第2話〜楽しい森での生活、そして…

 少女は自分の住処を見つけ、しばらく森にすむことにしました。

 その間、森の住民の絵を描いてみんなに見せて回ったり。


 住民の事を題材にしたお話を書いてはお話を始めました。


 人数は少ないものの少女のお話を楽しんで聴く人。


 描きかけの絵を喜ぶ人までいました。

『ここは素敵な森だなあ、ずぅっとここに住み続けたいなあ』

 そう思いながら月に向かっておやすみなさいを言いました。


 ある日のことです。 少女は素敵な宝箱を見つけました。 開けてみると素敵なものがたくさん入っています。


「わあ。 素敵な花束! これは何かしら?」


 それらを持つと花束は舞い散ったかと思うと姿を消し、花火が上がったかと思えばすぐに消える。
 そんな不思議なものでした。


「また素敵なものを見たなあ」
 そう思いながら住処へと戻りました。

 少女が目を覚めると、森が騒がしくなっていました。


 いつもの活気とは違い、なぜかみんな慌てたり真っ青な顔、そして中にはたいそう怒っている人がいました。


「どうしたのですか? みなさん」
「あぁいいところに来た。 ここの宝箱を開けて、みんなで使う宝物を誰かが一人で使ってしまったんだ。
 この宝たちは、この森でいいと思う人に渡す花束や、一番の人に打ち上げる花火なんだ。
 全く誰が使ってしまったんだろうね」



 それを聞いた少女は愕然とします。

 『あの素敵なものはみんなの宝物で。あぁ、私がやってしまったことでみんなに迷惑をかけたんだ』

 泣きながら住処へ戻ります。

 その後、少女が宝箱を開け、一人で使ったことがわかると、怒号や罵声を浴びせる人や。


 中には少女の様子を見に来る人もいました。

「もうこの森に居続けることはできない」


 そう思った少女は泣きながら森を去る事を決めました。
 

 大切にしていた本を燃やし、書いていたお話も、スケッチブックまで火にくべます。


「最後だから、せめて仲良くしてくれた人にお礼を言おう」


 せっせと手紙を書き、配達してくれる青い鳥にそれらを持たせます。


 ことの経緯と、去る事、でもみんなと知り合えてうれしかったこと。


 たくさんあった便せんはたった一枚を残し、ほぼ使い切りました。

 するとどうでしょう。

 青い鳥は今まで見たこともない量のお手紙を持ってきました。


 そこにはいつぞや歌をほめた男性や、リボンの少女、うさぎの耳をつけた女性、そして今まで仲良くしてきた人からでした。


「君が歌をほめてくれたのが嬉しかった」「私とまた遊んでね」「またお話を聞いてくれるのを楽しみにしてるよ!」


 すべての手紙を読み終えた少女は、住処の前に最後に残った便せんでこう書き、森の掲示板に貼ることにしました。

「私が宝箱をあけ、勝手に使ったことは、とてもいけない事です。


 もしみんながそれを許してくれるなら、また森の一人として仲良くしたいです」

 それを見た森の人々はいろいろな考えを胸に秘め、そっと掲示板を後にします。


 
 少女のしたことは罪深いので、人によってはうわさ話を陰でいう人や、少女に直接言わずに騒ぎ立てる人もいるでしょう。


 けれども、大体の人は少女を温かく見守ることでしょう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る