第7話 朱色


真っ赤な太陽が沈む。

海に溶け込んでいく。

ここはその景色がだけがウリの場所だった。

それ以外、特徴が無かった。


時折遠くの方から、写真家たちがやって来ては、夕日の沈みゆくさまを写真に収めた。

その為だけに、何日も留まる人もいた。

地元の人は、何がそんなに珍しいものか?と頭を傾げたけれど、やってくる人たちは一様に口を揃えて、


「本当に素晴らしい景色ですね」


と褒め称えた。


天候は左右できないから、時々雨が降って目当てのものが見られない時もある。

時々曇って、太陽がぼやけた光を出す時もある。

そういう時は、写真家は肩を落とした。


「今日はダメか」

「折角来たんだけどな」

「長居は出来ないから残念だ」


だからこそ、最高の一枚が撮れる日は、皆笑顔になる。


「この瞬間を待っていたんだよ!」

「やっぱり素晴らしい」

「幻想的だ」


そう言っては、パシャパシャとシャッター音が鳴り響く。


太陽と海のおかげで、地元の旅館は潤った。

地元の漁師も潤った。

何も言わなくても、好きな人は訪れる。

何もしないからこそ、穴場スポットだと人々は囃し立てる。


そうやってまた今日も、一人二人誰かが訪れる。


景色に癒されに。



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