〜ゆっくりと、ふわふわと〜

 あたたかな、春の日差し。

 周りには、綺麗に咲くさまざまな桜たち。


「綺麗だね」

「うん、素敵な花が咲いてるね」

 行き交う人たちが見上げながら話しかけてくれる。


「八重桜さん、おはよう」

 いつもこの通学路で私達に声をかけてくれる少女。

「つぼみがふくらんできたね、もう少しかな?」

 自分のことのように嬉しそうな笑顔でそう言う。

「楽しみにしてるね、またね」

 優しく幹を撫でたあと、手を振ってくれた。


「おや? 八重桜さん。 嬉しそうだね」

 小鳥さんが私に話しかけてくれる。

「はい、あたたかなお日様が嬉しくて」

「それはいいね、君の幹は心地がいい。

 ましてや楽しそうにしている君を見ていると私も幸せな気分だ」

 綺麗な鳴き声でさえずってくれる小鳥さん。

 耳を傾けていた、その時。


 私の中で静かに淡い心の色になって。

 次々に花が開き、あたり一面が淡くかすんでゆく。

「綺麗だよ、八重桜さん」

 誰よりもそばにいてくれた小鳥さんが、喜んでくれる。


 ゆっくりと、ふわふわと。

 優しく幹を撫でてくれる少女やいつも見守ってくれる小鳥さんと共に。

 夢を見るように、花開き。 夢の中でもふわふわと。

 幸せに、しあわせに、咲き続ける。

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