第4話「浅間の野望」

ブリザードタイガとの決闘に敗れたダークウルフこと夜月大我はその直後に現れた浅間重工の会長、浅間重俊と武装した男達によって連れ去られてしまった。


とある施設ーー


「ん……?ここは?」

大我が目を覚ました。

「気が付いたかね?」

「!お前は誰だ!?」

「そうか、気絶してたから自己紹介がまだだったね。私は浅間重俊。浅間重工の会長をしている」

「浅間重工?そんな大企業が俺になんの用だ?それに……この拘束は何だ?」

大我は手足を拘束され、椅子に座らされている状態だった。

「君が作ったこのダークウルフとか言うシステム……実に素晴らしい。流石、夜月博士の息子だ」

「夜月博士?親父を知ってるのか?」

「ああ……昔な……彼は天才だったよ。君はそのお父さんの血をしっかり受け継いでる様だな」

「そんな事はどうでも良い。それより俺に何の用だ?」

「ああ、このダークウルフのシステムの研究をさせて貰いたくてね」

「何っ?」

大我は『ウルフチェンジャー』を奪われていた。

「くっ……何の目的で……?」

「君も分かっているだろう。何故この力が必要かを……」

「ゾンバットか……」

「ああ、我々には必要何だ。ゾンバットに対抗する力が!そして私はあるシステムを開発した。折角だ見せてやろう」

そう言って浅間会長がパソコンを操作すると……。

ガラスの向こうの部屋に1体の戦士が現れた。

「これは……?」

「特殊戦闘用強化服·スレイブだ」

「スレイブ?」

「ゾンバットに対抗する為に開発したのだが、どうも最終段階での調整が上手く行かん……そこでな……お前のダークウルフのデータを解析しスレイブにインストールさせて貰おうと思ってな」

「なるほどな……ゾンバットに対抗する手段としては確かに必要だろう。だが、何故ダークウルフを……」

「誰でも扱えるシステムにしたいのだよ」

「誰でも?何故そんな必要が?」

「それは……お前には関係の無い事だ」

浅間会長はパソコンと『ウルフチェンジャー』をコードで繋ぎパソコンを操作する。

「ダークウルフの戦闘データを頂くよ」


この男の真の目的は何だ?

