第3話〜魔女になった少女
ここは森の中。
かつて本を読むのが好きな少女がいました。
が、過去の過ちに耐え切れず、少女は森の奥に住み、いつしか魔女になっていました。
魔女は自分の部屋の窓から森の様子を眺めてはため息をつきます。
視界には森の住民が楽しそうにおしゃべりをしたり…幸せそうな光景が見えます。
「あの時過ちを犯していなければ…ずぅっと私は森に居られたのかもしれない…」
そうは思えど、自らを森の奥に幽閉してしまったのだから仕方ない、とため息を一つ。
トントントン。 魔女の部屋の扉をノックする音がします。
「あぁ…あなたでしょ? 入ってくださいな」
そう言っても扉を開けずに待っている…いつもそうだ、と思いながら扉を開けます。
青い髪の青年がそこには立っていました。
森へ戻らず一人で暮らす魔女になったのをずっと悔やむ彼は、いつも魔女になったかつての少女のもとを訪ね、陰で支えて居たのです。
「森のみんなは元気そう?」
「ああ、みんなは元気だよ。
だから、早く戻っておいで」
そういってもかつての少女は首を横に振る一方で。
こうなると頑固な彼女のことだから聞いてはくれないだろうな、と苦笑いします。
それを見て提案をしました。
「なら…俺が君に新しい名前をあげる。 もし戻りたくなったらその名前を使うといいよ」
そう言うと、素敵な名前を授けてくれました。
「また来るよ。 …いや、君が森へ帰ってきてくれる方が俺は嬉しいんだけどね?」
そう言い、また青年は森へと帰っていきます。
「………」
部屋の中にまた1人になり、ぼうっとした頭で何かを考えはじめます。
またあの森へ戻ること、戻るのが怖いなら…と名をもらったこと。
そう。 彼女の誕生石である宝石の異国での呼び名から『ザクロ』という名をもらいました。
少しだけ勇気が出て、本棚へと向かいます。
彼女が火にくべなかった本の中に、その果実が好きな鬼が出てくる話があります。
鬼は子供を食べるので神様が血肉に似た味のザクロを食べなさいといい、改心した鬼は罪を償う。 そんな話でした。
「まるで私みたいね」
そう言い、決心をします。
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