まり、猫の美しい歌声にうっとりと聞き惚れるのでした。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る