大我は疑問に思っていた。


その頃、エリアゼロでは愛、貴明、光の3人はアジトに戻っていた。

「はぁ〜……大我どうしちゃったのかしら……」

「心配だよな……」

「大丈夫だよ、大我のアニキならきっと」

「そうね……大我を信じて待ちましょ」

「だな」


浅間重工施設ーー


「よし、データのインストール完了だ」

「ならもう必要無いだろ!俺を解放しろ!」

「そうは行かん……お前にはついでにスレイブのテスト装着をして貰おう」

「何っ!?」

「おい、夜月大我にスレイブを装着させろ」

浅間会長は部下に命令。


すると、数人の男達が大我を囲みスレイブを装着させる。

「何っ!?おい、辞めろ!」

大我はスレイブを装着させられ広い部屋に連れて行かれる。

「くっ……何だここは……?」

「夜月大我、君にはスレイブのテスト装着者としてゾンバットと戦って貰う」

「何っ!?」

この部屋のもう一つの扉から研究員がゾンバットを1体連れて来る。

「ゾンバット!?何故!?」

「先日実験用に捕えておいたゾンバットだ。スレイブの力を試すのに丁度良いと思ってな」

「コイツ……ゾンバットまで実験に利用しようと言うのか……」

「ゾンバットを解放しろ。好きに暴れさせてやれ」

「はい」

研究員がゾンバットの拘束を外し直ぐに離れる。

身動きが取れる様になったゾンバットはスレイブの方を向く。

「くっ……やるしかないか……」

スレイブを装着した大我は構える。

ゾンバットがスレイブに襲い掛かる。

だが、スレイブはゾンバットの攻撃をかわす。

「何っ!?これは……体が勝手に動く……」


「フフフッ……スレイブにはAIが搭載されている。敵のあらゆる攻撃を想定し攻撃のかわし方、有効な攻撃手段等を自動で行う事が出来る」

「そうか……だから誰でも扱えるシステムなのか……スレイブ……思った以上に良い装備なのかも知れない……」

ゾンバットの攻撃を見事にかわしつつ即座に反撃を繰り出すスレイブ。

「くっ……勝手に体が動く分……思いもよらない動きをされると負荷が掛かる……」

「そろそろ良いだろう。必殺技を試してみよう」

「了解、グレネードランチャー起動」

「ん?」

AIが必殺技のコマンドを認識。

右腕に装着された武器から『グレネードランチャー』が放たれる。

ゾンバットを殲滅。

「凄い……だが……やはり負荷が大きいな……」


大我はスレイブの装着を外される。

「中々素晴らしい戦いだったよ大我君」

「確かに悪くないシステムだ。だが、体が勝手に動く分、予想外の動きをされると負荷が掛かるな。そこを直した方が良い」

「おお、素晴らしい意見をありがとう大我君」

「実験はもう良いだろう。帰らせてくれ」

「そうは行かんな。君にはまだまだスレイブの実験に付き合って貰うよ?」

「何っ!?」

「彼を特別室へお連れしろ」

「はっ!」

「おい!離せ!離せ!」

大我は特別室と言う名の牢屋に監禁される。


その頃、エリアゼロの東エリアにゾンバットが出現。

「クソッ、ゾンバットだ……」

「大我も居ないのにどうしたら……」

大我が居ない為、貴明達に成す術は無かった。


そこに……。

「そこまでだ!!」

陽介が現れた。

「アイツ……何で東エリアに!?」

陽介は『タイガチェンジャー』で『変身』

ブリザードタイガがゾンバットと戦い始める。

「アイツ……まさか俺達の為に戦ってくれてるのか?」

「そうかも……きっとそうよ!」

ブリザードタイガはゾンバットを追い詰めて行く。

「一気にトドメだ!!」

必殺技『ブリザードクラッシュ』が発動。

ゾンバットを倒す。

「すげぇ……」

ブリザードタイガは変身を解除。

陽介の姿に戻る。

「もう大丈夫だ」

「行こうか?」

「お、おう」

貴明、愛、光の3人は陽介の元へ。

「増見……どうして?」

「夜月が拐われたのには多少俺にも責任があるからな……どうする?夜月を助けるなら手を貸してやるぞ?」

「本当!」

「でもどうやって!?」

「浅間は北エリアに食料の配給を申し出た。これを利用するんだ」

「え?」

早速、陽介は浅間に連絡する。


連絡を受けた浅間は……

「うん、そうか。良いだろう。約束は守る。明日には届く様に手配しよう」


電話を切った陽介は……。

「よし、これで明日、奴の手下共が北エリアに来る……あとは説明した通りだ」

「分かった。その……ありがとうな……」

「気にするな……俺は北エリアに戻る。お前達も明日に備えておけよ」

「ああ」

陽介は帰って行く。


その頃、牢屋に閉じ込められた大我は……。

「皆……」

仲間達の事を心配していた。


その夜、浅間は……。

国家安全保安局の長官、神楽木かぐらぎ守人もりと(47才)とビデオ通話で会談をしていた。

「浅間会長、どうですか?スレイブの進捗状況は」

「ええ、ダークウルフのお陰で良いデータが取れました。もうじき運用に移れるでしょう」

「そうですか。期待してますよ?政府に認可させる様にね」

「ええ……」

「では失礼」

通話を終える両者。


「ふぅー……」

と一息つく神楽木。

「長官、お疲れの様ですね」

長官補佐の田島たじま剛介ごうすけ(36才)が声を掛けて来た。

「田島君ですか。ええ……少々」

「どうなのですか?スレイブの方は」

「まぁ、浅間会長なら上手くやってくれるでしょう」


通話会談の後、浅間会長は大我の元へ。

「ん?」

「夜月大我、起きているか?」

「浅間……何の用だ?」

「君の作ったダークウルフの性能は素晴らしい。明日はもっと活用させて貰うよ?」

「……」

浅間会長はまた何かを企んでいる様だ。

それぞれの思惑が渦巻く中、夜は更けていく。


続く……。

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