第15話「決戦前夜、それぞれの想い」

神楽木から『セイバーアクセラレーター』を託され大我達はこの日は解散。

大会は中止となった為、それぞれのエリアに戻る。


大我も仲間達の元に帰ってきた。

「ただいま……」

「大我!良かった無事で……」

愛が駆け寄って来た。

「愛姉……心配掛けたな……皆は?」

「貴明と光はフラワー園に行ってる。園長に呼び出されたのよ」

「フラワー園?」

「ねぇ、久しぶりに行ってみる?」

「え?……まぁ……行ってみるか」


大我と愛はフラワー園に向かう事に。


フラワー園とはゼロクライシスにより孤児となった大我達が育った施設だ。


フラワー園ーー


「うわ〜久しぶり〜」

「変わってないな……」

「おや、久しぶりね……大我、愛」

そこに現れたのはこのフラワー園の園長、花田友子はなだともこ(56才)

大我達の親代りの人物だ。


「園長、久しぶり〜。貴明達は?」

「今、裏庭の手入れをして貰ってるよ。さぁ、中に入りなさい」

「はい」


そして中に通されると貴明と光も合流した。

「おっ、大我達も来たのか」

「大我のアニキ!無事で良かった〜」

「貴明、光、心配掛けたな」

「さぁ、お茶が入ったよ」

5人は談笑する。

大我達がこのフラワー園に居た頃の思い出話で盛り上がる。


「所であんた達……ゾンバット退治はまだやってるのかい?」

「え?ああ……それが……今度ゾンバットとの決着を着ける大きな戦いになりそうなんだ……」

「そうかい……ゼロクライシスが起きてからゾンバットが現れる様になって……今まで必死に生きて来たけど……いよいよなんだね……」

「って、大我!なんだよその話……聞いてねぇぞ?」

「すまない……さっき決まったんだ……俺と西エリアの竜一……南エリアの悟でゾンバットとの決戦に行く……」

「増見は?増見陽介はどうなるんだ?」

「奴はゾンバットに支配されている……アイツを元に戻せれば心強いんだが……」

「じゃあ……もしもの時は……?」

「……倒すしかない……」

「そうか……」

深刻な事態に表情が暗くなる一同……。


「ほらあんた達!しっかりしな!」

「園長?」

「いいかい?何があったか知らないけど、あんた達は子ども達の希望なんだよ?あんた達が戦ってくれるから子ども達は無事に生きてこれたんだよ?あんた達が子ども達の未来を守ってくれなきゃ許さないよ!」

「園長……そりゃ分かるけどさ……」

「いや、園長の言う通りだ。俺達は子ども達の……皆の未来を守る為に戦わなくてはならない……」

「大我……」


その頃、西エリアの竜一は……。

装備の手入れをしていた。

「兄さん……」

そこに理沙がやって来た。

「ん?理沙か……どうした?」

「本当に行くの?ゾンバットとの戦い……」

「当然だろ?俺は今までこの西エリアを守る為にゾンバットと戦って来たんだ。そのゾンバットと決着を着けるチャンスなんだ……」

「うん……分かってる……分かってるけど……」

「心配すんな!俺は絶対に勝つ!」

そう言って竜一は理沙の頭をガシっと力強く撫でる。

「ちょっ!?やめてよ兄さん!」

「え?ああ……わりぃわりぃ……」


そして南エリアの悟は……。


「悟兄ちゃーん!」

多くの子ども達が悟の元に集まる。

「おう!お前らいい子にしてたか?」

「うん!兄ちゃんの試合見てたよ!途中で邪魔が入って残念だったね……でも兄ちゃんカッコ良かった!」

「ありがとよ!」

悟は男の子の頭を撫でる。


フラワー園では大我と貴明は子ども達の遊び相手。

愛と光は園長を手伝って夕飯の準備をしていた。

「愛〜あんた手際が良くなったね」

「エヘヘッ」

「光!あんたはジャガイモ剥くのにどんだけ時間掛かってるんだい!」

「え〜……だって皮が〜」

「あーあ……皮って……こんなに身を削っちゃ食べる所なくなっちゃうよ」


その頃、神楽木透真は……。

「フフフッ……奴らそろそろ仕掛けて来る頃だな……だがその前に前哨戦と行こうか……」

神楽木はタランチュラゾンバットを呼び出した。

「フフッ……行け」

タランチュラゾンバットは何処かへ出撃。

そこに陽介が……。

「何だ?今の奴は?」

「ん?ああ……ゾンバットの進化体を更に強化した上級ゾンバットさ……より凶暴な生物の遺伝子を組み込んである……まぁ……まだ実験段階だけどね……」

「ほぉ〜……」


フラワー園では夕飯のカレーが完成。

「うわ〜美味しそう!」

子ども達は大喜び。

「カレーなんて久しぶりだな」

「そういえばこの所食べてなかったな……」

「今日は愛が手伝ってくれたからきっと美味しいよ」

「因みに俺も手伝ったよ〜」

「あんたは殆ど邪魔してただけでしょ」

「え〜そんな〜」

「アハハッ……さぁ食べようか」


フラワー園の皆がカレーを食べ始める。

だがそこに……。

突然食堂のガラスが割られる。

「きゃっ!?」

割れたガラスの前に居た少女杏奈が怪我をする。

「杏奈ちゃん大丈夫?」

愛が駆け寄る。

「痛いよ……痛いよ〜」

「誰だいこんなイタズラをするのは!!」

大我が窓の外を見ると……。

そこに居たのはタランチュラゾンバット……。

「ゾンバット!?」

「ええ?」

「皆はここに居ろ!」

大我は外に飛び出す。


「ゾンバット……貴様の仕業か……」

「ああ……出てきたなダークウルフ……」

「何っ!?ゾンバットが……喋った!?」

「フフフッ……俺は上級ゾンバット……そんじょそこらのゾンバットとは違う……」

「厄介な相手になりそうだな……」

大我は『変身』

ダークウルフが登場し構える。

タランチュラゾンバットがダークウルフに襲い掛かる。

「ぐっ……コイツ……流石に並のゾンバットとは違う……スピードもパワーも桁違いだ……」

タランチュラゾンバットに苦戦するダークウルフ。


「くっ……こうなったら……」

ダークウルフは『シューティングフォーム』にチェンジしようとするが……。

タランチュラゾンバットは口から糸を吐きダークウルフの右腕を拘束。

変身の邪魔をする。

「何っ!?」

更にタランチュラゾンバットは急接近しダークウルフに飛び掛かる。

「うわっ!?」

「ダークウルフ……大した事無いな……」

タランチュラゾンバットはダークウルフに噛み付き毒を注入。

「ぐわぁぁぁっ……」

タランチュラゾンバットはダークウルフに毒を注入し終えると離れた。

「お前はもうじき死ぬ……ハハハハッ……」

タランチュラゾンバットは去って行った。


ダークウルフの変身が解除され、大我が毒に悶え苦しむ。

「大我!!」

貴明が大我に駆け寄る。

「大我!しっかりしろ!大我!!」

大我の体は痙攣していた。

「直ぐに医者を呼ぶよ!大我を中へ!」

「ああ……」

園長は医者を呼びに電話を掛ける。


直ぐに医者の安田先生がやって来て大我を診察。

「先生……大我はゾンバットになっちまうのか?」

貴明が尋ねる。


「いや……これは毒によるものだ……詳しく検査して見なければゾンバットになるかどうかは分からないがまずは毒を何とかしないと……」

「先生!お願いだよ!なんとしても大我を助けておくれ」

「勿論全力を尽くします……直ぐに血清を用意します」

安田先生は毒の種類を調べる。

「タランチュラ毒か……それほど強い毒では無いがゾンバットの力で毒性を強化されてる可能性があるな……」

「先生……大我は大丈夫なのかい?」

「とにかく血清を急いで生成します。大丈夫。私を信じて」

安田先生は直ぐに血清を作り大我に注射した。

すると次第に大我の表情が穏やかになっていった。

「ふぅ〜……良かった。念の為血清の濃度を強くしておいて良かった……もう大丈夫」

「先生、ありがとうございます」

「では後はしばらく安静に……何かあればまた連絡下さい」

「はい。先生遅くにありがとうございました」

安田先生は帰って行った。


それから2日間は大我も安静にし何とか動ける様に回復……。

大我は外の空気を吸いに出た。

「いよいよ明日だ……ゾンバットは必ず倒す……そして……皆の未来を取り戻してみせる」

「大我……」

愛がやって来た。

「愛姉……」

「もう大丈夫なの?」

「ああ……お陰でな……」

「ゾンバットとの決戦……いよいよ明日だね……」

「ああ……」

「本当にあんな危険は戦いに行くの?もしまた何かあつったら……」

「……大丈夫。危険なのは今に始まった事じゃない。それに……皆の未来を取り戻す為の戦いだ……必ず勝って帰って来る」

「……分かった……信じてるからね」

愛も大我を送り出す決意をする。


そしていよいよゾンバットとの最終決戦に向けてそれぞれが動き出す!


続く……。

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